高齢化や人口減少が進行することにより、我が国では今後様々な問題が発生すると予想されており、その中には「空き家の大量発生」や「廃墟マンションの出現」といったマンションに関わってきた者にとって目を背けたくなるものも含まれています。

何か適切な解決策はないか、と「第2回団地マンションリノベーション総合展」で開催されたマンション管理についての講演会に先日参加し、思いがけない考え方に接することができました。

団地マンションリノベーション総合展とは?


11月20日~22日に東京ビックサイトで開催された「Japan Home & Building Show2018」は住まいに関する建材・部材・設備・サービスが一堂に会する日本最大規模の専門展示会で、その中で「第2回団地マンションリノベーション総合展」も併せて開催されていました。


イベントでは講演会も開催されており、大手のマンション管理会社である大和ライフネクストの丸山肇氏による「高経年マンションのための将来設計」は、マンションで今後予想される危機を避けるために何が必要かを説いたものでした。

2025年のマンションでは「2つの老い」が進行している!?


2025年の日本は国民の3人に1人が65歳以上で5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」となっており、それによって発生する諸問題が「2025年問題」と呼ばれています。

マンションは総戸数が700万戸を突破しますが、それと同時に高経年化が進行し、全体の平均築年数がなんと28.3年なります。

さらにマンションの内部では60歳以上の世帯主が全体の70%を超えると予想されており、2025年のマンションは建物と居住者の「2つの老い」という問題にさらされることになります。

しかしここまでなら筆者もよく知っている事実です。

盲点だった「終の棲家を全うした後」

スイマー / PIXTA(ピクスタ)

管理が簡単でバリアフリー化が進んでいるマンションは高齢者の住まいとして適しており、子供が独立した夫婦が戸建てを売却してマンションに住み替えるという事例も珍しくなくなっています。

以前なら戸建てに移る前のひとつのステップだったマンションですが、今では終の棲家として永住志向が高まっています。

「終の棲家を全うした後」という視点は筆者にとっても盲点でした。

講演では「マンションで人生を全うするたびに空き家が増える」と説き、「その後の姿」として

1.子供たちも、多くは自分の家を所有済み、転売して新しい購入者が住む。
2.転売せずに賃貸に出す。賃借人が付くなら、空き家にはならない。
3.売るに売れず、貸すに貸せず。固定資産税や管理費等が持ち出しになる負の資産になる
4.負の資産として、はなから相続を放棄。管理費等の請求先がない状態へ

という4通りのモデルを提示しています。

1か2なら全く問題なし。管理会社のフロントを長くやった筆者は3の事例は知っていますが、4については考えたこともありませんでした。今回のセミナーで最も印象深かった項目です

「三つの方法」に飛びつくな?

ABC / PIXTA(ピクスタ)

2025年問題で最も避けなければならないのが管理不全によるマンションの廃墟化であることは誰もが認めています。

老朽化したマンションの「建替え」や「更地清算」が現実問題としてかなり困難である以上、諸問題への対策としては「長寿命化」しかないというのが一般的な論調となっています。

これについては筆者も同感でしたが、一方で「長寿命化」のために必要だとして提示された管理組合の活動内容に対しては「非現実的」と感じたのも事実です。

この何とも悩ましい問題に対して講演では「3つの方法に飛びつくな」とし、現状を把握してマンション全体で学び、共有化していくことこそが大切であるとしています。

「長寿命化」「建替え」「更地清算」という「3つの方法」 はどれもハードルが高く、最初からどれかひとつに決め打ちしてしまっては話がまとまらなくなってしまうからです。

それぞれのマンションが持つ潜在力を全員が正確に把握し、アイデアを出し合えば「3つの方法」意外の解決策が見つかるかもしれず、たとえ最終的に「3つの方法」のどれかに頼らなければならなくなった場合でも、このような取り組み方をすれば今後につながります。

持続可能性につなげる方法を考え出す


建物と居住者の「2つの老い」という問題に対して講演では「持続可能性」という考え方を提示し、若い世代が「住みたいと思える価値造り」がカギになると説いています。

筆者もフロントとして数多くの管理組合を見てきましたが、売買などにより常に新しい人が入ってくるようなマンションでは管理組合も幅広い年齢層で構成されており、そのような組合は多様な問題に対応できるだけの強さと柔軟性を持っていたと思います。

「マンションの廃墟化を防ぐには長寿命化しかない」と突っ走るより、こういった考え方の方が多くの人にとってはとっかかりやすいかもしれません。

自分がかかわるマンションだけは何とかしたい

PIXTOKYO / PIXTA(ピクスタ)

今後人口減少が加速化していく中、それでもマンションは建ち続けています。

需要の減少が確実な状況で供給が変わらないのですから、いくら個々のマンションで「持続可能性」を追求しても社会全体の流れとして「空き家の大量発生」というのはもはやどうしようもないでしょう。

こうした中で採りえる策としては「自分が関わるマンションだけは何とかする」ということしかないかもしれません。