コンビニ「お茶戦争」で起きた3つの変化

私たちの身近にあるコンビニの知られざる裏話を、業界の内情に詳しいライターの日比谷新太さんが紹介していく当シリーズ。前回の「本部担当者(スーパーバイザー)たちの仕事」の話題に続き、今回取り上げるのは「コンビニお茶飲料の最新動向」について。各メーカーが激しいシェア争いを繰り広げるカテゴリーだけに、売上上位ランキングの顔ぶれも3年前のものと比べると、大きく様変わりしているようで……。

「お茶」売れ筋商品に変化が……

気温の上昇に伴って、コンビニでもペットボトル飲料の販売が大きく伸びるこの時季。なかでも、それらの主力となるカテゴリーが「お茶飲料」です。

伊藤園が『お~いお茶』の発売を開始したのが、今から約30年前の1989年のこと。その後の1996年には、現在の形状に近いペットボトル飲料が登場し、キリン『生茶』、アサヒ飲料『十六茶』、日本コカ・コーラ『爽健美茶』といった後の定番商品が誕生。さらに2004年には、サントリーから『伊右衛門』が登場し、ペットボトルお茶飲料市場のシェア争いは激しさを増していきました。

また近年では、花王『ヘルシア緑茶』やサントリー『伊右衛門 特茶』といった、特定保健用食品(トクホ)のお茶飲料も人気で、一定のシェアを確保するまでになっています。

飲料メーカーとしても、お茶飲料は利益の源泉となる重要な市場ですので、様々なコンセプトを持った新商品を続々と投入しています。そのため、以前なら圧倒的に勝ち組だった商品が、気が付くと下位ランクに落ちているということも多々発生します。

上の表は、今年6月と3年前(2014年)の同月における売れ筋商品のランキングです。これを見ると、この3年で3つの大きな変化が現れたことがわかります。

【変化その1】 『伊右衛門』ブランドの失墜

3年前、その圧倒的なブランド力で、コンビニお茶カテゴリーを支配していたサントリー『伊右衛門』。しかし直近のランキングでは、ことごとく売れ筋順位を下げています。

注目すべきは、定番商品だった『伊右衛門』がランキング外に落ちていること。ただし『伊右衛門 特茶』シリーズに関しては、依然としてランキング上位に残っています。『伊右衛門』のブランド力には陰りが見えつつも、トクホ人気は相変わらずといったところでしょうか。

【変化その2】 「麦茶」の大躍進

3年前のランキングでは、伊藤園『健康ミネラル麦茶』のみが売れ筋上位にランクインしていた麦茶。ところが直近のランキングでは、『健康ミネラル麦茶』にくわえてサントリー『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶』が、ともに上位ランクインを果たしています。

10年以上前の状況を振り返ってみると、その頃は麦茶が一向に支持されず、カフェインレスの飲み物を求める(乳幼児に飲ませる等)一部のお客さんにのみ売れていた印象でした。ところが、今や麦茶は夏のド定番商品にまで成長しました。

そのプロセスとしては、『健康ミネラル麦茶』の独壇場だったところに、『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶』の新規参入によって市場が活性化。相乗効果でともにシェアを伸ばしたものと考えられます。

【変化その3】 大容量化が止まらない

現在の売れ筋ベスト3商品ですが、大容量商品が並んでいます。

通常のペットボトル飲料は500mlですが、3年ほど前に『十六茶』が600mlの商品を発売して以降、大容量化が止まりません。ちなみに、売れ筋上位にはランクインしていませんが、『お~いお茶』も大容量商品を発売しています。よりコストパフォーマンスの高い商品を求める消費者の思いが、如実に表れる結果となっています。

このように今後のトレンドを占ううえで、「大容量化」はとても重要なキーワードとなるでしょう。そこで登場が期待されるのが、『伊右衛門』ブランドの大容量商品。これは間違いなくヒットしそうで、もし実現すれば『伊右衛門』ブランド復権のきっかけに、さらにはコンビニお茶カテゴリーのさらなる活況にも、大いに繋がっていきそうです。

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文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

出典元:まぐまぐニュース!