個人的に気になること

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なぜ「BMW」は叩かれるのか “自己チュードライバー”のアイコンになる日

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「お前はオレの邪魔をした。ぶっ殺してやるから出てこい」――。執拗(しつよう)にあおられて停車させられたうえ、ボコボコに殴られた男性によれば、宮崎文夫容疑者はこんな調子でキレていたらしい。

 日本のお盆の話題を独占した”あおり殴打事件”を起こした暴走カップルがようやく大阪市で逮捕された。ただ、”ガラケー女”こと喜本奈津子容疑者がテレビカメラの前で、「相手があおって来た! 悪いのは向こう!」と訴えるなど、いまだに「動機」などがよく分かっていない。

 なぜこれほど社会問題にもなっている中で「あおり運転」をしようと思ったのか。どういう思考回路でドライバーを殺そうと考えたのか。同様のトラブルを防ぐためにも、報道機関の皆さんはぜひとも真相を突き止めていただきたい。

 その一方で、企業のリスクを扱う人間としては、そういう社会的課題よりも気になることがある。それは今回の事件が「BMWのイメージ悪化」にどう影響を及ぼすのか、ということだ。

 ご存じのように、この事件が発生してからというもの、チンピラ的な蛇行運転や、急ブレーキで後続車を威圧するBMW X5のドラレコ映像がエンドレスで流されている。これがサブリミナル効果のようになって、BMWのブランドイメージを著しく低下させてしまうかもしれない。

 もっと具体的に言ってしまうと、「BMW乗り=自己チュードライバー」という図式ができ上がってしまう恐れがあるのだ。

●BMW=ネガイメージ

 「そんなの考えすぎだって」「悪いのはあくまでドライバーであって、車種はなんの罪もないだろ」。そんな声が聞こえてきそうだ。

 もちろん、おっしゃる通りである。筆者も身内や友人にもBMW乗りがいるが、宮崎容疑者のような迷惑運転はしない。マナーを心がけるごく平凡なドライバーである。また、宮崎容疑者がBMW X5に乗ったのはあくまで「代車」としてであって、それまでの愛車はBMWだけではなく、ポルシェカイエンやベンツにも乗っているのだ。

 だったら、今回の事件で「BMW乗り=自己チュードライバー」という図式などでき上がるわけがないではないかと思うだろう。が、実は既に一部でその図式はでき上がりつつあるのだ。

 事件前からTwitterでは「BMWって運転マナーの悪いドライバーが多い印象」という声が寄せられ、YouTubeでも、悪質な運転をするBMWの動画がアップされている。もちろん、こういうディスりは人気車種にはつきものではあるのだが、BMWが特筆すべきは、海の向こうのさまざまな調査で、ドライバーの自己チューぶりが浮かび上がっていることだ。

●海外でネガイメージ

 世界各国で展開する自動車メディア『Motor1.com』の「BMW Drivers Are The Worst On U.K. Roads」(2018年10月5日)という記事によれば、英国の保険比較サイト「GoCompare」が、2000人のユーザを対象に「英国にて最も迷惑な運転をするドライバーの車は何?」というアンケートを実施したところ、1位に輝いたのは「BMW」(24%)だったという。

 こういうBMWへのネガイメージは、今にはじまったことではない。例えば、6年前のウォール・ストリート・ジャーナルでは、「BMWのドライバーは本当に自分勝手=英米の調査」(2013年8月15日)という記事で、2つの興味深い調査を紹介している。

 まず1つ目は、カリフォルニア大学バークレー校の性格・社会調査研究所が行った調査で、歩行者が横断歩道の端に立って渡ろうとしたところ、どれほどのクルマが法令通りに一時停止をするのか調べたところ、「高級車は歩行者が渡ろうしている横断歩道の前で止まるクルマは少なかった」「BMWのドライバーが最悪だった」(同紙)という。

 2つ目はやはり英国で、ドライバー2837人を対象にしたドライバー同士のトラブルを調査したところ、「乱暴運転などが原因のトラブルを起こす最も多い車種はBMWで、車体の色はブルー」「ドライバーの年齢は35~50歳の男性」という結果が出た。

●「駆け抜ける喜び」というキャッチコピー

 というような話を紹介すると、宮崎容疑者ばりに筆者の顔面にストレートパンチを繰り出したい衝動にかられるBMWオーナーもたくさんいらっしゃるだろう。

 「こんなデタラメな調査を信じられるか! 大方、BMWをおとしめたいライバルメーカーのネガキャンだろ」なんて感じで、耳を塞いでしまう人も少なくないかもしれない。

 ただ、一方で、BMWのハンドルを握ることが、果たしてドライバーの心と体にどんな影響があるのかを考えていくと、そこまでのヨタ話ではない。というか、しっくりくるような話なのだ。

 「駆け抜ける喜び」というキャッチコピーからも分かるように、BMWの強みといえば、抜群の高速安定性と軽快なハンドリングである。要は、BMW乗りとは基本的に「走り」に魅了されている人たちなのだ。

 では、このような人たちがBMW X5のような高級SUVのハンドルを握るとどうなるかというと、より男らしく、より攻撃性が高くなる可能性がある。

 なぜそんなことが言えるのかというと、高級スポーツカーに乗ったドライバーの男性ホルモンが急激に上昇することが証明されているからだ。

 有名な研究なので、ご存じの方も多いと思うが、旧タイプのファミリーカー(トヨタ カムリ・ワゴン2000)で市内を1時間ほどドライブした場合と、最新のスポーツカー(ポルシェ911カレラ4Sカブリオレ2006)で同じようにドライブした場合では、後者のほうが男性ホルモンの一種、テストステロンの数値がグーンと上がる、ということがカナダの研究で分かっている。

 「ポルシェを乗り回すという派手な消費行動がきっかけになって社会的なステータスが変動、テストステロンが上昇する」(ヨミドクター 2013年7月16日)というのだ。

●騒動の行方に注目

 これは宮崎容疑者にもまんま当てはまるのではないか。BMW X5を乗り回して、歯向かってこなさそうな相手をゴリゴリにあおり倒す。オレ様は強い。オレ様の邪魔をする奴は許せねえ。そんな男っぽさ全開で大暴れしていく中で、アゲアゲになったテストステロンが「暴発」したのが、あの”あおり暴行”だったのではないか。

 そうとでも考えないと、まともな40男が、「お前はオレの邪魔をした。ぶっ殺してやるから出てこい」なんて、『北斗の拳』や『マッドマックス』に登場するザコキャラのようなセリフを吐くわけがないのである。

 もちろん、このテストステロンは、マウスの動物なんかに投与すると分かりやすく凶暴になるが、人間の凶暴性にどこまで影響を与えるのかということはまだ明らかになっていない。

 ただ、英米、そして日本で一部のBMWドライバーたちが「自分勝手」「迷惑」「乱暴」と指摘されているのは紛れもない事実である。高級スポーツカーならではの虚栄心、自尊心が「テストステロンの上昇」を引き起こしている可能性も否めないのではないか。

 高齢者の踏み間違い事故が多発した際に『なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日』という記事でも述べたように、大きな事故によって、世に多く走っているクルマのブランドイメージに影を落とすケースは少なくない。

 今回の騒動によって、日本でも英国や米国の「BMW乗り=自己チュードライバー」というネガイメージが広まってしまうのか、注目したい。

(窪田順生)