在日中国人が「真の日本」を発信するSNSが中国で大人気

今、在日中国人が発信するSNSが中国で大人気だ。手掛けているのは「網紅」と呼ばれるインフルエンサーたち。中には広告も発信し、ビジネス的に成功している人もいる。人気の秘密は、その内容にあった。1995年に日本で創刊された中国語の新聞『東方新報』の取材班が取材した記事をご紹介しよう。

在日インフルエンサー発信のSNSが中国人に大人気

「網紅」とは、ネット上の発言が世間に大きな影響を与える人物、インターネットセレブリティやインフルエンサーのことだ。

そんな「網紅」の一人、林羊羊(Lin Yangyang)さんは、112万人のフォロワーを持つ微博(Weibo)の「林萍(Lin Ping)在日本」の管理者で、生放送も行っており、中国のインターネット上で大きな影響力を持っている。3月27日、彼女が秋葉原の電気街でカメラを選んで購入する様子を生放送したところ、視聴回数は186万回に上った。

一方、3万人の会員を持つ一般社団法人「美麗媽媽協会(美ママ協会)」は、当初、中国人ママたちの子育て相談プラットフォームだった。それが、今では在日中国人社会で影響力を持つ「網紅」となっており、日本の有名化粧品会社やマタニティ・ベビー商品、食品メーカーなどが、中国国内へ“本物の情報”を届けてもらいたいと、こぞって彼女たちに提携を持ちかけている。

「日本」は中国のネット上で大人気多くが在日中国人「網紅」の発信情報

今や、中国の微博や微信(WeChat)、生中継のプラットフォームなどで、「日本」はいつも人気キーワードに上がっている。中国のインターネット上は、日本の衣食住に関するさまざまな情報で満ちあふれており、日中間の時間的、空間的距離はほぼなくなってきている。

その多くが、在日中国人「網紅」が発信する情報だと言っても過言ではない。日中両国の人の行き来が盛んで、爆買いのブームの最中に誕生した存在の彼らは、両国民の相互理解を促進する架け橋となり、両国を結ぶ市場繁栄の綱となっているのだ。

現在、日本には80万~90万人の華僑・華人が住んでおり、その購買力と発言力は無視できなくなってきた。それに加え、毎年押しかける訪日中国人観光客の「爆買い」や「弾丸ツアー」の熱に、日本企業や各地方自治体が、在日中国人に意見を求めるケースも増えてきた。

美ママ協会創設者の佳霖(Jia Lin)さんは、「中国人が日本に興味を持ち始めたことは、中国の経済が発展してきたことと、文化面でも周辺国家の影響を受け始めてきたことが関係している。中国人の趣向が世界に向いてきたことがある」と話す。

つまり、在日中国人社会から「網紅」が誕生したのは、今の時代が必要としていたからとも言えるのだ。

冒頭で紹介した林さんが、毎朝起きてすぐにすることは、各新聞サイトやツィッターなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を閲覧し、最新の話題があればすぐに微博で拡散することだ。

毎日最低5回は更新し、話題はフォロワーが興味のありそうな話題を選ぶ。「フォロワーの層は広く、エンターテインメント性があるもの以外に、政治、経済の速報などはいち早く伝えるようにしている」(林さん)

日本の真実の姿を直接中国人に紹介

「林萍在日本」は2012年に誕生した。当初は日中両国で起こった話題のニュースを発信していたが、「哈日(ハーリー:日本が大好きな若者)」のフォロワーが増え、「日本にいすぎて身についた60の『悪習慣』」で人気が爆発、フォロワー数も一気に増え、有名になった。

その頃から林さんは、日本での生活の細かい部分を発掘していくスタイルを確立した。

「私が日本で見聞きして感じたものが、日本に興味を持っている中国人の視聴者の客観的かつ本物の理解へつながれば。フォロワーが見たいものだけを作っていきたい」(林さん)

このような在日中国人の「網紅」がどんどん増えて、日本の真実の姿を直接中国人に紹介している。有名なメディアとは違って、彼らが目にした日本は最も自然で、いい部分も悪い部分もある。つまり、在日中国人の目を通した“真の日本”の姿を伝えているわけだ。

微博の「这里是日本(ここは日本)」は、2012年1月から発信を開始、フォロワーは150万人以上だ。創設者兼運営者の陳寧欣(Chen Ningxin)さんは今年27歳。日本に4年以上暮らしている。仕事は別にあり、微博の運営はその合間にやっている。

「ここは日本」を創設した際、彼女は京都で留学していた。京都は観光名所が多いし、彼女自身旅行が好きだったため、自分が撮影した風景やグルメの写真を微博に掲載していた。フォロワーはじわじわと増え始め、その後、その影響力を利用して企業の広告を打つなど商業化の道が開けた。

「このアカウントを作った目的は、実際に日本で生活し、日本を理解していることを強みとして、自分たちが体験してよかったものをみんなに勧めるため。日本をもっと直接的に、リアルに知ってもらいたかった」(陳さん)

目下、日本の企業や政府機関の広告や宣伝は、テレビや新聞、雑誌などの伝統的メディアが主流だが、中国市場ではSNSなどの新しい媒体で展開する方が効果的だ。それこそが、在日中国人「網紅」にとっての大きなチャンスとなった。

在日中国人「網紅」のビジネス活動は主に訪日旅行市場で、顧客は訪日中国人や中国国内消費者だ。「ここは日本」は現在、主にデパートやメーカー、地方政府の広告を発信している。最近ではデパートの生放送が多く、一部のデパートとは長期提携を結んでおり、月1回のペースで放送する。デパートで行われる季節のイベントやセール、限定商品やサービスを紹介しているという。

日本で長年、情報発信ビジネスに従事している在日中国人の一人は、「『網紅』のような新しい形式、新媒体の力に驚くとともに、『網紅』たちがこのメディアの力をうまく利用してくれることを期待している。それにより市場化され、ルールができ、日本の企業もその効果を認めれば、投資するだろう。在日中国人『網紅』はこれからも進化し続けるだろう」と話している。

(『東方新報』 取材班)

※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。