識者「韓国は『敵より恐ろしい味方』」

ドナルド・トランプ米大統領は、中国との貿易戦争を激化させる一方、イランとの緊張関係を高めるなど二正面作戦を遂行している。安倍晋三首相は対中封じ込めで共同歩調を取るほか、12~14日にはイランを訪問し、仲介役が期待されている。日本の存在感が高まるなか、北朝鮮や中国にすり寄る「裏切り者」に映る韓国へのトランプ政権の圧力は一段と強まっている。同盟破棄への「Xデー」はいつ来るのか。国際投資アナリストの大原浩氏が読み解いた。

 トランプ大統領の就任式から約2年半、矢継ぎ早に行ってきた改革の主眼は、脆弱になった安全保障を立て直すことに主眼があった。

 それは、2014年に米キニピアック大のアンケートで「戦後最悪の大統領」とされたバラク・オバマ前大統領による中国に融和的な「悪夢の民主党政権の8年間」からの巻き返しといえる。

 中国電子機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置をみても、「米中貿易戦争」の本質が、関税や貿易赤字など経済問題ではなく、サイバー戦争など安全保障で米国の優位性を確保することであることが分かってきた。

 ただし、経済面でも、世界中にデフレをまき散らし、先進国経済を疲弊させてきた「中国発の供給過剰」を絶つことができれば、世界経済にとって朗報だ。一時的な混乱はあるかもしれないが、デフレ経済からインフレ経済に転換することで、少なくとも日米の経済は盛り上がるだろう。

 日本経済の絶頂期は1990年のバブル崩壊で終わったが、これと前後してベルリンの壁崩壊やソ連邦崩壊が起こった。その後、共産主義諸国が自由主義経済圏になだれ込んできて、中国などが空前絶後の繁栄を謳歌した。

 日本のバブル崩壊後の平成時代約30年間は暗闇の中だったが、令和時代の最初に中国などが世界経済から退場し、日本の繁栄が再び始まるのは十分あり得ることである。

 現在、米国が注力しているのは中国のほかには、イランの問題だ。イランはイスラエルの最大の敵であり、トランプ政権になってからイスラエル寄りをさらに明確にしている米国にとって、許しがたい存在だといえる。

 イランが核保有国になったら大問題である。ポンぺオ国務長官がモスクワ訪問やドイツのメルケル首相との会談をキャンセルし、イラン問題の対応にシフトしたのも、イランの核保有問題が米国およびイスラエルの核心的利益に触れるからであろう。

 おそらく今年の夏、トランプ大統領はこの2つの案件に注力するはずで、安倍首相には、同盟のパートナーとして大きな役割を果たすことを期待しているだろう。

ハノイでの米朝首脳会談が決裂した後、こそこそとミサイル発射を再開した北朝鮮は、3回目の首脳会談について勝手に19年末と期限を決めたが、トランプ政権もその近くまで放置するだろう。

 そして、いまや「従北」の「準共産主義国家」になり果てた観もある韓国との同盟関係の見直しに踏み切るのも年末ごろのタイミングが予想される。

 トランプ政権は、ファーウェイへの禁輸措置に代表される対中包囲網に関しては、英国などの「ファイブアイズ(米国と機密情報を共有する5カ国)」の国々に対しても、猛烈なプレッシャーをかけているという。

 海軍駆逐艦による自衛隊機への危険なレーダー照射問題への対応で米国の信頼を裏切った韓国にも、圧力をかけていくのは当然だ。

 トランプ政権は、韓国に「ファーウェイとの取引をやめさせるのか、それとも米国と韓国との同盟関係を終わらせるのか」という選択肢を突き付けると思われる。

 米国にとって現在の韓国は、敵よりもはるかに恐ろしい「敵になるかもしれない味方」だといえる。対中国、対イランとの冷戦が終わってから、その処遇が決まることになるだろう。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。