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「炬燵でウトウト」が一番危険! 炬燵で“死なない”ための7カ条

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炬燵(こたつ)がきっかけとなり、死に近づいた人がいる。

 75歳(当時)の男性だ。地方から東京の娘の家に遊びに来ていたときのこと。夕食後に、炬燵で憩いの時間を楽しんでいたところ、炬燵から出られなくなった。どうも体に力が入らない。重たい体を炬燵から引っ張り出し、救急車で病院へ連れていくと、脳梗塞を発症していた。旅の疲れもあったのだろう。おいしいご飯もたくさん食べ、持病の糖尿病が悪化したのかもしれない。男性はその後10年にもわたって、周囲が驚くほど懸命にリハビリを行ったものの、麻痺が残ったままの体で、最後は肺炎で亡くなった。

「炬燵だけが原因ではないとはわかっているけれど、あの日のことを思い出すと、複雑な気持ちになる」(親族)

 脳卒中のひとつである「脳梗塞」は、脳の血管が詰まることで血液が流れなくなり、脳の組織が死んでしまうものだ。

 原因の一つが、高血圧や動脈硬化によって脳血管に血栓ができること。

 一方、心筋が壊死してしまう「心筋梗塞」は冠状動脈の硬化が原因で、血栓が付着するなどで血管が閉塞してしまう。いずれもよく知られており、突然起きるイメージがあるが、気づかないうちに病は忍び寄っている。それがいつ、どのように出るか。言い換えれば、その発症リスクをどこでどう抑えるべきか。それを知っておくだけでも有効だ。そこに「炬燵」も加えて考えよう。

 東京・世田谷で地域に密着し医療を提供する鳥居内科クリニックの鳥居明院長に話を聞いた。

「炬燵には、入浴と同じぐらいリスクがあります。そんな危険性が潜んでいるとは思えないかもしれませんが、実は、炬燵に長く入ることによる『脱水』で便秘になったり、脳梗塞や心筋梗塞を発症させたり、腰痛が悪化するということもあります。正座やあぐらをかくことで関節に痛みが出る可能性もあります」

 だが、普通に使用している限り、炬燵に危険性はないという。冷えた足元が直接温まる炬燵は、癒やしの観点から見れば効果抜群だ。

「冷え性の女性にとって炬燵は助けにもなります。だからといって安心すると脱水状態になるので注意が必要です」

 脱水症状になることと、長時間同じ姿勢でいることが問題のようだ。

「掘り炬燵なら問題がないかもしれませんが、一般家庭にある炬燵の場合、まっすぐ足を投げ出して伸ばした状態で入ります。これは腰に負担がかかります」

 室温と炬燵内部との温度差も問題という。

「部屋をある程度暖めて、温度差がないように入るのが良いと思います」

 電気代の節約のためにと、エアコンを消して、炬燵だけで暖をとる人も多いかもしれないが、あまりにも室内の温度が低い場合は危険という。

 米山医院(東京都あきる野市)の院長で、認知症や脳科学に詳しい米山公啓医師もこう警鐘を鳴らす。

「炬燵に入るときは、室内を暖めたほうがいい。加湿器を使うなど空気中の水分量を増やすこと。夏は脱水で脳梗塞になりやすいといわれていますが、むしろ脳卒中疾患は冬のほうが多いんです。冬は気温差で血圧変動が大きくなるからです」

 米山医師も、炬燵で同じ姿勢でいることが血流を悪化させると指摘する。

「エコノミークラス症候群みたいになってしまうからです」

 予防するには、常に体を動かすことだ。30分〜1時間おきに体を動かそう。体の姿勢を変えたり、とにかく楽をせずに細々と体を動かす、「貧乏ゆすり」でもいいそうだ。米山医師はこう話す。

「炬燵にぬくぬくと長く入っていると、血管は拡張したままの状態で血流は停滞します。高齢者の場合、血圧変動が脳に影響を与えることもあり危険。脂質異常症で動脈硬化が進み血管が狭くなっていれば、最悪、死を招くこともありえます」

 炬燵でウトウト。やはりこれが一番危ないという。高齢になると暑い・寒いのセンサーも衰え、のどの渇きも感じにくくなる。脱水状態になっていても気づかないこともありえる。前出の鳥居院長は、炬燵は半身浴に近い状態という。

「半身浴でも汗はかきます。脱水を起こすと体には次々と不調が訪れ、それが先に話した『便秘』や『脳梗塞』、『心筋梗塞』を引き起こします。体質的に悪い状態のときに、起こりやすくなります。危険因子に加え、炬燵が引き金になり発症するのです」

 脳卒中専門医の前田眞治さんも同意見だ。

「炬燵は温泉に浸かったときのように体温上昇が極端ではありません。全身浴というより半身浴状態。しかも長時間入り発汗しても冬場は空気が乾燥しているので気づきにくい。さらに熱せられている部分の温度が高くなると低温やけどが生じることもあります。血栓を作りやすくする『PAI−1(プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター1)』という物質が血管内壁から出やすくなったり、熱により血小板の変性が生じて血栓ができやすくなる可能性もあります。普通に炬燵に入るのであれば問題ありませんが、長時間や寝てしまうことで危険性が増すと考えられます」

「PAI−1」は、血栓を溶かす働きを阻害する物質のことだ。血栓ができる元凶ともいえる「血小板」。

「喫煙や肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの条件が重なると動脈硬化が進み、それにより血管壁が硬くなります。そこに血小板がくっつくことで、血栓ができてしまいます」(前出の米山医師)

 炬燵などの熱によって変性した血小板が、血管壁に付着しやすくなることもあるという。炬燵で長時間眠らぬよう注意をしよう。

「うたた寝しないように、『眠ったら起こしてね』と同居人に頼むとか、自分でタイマーをかけるとかして、常に気を付けること。定期的に水分をとって、1時間に1回ぐらいは立ち上がることです。あえていえば、1時間にコップ1杯ぐらいの水分を。お酒を飲んだ後は控えましょう。炬燵は一家団欒になるし、ぬくいし、電気代も安くて、お財布にも心にもあたたかいものです。『炬燵=悪い』と短絡的に考えるのではなく、上手な入り方で、体を守りましょう」(鳥居院長)

 誰も炬燵で死ぬとは思わない。でもよく考えてみると、正座であろうが足を投げ出していようが、同じ姿勢のまま動かず、体内の水分が減っていけば、血流状態が悪くなるのは容易に想像できる。実は記者も数年前、夜中に炬燵から出ようと立ち上がろうとしたとき、足に力が全く入らなくなったことがある。慌てて病院に行き、その後MRIやCT撮影など徹底的に脳の検査をしたが異常はなく、「足がしびれただけでしたね」という笑い話で終わった。しかし、笑えなかった。あのときの炬燵から出られなかった恐怖は思い出したくもない。結果、学んだことが二つある。一つ「加齢で脳は老いていくという自覚を持つこと」、そしてもう一つが、「炬燵には長く入らないこと」だ。前者は時々忘れがちだが、後者は忘れることはない。(本誌・大崎百紀)

★炬燵で「死なない」ための7カ条
【1】室内を加湿加温してから入る。
【2】1時間でコップ1杯を目安にこまめに水分を摂取。
【3】30分〜1時間おきに体を動かす。
【4】温度はなるべく低めに設定。
【5】寝ない。
【6】長い時間入らない。危ないときはタイマー設定する。
【7】飲酒後は入らない。
(取材をもとに編集部作成)