<共同化事業>にぎわい復活へ裏方奮闘

宮城県気仙沼市内湾地区の「南町2丁目地区共同化事業」は東日本大震災から5年を経て着工にこぎ着けた。裏方の1人として奮闘してきた理髪店経営の小野寺一雄さん(45)は「新しい商店街づくりにようやく踏み出せる」と意気込む。
気仙沼湾に面した南町は飲食店を中心に100店以上が集まる市内随一の繁華街だったが、震災の津波で水没。南町での再起を期した小野寺さんらは2011年12月に南町紫市場(54店)で営業を再開し、同時に新しい商店街の計画作りを始めた。
街に人もにぎわいも取り戻そうと、商業者グループが災害公営住宅と共同店舗を一体化したビルを建てる構想。ただ、テナントで営業していた飲食店などが多く、ビルを建てるには地権者から土地を借りなければならなかった。
小野寺さんは知人を一軒ずつ訪ね、土地の賃貸を申し入れた。「思いを分かってほしい」と伝えると、7人が「先祖代々の土地がある南町を復活させて」と快く応じてくれた。市有地を含めて土地を確保し、再建の道筋を付けた。
誤算もあった。
「当初はやりたい人が40店ほどいたが、金銭面や後継者確保の不安から減ってしまった」。事業費はグループ化補助金で4分の3を賄うが、残りは出店者がローンを組んで返済する。将来不安を拭いきれない人が少なくなかった。
最終的にビル建設の共同事業者は14人になり、共同店舗24店のうちテナントの5店が空く。一人一人のローン負担は増し、借金を1000万円以上背負っての再出発だが、「みんな覚悟はある」と言い切る。
理髪店の3代目の小野寺さんは被災した店舗兼自宅の住宅部分を修理し、家族6人で暮らす。仮設商店街の副理事長としてイベント開催などに多忙な日々。それでも「イベントの時は飲食店がにぎわい、自由に動けるのは理髪店ぐらいだから」と苦にしない。
土地区画整理事業地内の南町紫市場は10月末が退出期限。「共同店舗の集客力は仮設商店街で手応えを感じている。地元からも外からも来てもらえる街にしたい」。小野寺さんは来春のビル完成を心待ちにする。

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Posted by takahashi