うまい山形の日本酒なぜ?香味分析へ

山形県の日本酒はなぜうまいのか−。県工業技術センターと県酒造組合(山形市)は本年度、県産日本酒の香味成分を分析し、特徴を科学的に解明するプロジェ クトをそれぞれ始めた。「キレがある」「飲み飽きしない」と評価される理由をデータで示し、県産酒の品質向上や新商品開発につなげるほか、消費者に分かり やすい表示を検討する。

◎香味成分分析特徴を解明へ/「キレがある」「飲み飽きない」データで分かりやすく

県工業技術センターのプロジェクトは2017年度までの3年間。ガスクロマトグラフ(GC)などの香り分析機器や味覚センサーを使い、日本酒に含まれる成分や含有量を解析する。
酒米の種類や精米歩合など条件をそろえ、リンゴの香りがするカプロン酸エチル、うま味に関係するアミノ酸やリンゴ酸、乳酸などの多少を他県産の日本酒やワインなどと比較し、山形県の特徴をあぶり出す。
本年度は手始めに、県内の全酒蔵から仕込み水を収集し、成分を調べる。甘みや渋みを左右するカリウム、マグネシウムの含有量が地域によって異なるとみられ、特性を明らかにする。
16年度以降は、県内の多くの酒蔵が製造する統一ブランド「DEWA33」適合の純米吟醸酒、山形セレクション認定の純米酒「出羽の里」を対象に解析する。
最終年度は、同じ酒蔵で酒造好適米の新品種「雪女神」(山形酒104号)、酒米の最高峰「山田錦」を使った大吟醸酒をそれぞれつくり、成分を比較する。
一方、県酒造組合のプロジェクトは2年間で、慶大先端生命科学研究所(鶴岡市)に委託した。代謝物を調べるメタボローム解析技術で、県内の清酒鑑評会に出品された大吟醸酒などを分析。鑑評会の審査成績と成分の相関関係を調べる。
山形の日本酒は消費者の強い支持があり、全国新酒鑑評会の金賞獲得もトップ級だが、人気の理由は「感覚」でしか説明できず科学的根拠は乏しかった。商品ラベルには、甘口・辛口の目安となる日本酒度などの記載はあるが、特徴が分かりにくいとの指摘がある。
両プロジェクトに関与する県工業技術センターの石垣浩佳開発研究専門員は「県産酒の長所、短所を科学的に解明する意義は大きい。ラベル表示もデータを明示し、『白ワインより酸味が強い』などと特徴を説明できればいい」と語った。

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Posted by takahashi