データで読み解く 長野県民長寿日本一の理由

 <長寿日本一の理由は貧乏? 男80.88歳 女87.18歳>
 
  都道府県別「平均寿命」(2010年)で、長野県が男女とも長寿日本一に輝いた。「減塩運動のたまもの」「温泉が豊富」「いや、昆虫食が体にいいのかも」と周囲はかまびすしいが、本当のところ、長野県民はなぜ長生きなのか?
 
 <病院依存度は全国最低レベル>
 
  世界一長生きの日本人の中でも、とくに長野県民は突出している。都道府県別の「平均寿命」(下記表)で、長野県は男性80.88歳、女性87.18歳で共に全国トップ。一方、最下位はこれも男女そろって青森県だ。青森は喫煙率と飲酒習慣割合が1位、1日の歩数量は46位とワーストになる要素がテンコ盛りだ。
 
  では、長野県民はどんな理由で長生きなのか。
 
 「そばを含む穀物類が体に良い可能性はあります。また、約30年前から県民減塩運動を展開中で、その効果が出ているのかもしれません」(長野県庁・健康長寿課)
  1965年の県民の平均寿命は、男性9位、女性26位と平凡。それが減塩運動を始めて急激に寿命を延ばしている。
 
  だが、よく調べてみると、同県の塩分摂取量は男性が全国6位、女性8位と今も多め。当然、脳卒中の死亡率は全国平均を上回っている。塩分を減らせば長生きするという根拠と矛盾するのだ。
 
  では、コレはどうか。長野県民の野菜摂取量は全国1位(1日379グラム)、高齢者就業率も43.7%(全国平均32.2%)でトップ。日帰り温泉(729軒)、味噌消費量(1世帯年間11.9キロ)も1位だ。逆に年間雨日数(30.6日)、降雨量(932ミリ)は全国一少ない。晴れが多ければ気分的にもいいはずだ。
 
  だが、長野で特筆すべきは、実は老人医療費の少なさにある。75歳以上の1人当たり医療費は、長く全国最低水準をキープ。10年度も77万560円で下から4番目と、最高の福岡114万6623円に比べて37万円も安かった。長野県民はとにかく病院に行かない。
 
 「というか、病院が少な過ぎて行けないのです。県内にある病院はわずか116軒。療養病床数は100人当たり0.18床で全国41位です。昔はこうではなかったが10年前に地方債の残高が1兆6000億円に達し、借金の割合は全国最悪。財政再建団体の一歩手前といわれました。新幹線、高速道路、冬季五輪と県民の望むまま借金し、病院まで手が回らなくなったのです」(ジャーナリスト・中森勇人氏)
 
  ところが、何が幸いするか分からない。
 
 「長野県民の在宅死亡率は14.9%で全国1位。余計な延命治療を最もやらない県です。抗がん剤治療が死期を早めるという説も出ているし、医療体制が貧弱な方が個人で予防する人も増える。東北地方で唯一長寿の山形県も、療養病床数は43位です。逆に病床が充実している1位の高知、2位の山口、3位の鹿児島は、長命ではありません」(中森勇人氏=前出)
 
  病院に行かない方が長生きするのだ。長野県民の長寿の理由は、貧乏で病院が造れないからだった?
 
 【都道府県別平均寿命=2010年】
 順位/男/女
 1/長野 80.88/長野 87.18
 2/滋賀 80.58/島根 87.07
 3/福井 80.47/沖縄 87.02
 4/熊本 80.29/熊本 86.98
 5/神奈川 80.25/新潟 86.96
 6/京都 80.21/広島 86.94
 7/奈良 80.14/福井 86.94
 8/大分 80.06/岡山 86.93
 9/山形 79.97/大分 86.91
 10/静岡 79.95/富山 86.75
 11/岐阜 79.92/石川 86.75
 12/広島 79.91/滋賀 86.69
 13/千葉 79.88/山梨 86.65
 14/東京 79.82/京都 86.65
 15/岡山 79.77/神奈川 86.63
 16/香川 79.73/宮崎 86.61
 17/愛知 79.71/奈良 86.6
 18/石川 79.71/佐賀 86.58
 19/富山 79.71/愛媛 86.54
 20/宮崎 79.7/福岡 86.48
 21/三重 79.68/高知 86.47
 22/宮城 79.65/東京 86.39
 23/埼玉 79.62/宮城 86.39
 24/兵庫 79.59/香川 86.34
 25/山梨 79.54/北海道 86.3
 26/島根 79.51/長崎 86.3
 27/新潟 79.47/鹿児島 86.28
 28/徳島 79.44/山形 86.28
 29/群馬 79.4/岐阜 86.26
 30/沖縄 79.4/三重 86.25
 31/福岡 79.3/愛知 86.22
 32/佐賀 79.28/静岡 86.22
 33/鹿児島 79.21/徳島 86.21
 34/北海道 79.17/千葉 86.2
 35/愛媛 79.13/兵庫 86.14
 36/茨城 79.09/鳥取 86.08
 37/和歌山 79.07/山口 86.07
 38/栃木 79.06/福島 86.05
 39/山口 79.03/秋田 85.93
 40/鳥取 79.01/大阪 85.93
 41/大阪 78.99/群馬 85.91
 42/高知 78.91/埼玉 85.88
 43/長崎 78.88/岩手 85.86
 44/福島 78.84/茨城 85.83
 45/岩手 78.53/和歌山 85.69
 46/秋田 78.22/栃木 85.66
 47/青森 77.28/青森 85.34
 平均/79.59/86.35
 
 <参考>
 韓国/77.4/84.3
 英国/78.5/82.4
 米国/75.9/80.7
 中国/71.6/75
 (日刊ゲンダイ2013年3月26日掲載)