カタール王族、伊ヴァレンティノ買収-産油国のブランド志向の表れ

 カタールの王族はイタリアの有名ファッションブランド、Valentino(ヴァレンティノ)を英投資ファンドから買収する。関係筋が述べた。中東の小さな産油国であるカタールの高級ブランド取得への熱意を示す最新の動きだ。
 ヴァレンティノは12日、カタール投資家が支援する投資会社Mayhoola(マイフーラ)によって買収されると発表した。関係筋によれば、買い手はカタールの王族だという。 
 買収額は公表されなかったが、同筋は約6億ユーロ(約7億3100万ドル、約580億円)だと述べた。 
 今回の買収は産油国カタールの投資家による一連の高級ブランド買収の最新の動きだ。高級ブランドは、経済的な逆風にもかかわらず、力強く成長し続けている。
 カタールは石油や天然ガス輸出に伴う膨大な富を使って、戦略的な資産を世界中で購入している。例えばロンドンの高級百貨店ハロッズやフランスの幾つかの高級ホテルなどだ。今年に入って、政府系投資ファンド(SWF)のカタール投資庁(QIA)はフランス高級ブランド大手モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)の株式1%強を取得している。 
 しかしヴァレンティノ買収は、カタールのSWFによる広範な投資戦略の一環というよりも、王族の私的な事業であるようだ。 
 マイフーラの代表は声明で「ヴァレンティノは世界的なブランド組織の土台形成に理想的だ」と述べた。 
 ヴァレンティノは1960年、イタリアのファッションデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏が創業した。シンガポールからラスベガスまで世界各地に店舗を置き、既製服やアクセサリーから高価なオートクチュール(仕立服)まで、一連の高級製品を販売している。 
 しかしヴァレンティノの今後は順風満帆とはいかないかもしれない。決算発表シーズン開始に伴い、最初に発表された高級ブランドの決算を受けて、高級品ブームは冷え始めているのかもしれないとの懸念が投資家の間で浮上した。英バーバリー・グループは今年度第1四半期の売上高が11%増加したと発表したが、前年同期からは大幅に鈍化した伸び率だった。
 高級品メーカーはおおむね金融危機を脱したと述べているが、英投資ファンドのPermira(ペルミラ)による2007年の買収以降、ヴァレンティノの業績は不安定になっている。 
 ファッション世界における投資家や投資ファンドの成績もまちまちだ。ファッションハウスにとって成功するデザイナーを見いだすことは、フランスの高級ブランド経営者のベルナール・アルノー氏やフランソワ・ピノ-氏といったベテラン実業家にさえ難しい。ヴァレンティノを買収したペルミラは、07年に創業者のガラバーニ氏が引退した後、クリエーティブなトップデザイナー探しに苦労した。バレンティノは今なお「レッドカーペット」、つまり著名人のお気に入りだが、かつてのような国際的な地位を決して取り戻していない。 
 ヴァレンティノのステファノ・サッシ最高経営責任者(CEO)は声明で、「過去数年間、高級品市場の大きな変動にもかかわらず、ヴァレンティノは力強く歩んできたし、ヴァレンティノ・ブランドの潜在力を最大限に引き出すよう邁進してきた」と述べ、カタール投資家による買収を「喜んでいる」と語った。

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Posted by takahashi