東日本大震災:汚染米廃棄、旧市町村ごと 14都県対象、2段階で検査

 農林水産省は3日、近く収穫期を迎えるコメについて、収穫の前後2段階で放射性セシウムを調査する方針を発表した。収穫後の本調査で暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超えた地域のコメはすべて出荷停止として廃棄処分を義務づけ、農家の損害は東京電力に損害賠償請求する方針。他の食品より綿密な二重チェック体制で、主食であるコメの安全を確保したい考えだ。
 農水省は同日、生産者団体などを集めこの方針を説明した。予備調査は福島県など14都県のうち、土壌調査でセシウム濃度が1キロあたり1000ベクレル以上あった市町村や、空間放射線量率が平常時(毎時0・1マイクロシーベルト以下)を超える市町村などを対象に実施する。
 収穫約1週間前に玄米の状態で調べ、1キロあたりの濃度が暫定規制値の半分程度の200ベクレルを超えた市町村を重点調査区域に指定、収穫後の本調査を15ヘクタールにつき1カ所(おおむね集落ごとに1カ所)で行う。その他の地域は1市町村あたり7カ所程度で調べる。
 本調査で暫定規制値を超える所が1カ所でもあれば、政府は知事に出荷停止を指示する。市町村全域では広すぎる地域もあり、旧市町村単位(1950年当時)を原則とする。出荷停止地域で生産されたコメは自治体が全量を管理し廃棄する。
 説明会で農水省担当者は、土壌のセシウムの値が1キロあたり5000ベクレルを超えた福島県の一部地域では4月にコメの作付けを禁止しており、これ以外の地域のコメから暫定規制値を超えるセシウムが検出される可能性は低いとの認識を示した。
 農水省が指定した調査対象地域は、福島▽茨城▽栃木▽群馬▽千葉▽神奈川▽宮城▽山形▽新潟▽長野▽埼玉▽東京▽山梨▽静岡--の14都県。【佐々木洋、浅野翔太郎】
 ◇農水省、出荷食い止め必死
 今年産の新米への放射性セシウム汚染調査が本格的に始まる。福島第1原発事故による農作物への影響は主食にも及ぶのか。自治体や稲作農家は危機感を募らせ、消費者は強い関心を寄せている。
 コメ調査の大きな特徴は、収穫期を挟んだダブルチェックだ。汚染肉牛の流通を食い止められなかった教訓もあり、事前にリスクの高い地域を把握する「予備調査」を実施、汚染米の出荷を食い止めようと農水省は必死だ。
 だが調査地点数は十分とは言い難い。局所的に放射線量が高いホットスポットもあり、汚染エリアを正確に把握するのは難しい。
 判明した汚染米の管理も大きな課題だ。コメの流通実態は複雑で、農協や商系卸を経由する市販米のほか、消費者が農家から直接買う「産直米」、農家が遠くの親類に送る「縁故米」、菓子、酒造、飼料メーカーなどが利用する「くず米」など多岐にわたる。工業用原料に使われていた有毒物質を含む「事故米」が食用に流れていた事件(08年9月)もあり、流通全体に網をかけるのは容易でない。
 肉牛汚染で明らかなように、汚染米が市場へ出た際の混乱や生産者へのダメージは計り知れない。そうなれば、原発周辺地域以外での作付けを認めた国の判断が問われる可能性もある。【井上英介】

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Posted by takahashi