転職でバレる「どの職場でも二流の人」の末路

「学歴・頭のIQ」で、「仕事能力」は判断できない。仕事ができるかどうかは、「仕事のIQ」にかかっている。

『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(ミセス・パンプキンとの共著)が合わせて25万部突破の大ベストセラーになった「グローバルエリート」ことムーギー・キム氏。

彼が2年半の歳月をかけて「仕事のIQの高め方」について完全に書き下ろした最新刊『最強の働き方――世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』は、アマゾンでも4日連続で総合1位を獲得するなど、早くも19万部を超える異例の大ベストセラーとなっている。

本連載では、ムーギー氏が「世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ教訓」の数々を、『最強の働き方』を再編集しながら紹介していく。

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「転職で転落する人」は何がダメか?

「うわー、今度はあの会社が、”業界のジョーカー”を雇ってしまったんか……」

世界中の職場で働いていてよく目にするのは、面接はうまいが実力がまるでない二流の人を、転職先の企業が”間違って”雇ってしまうケースである。

詳しいエピソードは後述するが、一般にエリート業界と呼ばれる外資系金融の世界でも「業界のババ抜き」と陰で呼ばれているような「二流以下の人」は少なからず実在する。

そういう人は、どの会社に行ってもうだつが上がらず、自分の二流さがバレる前に、転職を繰り返したりする。

転職も一事が万事で、学歴や頭の良さとは関係ない。本当に仕事ができる「仕事のIQ」が高いかどうかは、転職によって如実にあらわれるものだ。

大事な点は、仕事がデキない二流の人は総じて、たとえ転職をせずに会社に残ったとしても、出世はしないし、たいして成果を残せないということである。

では、いったい二流の人のどんな欠点が、転職によってバレるのか? 二流のビジネスパーソンたちはどのように「キャリア選択の失敗」を連発し、「キャリアの階段」をどんぐりコロコロ転げ落ちていくのか? 「それはそれは恥ずかしい二流の転職」について、さっそく紹介したいと思う。

二流の転職でまずバレるのは、その人の「主体性のなさ」である。

向いていないのに世間体で「エリート」を目指す人たち

【1】「自信と主体性のなさ」がバレる

やれ「一部上場の大企業か、地元の母親でも知っている著名企業がいい」とか、やれ「学校の同窓会で威張れる一流企業で、できれば横文字で頭よさそうと思われる外資系の会社がいい」などという、「きわめて本質から離れた外形的な理由」で仕事を選んでいる人は、一目散に二流街道まっしぐらである。

こんな「外形的な基準」でしか転職できない人は総じて自分に自信がなく、自己紹介するときに自分の出身校しか「自分を認められるもの」がなかったりする。

そういう人に限って、「将来、人生で何を成し遂げたいか」「自分にとって大切な価値は何か」「自分が楽しいこと、得意なことは何か」という自己分析など二の次、三の次だ。この二流の人たちにとっては、「自分が何を達成したか」「何を達成しようとしているか」より「どの組織に所属しているか」が大切なのである。

ちなみに三流すぎる人になると、パソコンの検索履歴に「就活偏差値」「転職偏差値」「企業偏差値」など、それはそれは恥ずかしいキーワードが乱舞していたりする。

大学受験のみならず、社会に出ても「他人が決めた軸」でランキング付けされた「むなしい偏差値」の上下で自分のキャリアを選択する情けない”エリート“たち。彼らは、キャリア選択でも「主体性のない」恥ずかしい人々の典型だろう。

自分がどのような基準で転職先を選んでいるかで、「自分の価値観への自信と主体性」の有無がバレると肝に銘じてほしい。

【2】「実力のなさ」がバレる

次に転職でバレるのが、自分が有言実行できる人物かどうか、つまり「口先に実力が伴っているか」どうかである。

二流のエリートの特徴として、「面接だけはめちゃくちゃうまいが、いざ雇うと、えらくガッカリで全員を失望させる」という点が挙げられる。

口先だけの二流の人は、面接のときだけいかにも問題意識が深く、意識が高く、行動力が旺盛で信頼できる印象を与える。

しかしいざ働くと、そもそも学習能力がなく、これまでの経験や人脈の切り売りだけでしか貢献ができない。そして、自分が簡単にできないことは、部下にすべてを押し付ける、内実は「働かない二流のおじさん・おばさん」というケースも少なくないのだ。

そういう人に限って、自分の二流さが社内にバレたタイミングを見計らって、また張り切って転職活動を再開する。

古巣の会社としても、「できれば揉めずに平和に出て行ってほしい」と思っているので、彼ないし彼女の転職活動には大変協力的である。

結果的に、「次はあの会社がだまされて雇ってしまった!」という、もはや「業界のババ抜き」みたいになっている二流のエリートが存在するのだ。

二流どころか三流の「業界のババ抜き」を語るうえで、私の三流の友人・本山さん(仮名)に登場してもらおう。

外資を解雇され、クビにならない「安全地帯」の日系企業に

本山さんの華々しい“転落キャリア”は、大手米系投資銀行のニューヨーク研修が終わった途端にクビになるという「スピード解雇」で幕開けした。

外資金融を解雇された人の王道だが、その後、日系の金融機関という「クビにならない安全地帯」で数年過ごした本山さん。しかし彼は、景気回復の局面で欲を出して再び外資に舞い戻るものの、ものの見事にその2年後にはもう一度、その外資もクビになってしまった。

その後は謎のベンチャーのCFO(最高財務責任者)などに雇われるも、金融業界にいただけで財務の専門家でも何でもないので、新天地でも周囲をガッカリさせつづけている。

本山さんの三流さを知る周囲の人たちは「次はどの会社がこの“業界のジョーカー”を引き抜いてしまうのか」と固唾を飲んで見守っているのである。

【3】「人脈のなさ」もバレる

本題に戻り、もうひとつ転職でバレるのは「人脈のなさ」である。

新卒直後ならいざ知らず、社会人生活が5年たっても10年たっても20年たっても、永遠に人脈が形成されない人たちがいる。

そういう人たちに限って、いつまでも日曜日の『日経新聞』の求人欄を血眼になって読んでいたり、本当は年収2000万円の案件などほとんどないのに「年収2000万円の仕事がここに!」などという、「それはそれは恥ずかしい釣り文句」につられて、謎の求人メールに飛びついたりする

彼らは、客観的に見た自分の能力に、2000万円の市場価値がつくよう頑張ったりはしない。楽観的なことに、誰かが何かの間違いで、自分に2000万円放り投げてくれるかもしれないと、本気で信じているのだ。

ポジションも上がってくると、転職は「誰を通じてその会社にアクセスしているか」が重要になる。

新卒の数年間ならまだしも、30代中盤くらいからは、自分を信頼してくれて、自分と会社のフィットをわかっている「真の人脈」からの紹介ベースで転職するものだ。そういう人脈がなければ、新聞広告や求人メールに飛びつく無数の人々との激しい消耗戦になってしまうことが多い。

だからこそ、自分と会社の双方をよく知る、信頼できる人脈をどれだけ築き上げたかどうかが、30歳からのキャリアには大切になるのだ。

転職活動で頼るのが、謎の「2000万円稼ぎませんか?」などという求人メールだったとき、あなたの転職活動はすでに、恥ずかしい恥ずかしい三流の域に転落していると断言していいだろう。

それでは、このような「二流の転職」を経験しないためには、どうしたらいいのか。仕事で自己実現を遂げている一流の人の共通点から、3つに絞って論じてみたいと思う。

「好き×得意×需要のあること」は何ですか?

【1】「自分が楽しめること」「やりたいこと」を知っている

仕事で自己実現を果たしている人は、そもそも「自分が何を好きなのか」を知っているものだ。

以前、ウォーレン・バフェットがビル・ゲイツとともにワシントン大学で行った講演で、「自分が成功したのは、毎日やりたいことをやっているからだ」と断言していたものだが、「好きなこと」を知ることは自己実現への第一歩である。

「あなた、人生で何やりたい人なの?」と問われて、すぐに答えられるだろうか。「自分が何をやりたいのか」という、シンプル極まりない質問に答えられない人が9割を超えるのが悲しい現実ではないだろうか。

仮に「何がやりたいのか?」という自問にピンポイントで答えられなくても、自己実現の要素や方向性に関する、自己認識の深さが、一流の転職には大切なのである。

【2】「自分が得意なこと」を知っている

一流の仕事選びにとって次に大切なのは、「自分が何をできるか」「何なら他人との競争に勝てるのか」を熟知していることだ。

当たり前の話だが、好きだからといって「苦手なこと」「自分がうまくできないこと」を仕事にしているようでは、それは単に「大迷惑な道楽者」である。好きだが他人がやったほうがよっぽどうまくできることを仕事にしてしまっては、自分も会社もお客も全員不幸になる。

結局のところ、転職で成功しようと思えば、「自分の強み」を正確に理解し、それをありがたがってくれる職場とのマッチングの精度を上げることが非常に大切になるのだ。

くれぐれも「好きだが不得意なこと」は趣味にとどめておき、「好き×得意」の交差点にキャリア上の自己実現を見いださなければならない。

【3】「社会的にニーズがあること」を知っている

最後に大切なのが、当たり前だが「社会的ニーズのあることを考える」ということである。

世の中には研究が好きで、他人よりうまくできるものの、出来上がった商品がまったく売れないという人や研究所は多数存在する。

私の友人に、ドイツ系シンガポール人で非常に優秀なエンジニアがいるが、彼が始めたベンチャーが、なんと「庭に入ってくる小動物に水鉄砲を発射して撃退する」機械だったのだ。この商品は案の定、1台も売れなかった。

これは、「好きで得意だろうが、市場性がなければその仕事で自己実現はできない」という、とても恥ずかしい一例といえるだろう。

仕事で自己実現をしようと思えば、「自分が好きなこと×得意なこと×市場性のあること」というシンプルだが最も重要な3つの問いに応えなければならない。

さもなければ、一度しかない人生をかけて、①得意だがつまらないことに邁進するか、②好きだが苦手なことで他人に迷惑をかけるか、はたまた③結果的に誰も買わない「小動物水鉄砲撃退マシーン」をつくってしまうという、それはそれは二流の、恥ずかしい人生に転落してしまうのである。

(イラスト:岸 潤一)