今年ももう12月。ボーナスが支給されたという人もいるのではないか。世間ではボーナスを受け取った後、退職するという人も多いようだが、残念なことに残った人の間で退職した人の悪口を言い続けることがある。なぜ、そんなことをするのだろうか。人間心理に詳しいKeep Smiling代表、横山 人美さんに話を聞いてみた。
■なぜ退職した人の悪口を言うの?
どのような心理から、悪口を口にしてしまうのだろう。
「悪口を言う理由としてまず挙げられるのは『強い劣等感』です。相手より自分が劣っていると感じたときに、安易にその人を貶めたいと思う気持ちです。次に『強い承認欲求』が挙げられます。自分の価値や存在を仲間に認めてほしいと思う気持ちがあるのに大した努力もせず、人の悪口を言うことで仲間を集め自分が優位にいたいと思う気持ちです。そして『強い嫉妬心』があります。自分より劣っていると思っていた人が幸せをつかんだときや、負けたくないのに負けてしまったときなどに起こる人間の心の中にある苦しくてトラブルにも発展しやすい気持ちです」(横山さん)
横山さんは、「悪口の多くは言われる人ではなく言う人に問題があるということが前提にある」と続けた。
「悪口が出るということは、強い嫉妬心などの気持ちが、言う人の心の中に発生したということです。自分も会社に不満があって辞めたいが、辞める勇気がないのにサッサと辞める人に対し、先を越されたようで羨ましいと思う。結婚が決まって退職する人に対してもこれと似たような気持ちを持ってしまう。ボーナスをもらった途端に辞めるなんて(悪いことではないが)何となく納得できない。退職した人が今の会社よりも収入が多い会社に再就職をするとか幸せをつかむことなどが明らかに分かる場合など、このような傾向が強まることがあるかもしれません」(横山さん)
なるほど。悪口を言うのは強い劣等感や嫉妬する気持ちなどの裏返しということか。では、別のターゲットができれば退職者の悪口を言うのをやめるのだろうか。
「悪口を言われる人が大きな失敗をしてボーナスだけもらった後に逃げるように退職した場合を除き、悪口を言う人の心理は言われる相手にはなく、悪口を言う人自身にあるので、その人の思いが変わらない限り続くのではないでしょうか」(横山さん)
悪口の発言者が自覚し改善しない限りは収まらないようだ。
■退職者の悪口を言わない職場にするには
だが、人の悪口など言わず職員が明るく楽しく働いている職場があるのも事実。どうしたら悪口を言わない職場に変えていけるのだろうか。
「職場において自分の仕事への当事者意識を高めることで、仕事に対する責任やパフォーマンスが上がり仕事に向かうことが楽しくなります。そのためにはまず、自分が目標をしっかり持ち、同じ職場で働く人のよいところに目を向け、ねぎらい、感謝、助言をしながらお互いを高めあえる存在でありたいものです。この意識を一人ひとりが持てているのかに着目して職場環境、人を含めた資源、コミュニケーションのあり方を見直し高めてみてはいかがでしょうか?」(横山さん)
職場全体の問題として解決していく必要があることが分かった。
■同僚が退職した人の悪口を自分に言ってきたらどうする?
では、同僚が退職した人の悪口を自分に言ってきた場合、どのような対応をするとよいのか。
「『悪口は言わない、聞かない』という一貫した態度と勇気を示しましょう。悪口を言う人の話を聞かないと自分も悪く思われるかもと心配して同調する関係は、本当の仲間ではありません。悪口を聞いているだけのつもりでも、その場にいるだけで、周囲から見れば仲間と思われて誤解されることがあります。悪口には何の生産性もありませんから、人が悪口を言っている場は避け、貴重な時間を自分や人のために使って人生を豊かにしてみませんか」(横山さん)
その場でただ耳を傾けているだけでも悪口に同調していることになる。直ちにその場を離れ、もっと大事なことに自分の時間を使うようにすることが大切。もし職場で悪口などを耳にしたら、今回の記事を参考に、明るい職場への意識を高めてほしい。
●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害とのかかわり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。
教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)