文化系最凶? 吹奏楽部のブラック部活で「何度も倒れた」「楽器カーストも」

危険タックルで一躍、日本一のブラック部活になったと言っても過言ではない日大アメフト部。「背後からタックル」はともかく、「休みなし」「パワハラ」といった部活の闇は、なにもアメフトなど体育会系運動部だけでなく、文化系にも存在する。
なかでも「文化系最凶」とも言われるのが吹奏楽部だ。もちろん、学校によって状況は違うのだが…。

◆「休みなし」「走り込み」「筋トレ」は当たり前

「吹奏楽部だって走ったり、筋トレもするし、下手な体育会系運動部よりきついと思いますよ。休みもまったくないですしね。私も年間360日は部活でした」

そう語るのは中高一貫の女子校で6年間“吹部(すいぶ)”漬けの生活を送った野崎泉さん(25歳・仮名)。野崎さんは当時パーカッションを担当していた。

「毎日7時から朝練、夜は21時まで自主練など、運動部と変わらない練習時間でした。休日もほぼなく、夏の全国大会前の夏休みは毎日部活。騒音問題もあり、近隣に配慮して真夏も窓を閉めて、冷房がない部屋で汗だくになって合奏……。何度も意識を失って倒れました。ブラック部活の話をテレビとかで見ても『それぐらい普通じゃん』という感想しかないですね」

なかでも特に過酷だったのが「楽器運び」だという。

「私はティンパニやドラムといった打楽器を演奏する「パーカッション」というパートでした。体育館で合奏したり、校外での演奏会のときとかは、その都度4階にある音楽準備室から大型楽器を階段で1階まで運ぶんですよ。それがめちゃくちゃ大変で……。しかも、顧問や先輩からダメ出しされるんです、『廊下は走れ!』って(笑)。当時は演奏よりも楽器運びに命を懸けてましたね」

「背後からタックル」のような危険行為はないが、学生時代の青春の1ページという言葉では片づけられない過酷さだ。

◆「ユーフォ、パーカスを笑う」吹奏楽部あるある「陰湿なパート間カースト」

こうしたフィジカル面の過酷さだけにとどまらず、合奏する吹奏楽部は人間関係も真っ黒。体育会系運動部のような陰湿な上下関係は吹部にも存在する。

「月に一度は、1年生を整列させて、1時間ぐらい上級生がダメ出しをする習慣がありました。その間1年生はまったく発言できません。ダメ出しの内容も、音楽的な内容ではなく『スカートが短い』とか『(靴下が)たるんでる』『挨拶がなってない』『気合いが足りない』とか精神論的な内容。人格否定の酷さに登校拒否になった子もいました」

そう当時を振り返るのは、県内でも強豪校の吹奏楽部に所属していた橋口さゆりさん(28歳・仮名)。

「アメフトの監督やコーチみたいに、吹部では顧問や指揮者の言うことは絶対。先輩後輩の上下関係も厳しかったです。あと、吹奏楽はたくさんの楽器を使います。おおまかに分けると『金管』『木管』『打楽器』の3種類。そのなかで『クラリネット』『サックス』『パーカッション』など楽器ごとにパートがあります。ふだん吹部はそのパートごとに行動するのですが、パート内の上下関係やパート間格差もありました。自分は『ユーフォニアム』という地味な低音系の楽器だったので、ほかのパートがうらやましかったこともありました。『フルート』とか、華やかな楽器はやっぱりモテてましたしね(笑)。それでも当時は『パーカッションよりはモテるはず』という、目クソ鼻クソ的な“吹奏楽カースト”に囚われていました(笑)」

野球やサッカーのレギュラーと控え以上に、吹奏楽部の格差は酷いようだ。

◆絶対的支配者の神顧問に神指揮者。神々の哀しき末路?

こんな吹部にあって、絶対的な支配者として君臨しているのが顧問、そして指揮者だ。

狭い村社会のなかで強い力を持つ支配者的存在について、全国大会出場経験のある名門吹部出身の野村理沙さん(25歳・仮名)が当時を回想する。

「自分のいた吹部では、顧問や指揮者は神様みたいに扱われてましたね。粘着質なコーチングや精神論もまかり通っていたので、まるで洗脳ですよ。逆らったら干されるし、逆に気に入られるとソロパートをやらせてもらえる。まあ実際『神』みたいな指導者がいると部活が強くなるのは確かですね」

指導者に逆らったら干されるのは、アメフトも吹奏楽部も同じのようだ。

「自分の吹部には、とてもスパルタなアラサーの女性指揮者もいました。教員ではなくOGで、運動部で言えばコーチみたいな存在です。とても厳しくて怖い人でした。精神的なダメ出しもキツくて、なんども『殺してやろう』って思いましたよ」

そんな神指揮者にも、ある日審判の時が訪れる。

「自分が卒業してから吹部が弱くなって、その指揮者が責任をとらされてクビになったというウワサが回ってきました。内心『ざまあみろ』と思って笑っていたところ、ある日地元の駅前のチェーン系喫茶店でその指揮者がバイトをしてるところを発見(笑)。当時の仲間にLINEしてみんなでお店に突撃しました。バイト中の指揮者に話しかけても『人違いじゃないんですか』ってシラを切るんですけど、名札を見れば間違ってない(笑)。あんなに偉ぶっていた人が『右手で少々お待ちください』なんて丁寧語を使っているだけでおかしくて」

野村さんは集まった仲間と大爆笑したそうだ。

「でも、彼女も音大を出てすぐに吹部に雇われて、自分たちと一緒に何年間もブラック部活の毎日を過ごしていたわけで。クビになったからって、すぐに就職なんてできないですよね……。店を出てから切ない気分になりました」

吹奏楽部員たちが奏でる美しいシンフォニーが、ちょっぴり悲しく聞こえてくる。 <取材・文/串守シャモ イラスト/koya>