病気になる家の特徴

梅雨に突入し、ジメジメした季節が続いている。そんな時期に発生する問題が、高温多湿によるカビ、菌、ウイルスの繁殖などによる病気だ。しかも外出先だけではなく、家の中にもリスクが蔓延。今回取材を進めてみると、夢の一戸建てやタワマンを手にしても、命を落とす危険性もあることが判明した。住むだけで健康を害する“ヤバイ家”の実態に迫る!

◆Case1 天井が高い

吹き抜けで開放感のある家に病気リスク!?

 天井を高くして、限られた床面積でも開放的な空間を実現。一見、吹き抜けは見栄えもオシャレで人気が高いが、実は落とし穴が潜んでいるのだ。住環境アドバイザーの上郡清政氏が問題点を解説する。

「冷たい空気は足元にとどまり、暖かい空気は上に向かいます。つまり吹き抜けのある家や天井が高い部屋は、極端な温度差が生まれやすいんです。それによって“ヒートショック”のリスクが高まるため、空気が滞留しがちな狭いトイレとの行き来は危険です」

 内科医の大森真帆氏も極端な温度差によるリスクを指摘する。

「寒暖差による血圧の急激な変化で血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害を引き起こす可能性があります」

 ヒートショックは冬のみならず。夏場は冷房を強く効かせるうえ、天井が高い居室空間は、より体を冷やしてしまいやすいのだ。

 さらに、同じく開放感が魅力の大きい窓にも病の危険性が潜んでいる。環境衛生コンサルタントの松本忠男氏は、コールドドラフト(冷たい窓辺から発生する下降冷気のこと)に注意を促す。

「窓が大きいと、室温が外気の影響を受けやすくなるため、エアコンをより強く効かせる必要が出てきます。それによって結露が多く発生し、カビの増殖を促します」

 上郡氏も、窓に注目する。

「大きい窓だけでなく、アルミサッシも断熱性が低いため同様です」

 思わぬリスクはすぐそこにある。

 30代記者の自宅はロフト付きで、吹き抜け同様に温度差が激しい。夏場のロフトはエアコンの冷気も届かず、常に熱気が充満している

★ここも注意! 危険リスト

□ 窓が大きく、空調を強く効かせている

□ 室温の差が大きい空間を移動する

□ 家についている窓がすべてアルミサッシ

◆Case2 リビングで足元が冷える

体の冷えは万病の元! 病は床下からやってくる

 天井だけでなく、床にも目を向けたい。もし、リビングで過ごしているときに、足元に冷えを感じるようなら、“家”に問題があるのかもしれない。上郡氏が分析する。

「家を建てるとき、床下の冷たい空気が室内にまで伝わらないようにするため、断熱材を用います。取り付け方は『基礎のコンクリート部分に断熱材を貼る“基礎断熱”』と『床板の下に断熱材を敷きこむ“床断熱”』の2通り。前者は外から床下内に空気が通り抜けにくいのに対し、日本家屋で多く採用されている後者は空気が通り抜けやすい構造です。これは、もともと木造建築の多い日本では白アリ対策が必要だったため。結果として、基礎断熱にくらべて断熱効果が弱く、床の熱が床下に奪われやすくなっています」

 エアコンとの組み合わせで想定以上に、それも慢性的に足元が冷やされることによって代謝が低下し、体は冷え性に。そしてそれだけでなく「床付近の温度が低いと高血圧や糖尿病で通院する割合が高くなる」という国交省の調査結果もある。冷えは万病の元なのだ。

 さらに立地によっては基礎の高さ自体が病に影響してくる。

「海や川沿い、埋め立て地といった湿地帯は高温多湿になりがちです。基礎を30cmほど高くして地面の湿気から床下を離して少しでも乾燥させたいですね」(上郡氏)

 家の基礎は健康の礎だ。

★ここも注意! 危険リスト

□ 木造など風通しがよすぎる家

□ 床面がフローリングで床暖房ナシ

□ 湿気の多い土地に家が立っている

◆Case3 耐震性と低コストをウリにしている

低コスト化の裏に潜む、“薬害”のリスク

 新建材が次々と開発されている建築業界。高耐久性や低コスト化の実現は、われわれに大きなメリットだ。だが、上郡氏は「低コストで優れた耐震性といったキャッチコピーに飛びつくのは危険」と語る。

「安価に耐震性を上げるためには合板を多く使用するのですが、接着剤にホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれます。使用量は法律で制限されているものの、“放散量”が5μg/㎡h以下なら使用可。基準値内でも多用すればトータルの放散量は増加。“病気の家”を建てるのと同じなわけです」

 ホルムアルデヒドは呼吸困難を引き起こす恐れがあるほか、発がん性もあるといわれており、軽視はできない。さらに、他の多くの有害物質が含まれる建材、塗料の使用も禁止されていない。

「フローリングや柱に使われる集成材は、接着剤に有害物質が含まれます。また、薬品漬けでもはや木の色ではなくなった構造材も。木の匂いがしない家具や家はグレーかクロだと思っていいです」

 法整備が追い付いていない東南アジア産のものもリスクは高い。

「有害な溶剤や薬品が使用されている可能性が高いですからね。パインやラワンなどの安価で柔らかい材木が代表的。あと、消臭剤・芳香剤の匂いは、やがて“香害”になるだろうともいわれています」

 目の痛み、不整脈、呼吸困難など、化学物質でさまざまな症状が。

「はやりの高気密住宅では空気が滞留しやすい分、床・柱・壁などの隙間から薬剤が室内に引き込まれやすい。適切な換気システムの構築が、病気から身を守る鍵です」

 家も人もクスリ漬けは危険だ。

★ここも注意! 危険リスト

□ 耐震性を満たしつつ安価を謳っている

□ 一見木材を使っているのに“木”の匂いが一切しない

□ パインやラワンなどの材木を使用している

【上郡清政氏】

住環境アドバイザー。住まいの権代表。1078軒の家を見てきた家づくりの達人。自身が住む家の情報も発信。著書に『「病気にならない家」6つのルール』(KKベストセラーズ)

【大森真帆氏】

総合内科専門医、大森真帆麻布十番クリニック院長。慢性疾患や季節性の疾患など、豊富に内科の診療経験を持つほか、透析医学や抗加齢医学にも精通する

【松本忠男氏】

環境衛生コンサルタント。日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事。医療・介護・清掃関連企業に掃除のノウハウを提供。著書に『図解 健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(小社)など

―病気になる家の特徴―