月額490円からのパケット定額!――格安SIMがもたらす価格破壊はモバイルの常識も破壊できるか?

スマートフォンのパケット定額料金は、3大キャリアではおおむね月額5000円前後。2年間払い続ければ12万円ほどと、それだけで最新薄型ノートPCの上位機種が買えてしまうほどの額になる。自宅に光/ADSLのブロードバンド環境がありながら、家族それぞれがスマホ持ちの場合、パケット定額も個々に契約するしかなく、月々の通信料金がかさむことに割り切れなさを感じている人も多いだろう。
 実際、家庭内で複数台のスマホを保有している世帯は全体の33.5%にもなり、スマホへの買い換えを機に家庭の通信費が平均3300円増加したという調査報告※もある。
※「スマートフォン利用家庭の通信費に関する意識調査」2012年1月実施/株式会社サーベイリサーチセンター
 単身者なら、自宅も外もWiMAXに通信を一本化する節約術も有効だが、会社と自宅など離れた場所で同時には使えないので、家族での利用には適さない。そこでもう一つの選択肢として最近注目を集めているのが、データ通信専用で低速だが月額980円などの定額でパケット通信使い放題を提供する、いわゆる格安SIMだ。
「b-mobile SIM イオン専用」(月額980円、下り最大150kbps)や、「IIJmioウェルカムパックforイオン ミニマムスタート128プラン」(月額945円、同128kbps)が代表的だが、「ServersMan SIM 3G 100」(月額490円、同100kbps)という、月額料金がワンコインに収まるサービスすらある。ただし、接続速度は前述のようにダイアルアップなみに遅く、動画はもとより、PC向けにつくられた重いサイトを開くにも、ひたすら忍耐を要する。
 さらに、SIMを差し替えての利用になることにも注意が必要だ。そのため、実質的には二台持ちでの運用が前提になる。メインの携帯端末は通常SIMのままで電話番号とメールアドレスをそのまま使い、古いスマホなどに格安SIMを挿してデータ通信専用で使うわけだ。格安SIM用の端末を別途用意しなければならないことが、現状では最大のネックと言えるだろう。
 ただし、低速とはいえ月額1000円程度でモバイル接続環境が持てることの利点は大きい。Eメールや2ちゃんねるなどテキスト中心の使い方なら充分実用の範囲内だ。さらに、ネットラジオの聴取や、SkypeやLINEでの通話もほぼ問題なく行えるという報告もあちこちから寄せられている。
 格安SIMで音声通話が行えるとなると、二台持ちの必要もなくなり、格安SIMを挿した一台だけですべてが賄えるかもしれない。LINEやGmailなどのサービスが今後さらに普及していけば、携帯の電話番号やメールアドレスにこだわる必然性も薄れるだろう。そうなれば家族単位での通信費用が節約できることはもちろん、ビジネスシーンでの活用も進みそうだ。
 ある調査報告によれば、会社から携帯端末を支給されているビジネスマンは全体の3割※だそうだが、この程度の月額料金なら支給してもいいという会社も多いだろう。古くなったスマートフォンをビジネス向けにリユースする市場も生まれるかもしれない。
※「可能性ある“スマホアプリ”市場」2012年年頭実施/株式会社ネットマイル
 それにしても、パケット定額料金はどうしてこれほど高いのか? これは携帯キャリアが店頭価格の安さを謳いながら、実際にはパケット料金で回収する構図となっているためで、携帯電話の料金体系を複雑でわかりにくくしている元凶でもある。格安SIMの普及でそうしたいびつさが解消に向かうことを期待したい。また、低速通信利用者が増えることでwebメディア全体が“重さ”にいっそう注意を払うよりになり、結果的にトラフィックにも余裕が出てくるかもしれない。格安SIMの今後の展開からは目が離せないのだ。

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Posted by takahashi