仙台箪笥が大きな飛躍 国の伝統的工芸品に

江戸時代から続く宮城県の仙台箪笥(たんす)が新たな歴史を刻み始める。6月までに法律に基づく国の「伝統的工芸品」に指定されることが決まり、業界に とっては30年来の悲願が実ることになった。ただ、職人の高齢化など課題は多く、販路拡大も急務。仙台箪笥協同組合は今後、国の助成を受けながら振興策を 探る方針だ。

「長年の夢が実現した。ここからが新たなスタート」。組合の湯目研一郎代表理事(湯目家具百貨店社長)は力を込める。
指定は今月11日にあった経済産業省の有識者会合で了承された。東北では津軽塗(青森県)や南部鉄器(岩手県)などに続き、仙台箪笥は22番目だ。
指定を目指す活動は1980年代半ばに始まった。当時は有志による任意団体だったため申請できず、2008年に家具店や漆工業者15社で組合を設立。12年から運動を本格化させた。
組合員の構成は箪笥製作の木地加工と塗装、金具製作の3分野に分かれ、申請に必要な資料集めの足並みがそろわず時間がかかった。加えて指定には百年を超え る歴史を証明する必要があるが、箪笥は1945年の仙台空襲で焼失したものも多い。宮城県の協力を得て明治期に製作されたのを探し出した。
指定 を受けると、製品に「伝統マーク」のステッカーを貼ることができ、職人は認定試験を経て伝統工芸士の称号を受ける。組合で申請の中心的な役割を担った湯目 吏吉也さん(37)=仙台プロクイックサービス社長=は「製品の価値を高めるとともに、職人さんも誇りが持てるようになる」と取得のメリットを説く。
組合によると、14年度の業界の売上高は約1億5700万円。全盛期の1928年(約1億3700万円)と金額は変わらず、貨幣価値を考えると衰退ぶりが見てとれる。職人数も現在114人で、当時の6分の1以下に減った。
組合は今後、国の助成を受けながら5カ年の振興計画を作成。日本貿易振興機構(ジェトロ)と協力して海外へ販路を求めていくほか、技の伝承へ向けて後継者育成に努める考えだ。

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Posted by takahashi