ギャル語、沈黙…何でもありの書評バトル

「太宰、あげぽよ~みたいな」と“ギャル語”で文豪を表す人、壇上で沈黙し、観衆に考える時間を作る人…。大学生らが書評を自分の言葉で語る「ビブリオバトル」の全国大会が30日、東京・秋葉原で開かれた。自分が好きな作品の魅力を何とか伝えようと、工夫を凝らす学生たち。表現の限界に挑んだ大会に密着した。(産経デジタル 野間健利)
 ステージが設けられた、会場のベルサール秋葉原。壇に上がった東京学芸大4年の平松和旗さん(22)は、太宰治の「女の決闘『新ハムレット』より」について語り始めた。この作品は、太宰の中では明るい。その時期をあらわす言葉として、「あげぽよ」が飛び出した。「あげぽよ」とはテンションが上がっている様子を意味するギャル語。従来では考えられない自由な表現に、会場が沸いた。
 ビブリオバトルは立命館大の谷口忠大准教授(33)が考案した書評ゲームだ。参加者たちは5分間で好きな本の魅力を紹介し、聴衆がどの本が読みたくなったかで競う。ビブリオとはラテン語で書評を意味する。聴衆をひきつけるためのショーの要素も大きく、それだけに学生たちの工夫もさまざまだ。
 地方予選を含め参加した182人の頂点に立ったのは、ミステリー小説「彼女はもういない」(西澤保彦著)を紹介した北海道教育大3年の杉目美奈子さん(21)だ。詩的なタイトルと陰惨な殺人事件とのギャップの魅力、ミステリーとしての完成度の高さを、途中でつかえながらも情熱的に強調した。ロッテリアで読みながら涙したエピソードなど、生の読書体験を交え、堂々の優勝に輝いた。
 谷口准教授が「テレビだったら放送事故」とうなるほど大胆な奇策に打って出たのはノンフィクション「病院で死ぬということ」(山崎章郎著)を紹介した北海道大大学院の岡本陽平さん(24)。病院でいまわの際を迎える人たちを見つめ続けた医師らのエピソードを紹介した後、「30秒間だけ命について考えてほしい」と話すと、壇上で沈黙したまま動かなくなった。会場もしーんとなった。バトルの後、岡本さんは「(沈黙中は)自分も考えていた」と吐露した。
 筑波大大学院の常川真央さん(24)は両足でジャンプしてから、「ビブリオのお兄さんが素敵なご本を紹介するよ!」とプレゼンを展開。爆弾の作り方など過激な工作、実験をあえて掲載する「子どもが体験するべき50の危険なこと」(ゲイバー・タリー、ジュリー・シュピーグラー著、金井哲夫訳)を紹介する、教育番組の進行という架空の役になりきった。
 活字離れが懸念される昨今、2回目を迎えた今回の大会。渦巻く熱気に、主催する東京都の副知事で作家、猪瀬直樹さん(64)は「甲子園のように参加校の裾野を広げたい」と話していた。