なぜ若い女子たちはお金を使わなくなったのか?

「若い女子たちがお金を使わなくなったと言われる昨今、その背景にあるのは、非正規雇用の増加です」と語るのは消費行動に詳しいアナリストの久我尚子氏。

「今、若い女性の約4割が非正規雇用者です。給料は上がらず、年金など社会保障への不安も拭えない。このような状況では、お金を使おうと思っても使えません」

内閣府のデータによると、女性の非正規雇用者は、15~24歳が36.2%、25~34歳が42.1%となっている。

「しかし、お金を使わなくても充実した生活が送れるようになりました。ファストファッションやファストフード、LCCなどが台頭し、安価で品質の良いサービスが溢れているからです。加えて、モノに対する価値観も大きく変わってきています」

大きなきっかけがインスタグラムやツイッターなどのSNSの登場だという。

「そもそも、若い世代はモノが溢れた社会で育ち、昔のようなお金の使い方は珍しくなっています。さらに、SNSを使って生活の充実度をアピールする人は増えていますが、ブランド物よりも、例えばカラーランなどの珍しい体験のほうがシェアされやすかったりします」

このように、若い女性がお金を使わない状況はこのまま続くのだろうか。

「現在、政府が非正規雇用の処遇改善を押し進めていますが、雇用が安定すれば消費は増えるでしょう。ただし、大きくは変わらないと予想しています。今の生活でも十分質は高いので、普段はファストファッションやファストフードなどで過ごし、少し余裕があるときに一点豪華主義として奮発するというお金の使い方が増えていくと思いますね」

【久我尚子氏】
アナリスト。ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員。消費者行動や心理統計などを専門とするアナリスト。著書に『若者は本当にお金がないのか?』(光文社新書)