蔵元と愛好家をつなぐ/「仙台日本酒フェスト」を企画

◎酒販店主 川嶋吉幸(かわしま・よしゆき)さん(55)

全国各地の日本酒を仙台の愛好家たちに紹介する催し「仙台日本酒フェスト」 が、ことしで4回目を迎えた。企画するのは、仙台市宮城野区東仙台で酒販店を営む川嶋吉幸さん(55)。造り手との交流の場を提供し、日々の食生活に日本 酒を根付かせたいと願う。「20、30代の日本酒ファンが増えている。一過性のブームに終わらせないためにも、おいしい飲み方を提案していきたい」と意気 込む。

<32蔵150種集合>
9月初め、仙台市中心部のホテルで開いたフェストには600人が集まった。チケットが2週間で完売するほどの人気だ。
宮城県を含む全国32蔵のブースがずらりと並ぶ。醸造した土地の空気を伝える色鮮やかなのぼりがはためき、祭りの活気を醸し出す。純米酒や純米吟醸酒約150種が登場した。
会場は立食形式。参加者は各ブースを訪ね、5種類程度の冷酒や燗(かん)酒を味わう。法被をまとった蔵元と顔を合わせ、日本酒談義が弾む。相性の良い食べ物も教えてもらえる。
小規模な家族経営が多い日本酒の蔵元は、酒造会社というよりも、匠(たくみ)の工房に近い雰囲気だ。蔵人たちの多彩なキャラクターに接する面白さがある。
自身も蔵元とはじっくり膝を交えて付き合ってきた。時間をつくって全国の蔵に赴き、一献傾ける。「一緒に飲めば気持ちが通じる。酒とどんな姿勢で向き合っているのかも分かる」。そうやって一つ一つ選んだ酒がフェストに並ぶ。
蔵元にとっても、日本酒を愛する客の要望や好みにじかに触れる貴重な機会だ。「品質に自信があっても、市場と落差が生じることがある。味や香り、価格、ラベルのデザインなど率直な感想をヒントにしてほしい」
市中心部の居酒屋3店も参加し、日本酒に合うつまみを提供した。いずれも開業3年に満たない若い世代の店だ。「こうした飲食店を後押しするのも酒販店の役目だと思う」

<地元密着 信条>
振り返れば、一般企業から市内の酒販店に転職したのは30歳を目前にしたころだ。当時は数少なかった日本酒に力を入れる店で、純米酒を多く扱った。「それ まで飲んだ日本酒は紙パックに入った安い酒。世の中にこれほど多くの銘柄があるのかと驚いた。飲んでみると段違いにおいしい。だんだんと天職のように思え てきた」と語る。
2011年夏に独立し、生まれ育った東仙台に日本酒とワインの専門店を開いた。「おいしい酒に出合うとすぐ誰かに教えたくなる性分」。ブログやフェイスブックで発信を続ける。地元密着がモットーで、「いずれは東仙台でもフェストを開きたい」と先を見据えた。

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Posted by takahashi