脳を若くしたければ、ドンキに行きなさい

前回、前々回と、脳のゆがみを放っておくことで生じる危険な症状についてお話しました。しかし安心してください。私は、1万人以上の脳画像をその人の人生経験に照らして見てきましたが、生活習慣を少し見直しただけで、最速で1カ月で脳に変化が表れた方がいました。

最終回の今回は、拙著『ゆがみをなおせば、毎日のワクワクが取り戻せる! 脳コンディショニング』(かんき出版)より、左脳と右脳がアンバランスになってしまった現代人に効く、そして、誰でも簡単にできる脳コンディショニングを紹介したいと思います。

■右脳の「視覚系」「理解系」「記憶系」が弱っている

前々 回の記事で詳しくお話しましたが、私は「脳番地」という考え方を提唱しています。脳は1つの大きな臓器ではなく、脳細胞が会社の部署のように役割が分れて いて、各部署で違う働きをしている、という考え方です。その役割によって大きく分けると、思考系、感情系、伝達系、理解系、運動系、聴覚系、視覚系、記憶 系の8つの脳番地になります。

現代人が弱っているのは、8つの脳番地のうち、「視覚系」「理解系」「記憶系」の3つです。この3つの脳番地は、左脳と右脳それぞれにあるのですが、特に劣化が激しいのは右脳のそれです。

元来日本の文化は、相手を慮ることを大切にしてきました。 いわゆる“おもてなし”です。日本人は、言葉にせずとも相手がして欲しいことがわかる、そして、それを伝えることができる。右脳を活発に使うすばらしい文化なのです。

しかし、文字や言語でのやりとりが主である現代人は、どんなにがんばっても左脳が優位になります。ですから、意識して右脳を鍛える必要があるのです。

まずは、「視覚系脳番地」を鍛えるコンディショニングを紹介します。
誰でもすぐにできる方法ばかりですので、ぜひ試してみてください。

「視覚系脳番地」を鍛えるコンディショニング①:記憶し、思い出して買い物をしてみる

商品をごたごたとまるで適当に置いてあるとしか見えない店、そう、ドン・キホーテです。

ドン・キホーテの店内は視覚系脳番地のいい刺激になります。店内を一通りまわって、目をつぶって何がどこにあるかを反芻することで右脳の記憶系脳番地も刺激されます。

私のオフィスの近くにもドン・キホーテがあるので、たまに気分転換も兼ねて、店に行ってさまざまな形や色の商品を見て視覚系を刺激しています。もし、近くにドン・キホーテがなかったら、大型のホームセンターなどで試してみてください。

■「大人のぬり絵」で視覚系を鍛える

「視覚系脳番地」を鍛えるコンディショニング②:でき上がりを想像しながら塗ってみる

「大人のぬり絵」が空前の大ブームとなっています。フィギュアスケートの浅田真央選手が集中力を鍛えるために行っていることでも有名になりました。細密画のような細かい柄や、モザイク画、花模様、世界一周など、さまざまなテーマのものが書店等で展開されています。

でき上がりがどのようなものになるかを想像してから始め、そのイメージと合っているかどうかを確かめながら進めてみてください。

とても細かいので根気がいる作業なのですが、でき上がりはとてもきれいですし、何しろ達成感があります。

集中力アップ、リラックス効果はもちろん、視覚系脳番地を刺激するので効果的です。各出版社から刊行されていますので、ぜひいろいろ試してみることをおすすめします。

「理解系脳番地」を鍛える脳コンディショング① :利き手と逆の手で歯を磨く

次に、「理解系脳番地」のコンディショニングについてです。

左 脳が支配しているのが右半身、右脳が支配しているのが左半身です。ですから、右利きの人は、利き手ではない左腕を使うと、右脳が刺激されてよい脳コンディ ショニングになります。利き手ではないので、歯磨きのような一見簡単そうなことでもうまくいきません。うまくいかないとイライラしてきます。

実は、このイライラをともなう「不自由さ」が、脳のよいコンディショニングになります。うまくいかないことをしようとするとき、「理解系脳番地」がその不自由さを理解しようとし、できるようにするために一生懸命働きます。

歯磨きだけでなく、利き手と逆の手でボールを投げる練習をすることなどでも、左脳と右脳の「理解系脳番地」のバランスが取れてきます。

「理解系脳番地」を鍛える脳コンディショング②:神様を意識する

「理解系脳番地」を鍛えるもうひとつの方法、それが「目には見えないものを意識する」というものです。

目 に見えないものといえば、たとえば神様があります。神様は目には見えません。目に見えないものに対して働きかけることで、右脳の理解系脳番地が刺激されま す。「ありがとう」と感謝する、お祈りをすることなどは、すべて目に見えないものに対する働きかけですから、左脳人間にとってよいコンディショニングにな ります。

たとえば、お経を読む、坐禅を組むことはとてもいいコンディショニングです。人間の脳というのは常にバランスをとっておかないと、 劣化したり精神を病んだりするなど不安定な性質をもっています。日本の神道では「八百万の神」といって、自然のものすべてに神が宿っているという考え方が あります。目に見えない、形のないことを理解しようと努めた証といえます。見えないものを理解しようとする脳の働きは、人間ならではの脳の使い方でもある のです。

「記憶系脳番地」を鍛える脳コンディショング①:史跡に行ってみる

次は、「記憶系脳番地」の鍛え方です。まずひとつ目に、史跡に行くことをおすすめします。

史跡というのはそこを舞台としてさまざまな歴史上の出来事があったところです。記憶力を鍛えるために、たとえば大阪城に行って大坂冬の陣、夏の陣など歴史のドラマチックな動きを思い出してみましょう。

自分のことであれば、たかだか数十年前後の「思い出」です。しかし、城がもっている歴史をたどれば何百年です。

現場に行って想起するというのが重要です。過去の歴史をたどれるような史跡や名所を訪れてみましょう。そのためには、中高時代に習った歴史を「予習」する必要も出てきます。

そして城跡などでは文字による説明を読むのではなく、できるだけ予習して記憶したことを思い出すのです。

また、訪れる場所が何度もドラマや映画の舞台になっているのであれば、出演者たちのセリフや動きを思い出してみるのもいいでしょう。

「記憶系脳番地」を鍛える脳コンディショング:ラジオ体操を逆の順番でやってみる

次におすすめしたいのが、手順記憶を刺激することです。

自転車に乗るときは、ハンドルをもち、サドルにまたがってペダルをこぎながらバランスを取ります。これらは意識せずとも自然と行うことができます。「体が覚えている」という状態です。このように意識しなくても体が手順を覚えていることを、手順記憶といいます。

手順記憶もほかの記憶力と同様に「記憶系」脳番地を使います。しかし、手順を記憶する脳の回路は、普通に出来事を記憶するとは異なり、小脳がよく使われます。

ラ ジオ体操は、子どものころから手順を刷り込まれているため、音楽が始まると体が勝手に動き始めるのではないでしょうか。ラジオ体操が手順記憶化しているわ けです。ですから、あえて後ろから体操の順番を確認しながらやってみることで、記憶系脳番地に刺激を与えることができます。

■脳は100歳まで成長を続ける

以上の脳コンディショニングは、前出の拙著の中から一部を抜粋したものです。本書内では、今回紹介したものも含めて24のコンディショニングを紹介しています。

そ もそも脳は、100歳まで成長を続けるポテンシャルを秘めています。脳の劣化は、自分で食い止めることができます。そして、それ以上に、自分で伸ばすこと も可能なのです。今を楽しく生きることに加え、最後の瞬間までイキイキと過ごすために、ぜひとも「脳コンディショニング」を実践してみてください。