棒アナゴ漁の灯消さぬ 潟上で後継者が始動

 秋田県男鹿地方の家庭や居酒屋で、ホルモンのような食感と香ばしさが人気の特産品、棒アナゴ。唯一漁を営み、地元独特の 加工法を守ってきた男性の引退で食卓から消える寸前だったが、潟上市天王の漁師伊藤公男さん(64)家族が引き継ぎ伝統の灯を守った。今月から本格的な漁 に入っている。

棒アナゴは、地元で昔から「アナゴ」と呼ばれてきたクロヌタウナギを干して棒状にしたもの。
プラスチック製の胴という漁具を使って水揚げした後、すぐに棒に刺し、表面のぬめりや内臓、血などを手作業で搾り出す。丸1日かけて2~3回繰り返すと、独特のぬめりが取れ、冷凍して出荷できるようになる。
手間と根気の要る作業のためなり手がなかなか現れず、26年間、夫婦で続けてきた男鹿市船川港の漁師沢木長勇さん(78)が唯一の生産者だった。だが、高齢のため、昨年12月に引退を決めた。
伊藤さんは、三男の大洋さん(21)が「味がいい。はえ縄漁の合間に漁ができる」と後押しする言葉を受け、後継者となる決意をした。沢木さんは「年を取った。いい商品を作っていってほしい」と漁具などを託した。
伊藤さん親子は沢木さんの教えを受け2月中旬、漁で独り立ちした。正午前に港を出て、翌日早朝の午前4時に帰港する。そこから船上で下処理を始め、長いときには正午ごろまでかかる。
同時に家族の女性陣が再処理、加工を行う。「力加減が難しいが、やっていて楽しい」と長男の妻加寿子さん(35)は言う。
棒アナゴは珍味として県内の居酒屋や料亭のほか、通信販売で全国から注文が相次ぐ。沢木さんの引退が時間の問題となった数年前から、地元の特産品を守りたい男鹿市や県も後継者探しに取り組んできた。
伊藤さんは「棒アナゴはスタミナがつくので、若者やスポーツ選手にも食べてほしい」と新たな顧客獲得を目指す。水産加工品のインターネット販売会社社長船木一さん(37)は「後継者ができてよかった。リピーターを増やし、販路を拡大したい」と意気込む。