皮肉屋はボケやすい 脳の活性化促す「笑い」でリスク回避

タレントの有吉弘行しかり、マツコ・デラックス、坂上忍と、テレビは相変わらず毒舌キャラが席巻している。シニカルなトークが人気になっているが、実は、その行為が脳にダメージを与えているという。要するに、同僚や部下を皮肉ってばかりいるアナタは、認知症のリスクが高まるらしい。医師で医療ジャーナリストの森田豊氏がこう言う。

「“皮肉思考”は、認知症の発症に関わることが明らかになっています。毒舌やブラックジョークのように、誰かを陥れようとする笑い(悪口)は脳の活性化にはつながらず、脳の一部だけを酷使した状態になる。結果、脳の働きを低下させて認知症につながる、と考えられます」

その根拠になっているのが、2014年のイースト・フィンランド大の研究で、同大の研究チームは「皮肉屋は認知症になりやすい」ことを発見している。平均71歳の高齢者男女1449人を対象に、考え方が皮肉っぽい人と認知症の発症率を調べた。8・4年間の追跡調査の結果、考え方が皮肉っぽい人は、そうでない人に比べて認知症が3倍も発症しやすいことが分かったという。

「逆に笑うことは認知症を含め、健康な体づくりに有効です。ナチュラルキラー細胞という免疫細胞を活性化させ、心身を健康に導くことが分かっています」(森田豊氏)

笑いが認知症予防につながることは、各方面で指摘されている。米国の医学界では「笑い療法学会」を発足。笑いには右脳を活性化し、左脳のストレスを緩和する働きがあるとしている。

福島県立医科大の大平哲也主任教授による認知症予防を目的とした笑いの効果に関する論文によると、「ほとんど笑う機会がない人は、ほぼ毎日笑う人に比べて、認知機能低下症状を持つリスクが2倍以上高い」という。

とはいえ、理不尽な上司や生意気な部下の相手をしていれば、皮肉だって言いたくなる。そのせいでボケたら、サラリーマンも救われない。

「同じ不満を吐き出すにしても、みんなが不快な思いをせず、笑える例え話に変換しようとする行為は、脳全体を活性化します。毒舌ではなく、笑えるツッコミに置き換えるようにする。それを習慣づけることで、リスクを回避できますよ」(森田豊氏)

同僚と会社の愚痴大会を開くときは、有吉というより、明石家さんまになったつもりで。きょうから試してみるか。