FacebookとInstagramのアカウントは、あなたが知らないうちに「連携」されている

フェイスブック傘下のSNSであるInstagramFacebook。それらの両方にアカウントを保有していると、「リンク済みのアカウント」として登録していなくても、システムの内部的には連携されてしまうことが明らかになった。つまり、FacebookユーザーがInstagramに「裏アカ」をつくることは実質的に不可能なのだ。いったい、なぜこうした事態が起きるのか。

Instagramの設定オプションには、「リンク済みのアカウント」という項目が設けられている。その項目を開くと表示されるのは、お察しのとおり……リンク済みのアカウントだ。ユーザーはこのページで、TwitterやTumblr、また言うまでもなく同じグループ内のFacebookといったアカウントを、Instagramのアカウントと連携させることができる。

一見すると、この設定はかなり単純明快だろう。リンクされていないアプリのアイコンはグレーで、リンク済みだとカラーで表示される。だがFacebookに関して言えば、この機能がユーザーの誤解を招く恐れもある。

切り離せないふたつのアカウント

Instagramの「リンク済みのアカウント」メニューに表示されるほかのアプリと同様に、Facebookアカウントにリンクするオプションの初期設定も表向きは「オフ」になっている。グレーで表示されたFacebookのロゴをユーザーがタップし、サインインすれば、Instagram上に「リンク済み」として表示されるようになる。

また、このふたつのアカウントがリンク済みになると、Instagram上の設定画面に「アカウントのリンクを解除」というオプションが表示される。そして、そのオプションをクリックすると、「リンクを解除すると、Instagramアカウントがロックされた場合にアクセスを再開するのが難しくなります」という警告メッセージが現れる。

常識的に考えれば、FacebookアカウントとInstagramプロフィールのリンクを解除する操作を実行すると、FacebookアカウントとInstagramプロフィールのリンクは解除されるはずだ。ところが、Facebookにまつわるその他もろもろと同様に、ここでは必ずしも常識が当てはまらない。

フェイスブックの広報担当者が『WIRED』US版に語ったところによると、「リンクを解除」のボタンをクリックしても、実際にはFacebookとInstagramのアカウント間の連携が解除されるわけではないというのだ。というのも、そのふたつのアカウントを切り離すこと自体が不可能だからだ。

たとえユーザーが自分のFacebookとInstagramのプロフィールを明示的にリンクしたことがなかったとしても、そのふたつは本質的につながり合っており、リンクの解除を何度試みたところで、その状態が変わることはない。Instagramに「裏アカ」などつくろうとしても無駄だということだ。

「裏アカ」をつくっても特定される

なぜこのような事態が起きるのだろうか。それはフェイスブックが多様なサーヴィスを通じて収集している大量のデータをもってすれば、同じユーザーがもつ複数のアカウントを的確に特定して、それらを互いにリンクさせることが十分にできてしまうからだ。

例えば、使い捨て用のWhatsAppのプロフィールや、ストーキング用のInstagramアカウント、おふざけ用のFacebookプロフィールなどをつくるときに、それぞれ異なる名前やメールアドレス、デヴァイスを用いたとしても、フェイスブックなら多くの場合、それらのアカウントの真の持ち主を特定し、さらに同社傘下のほかのアプリにアカウントがあるかどうかまで探り出すことができてしまう。

「FacebookとInstagramは、インフラやシステム、テクノロジーを共有しています。このためさまざまなデータをもとに、サーヴィスをまたいでユーザーの行動に関する情報を結びつけることができるのです」と、フェイスブックの広報担当者は『WIRED』US版に説明する。「アプリ内でアカウント同士のリンクや、リンク解除の操作をしても、その点に影響が及ぶことはありません」

すべては「パーソナライズされた体験」のために

この事実は、フェイスブックがInstagramやWhatsAppなど、これまで独立していたアプリの統合を進めるなかで明らかにされた。メッセージアプリの「Facebook Messenger」とInstagram、WhatsAppについては、ひとつのメガチャットアプリへの一体化が進められている(それだけでも十分に難しい問題だ)。また、InstagramとWhatsAppは、それぞれ「Instagram from Facebook」「WhatsApp from Facebook」へと名称変更されようとしている。

だが、これらのアプリの結びつきがより密接になりつつあるとはいえ、フェイスブックの経営陣はアプリすべてを対等にみなしているわけではない。Instagram上の「リンク済みのアカウント」機能が、ユーザー数の大幅な増加が続いているInstagramから、増加の低調なFacebookにトラフィックを誘導するように設計されていることは明白だ。一方で同社は昨年、FacebookからInstagramへのトラフィック誘導を中止するという決定を発表し、議論を呼んだ。

フェイスブックの広報担当者によると、同社が自ら収集したユーザーのデータをもとに内部的にアカウントをリンクさせるようになったのは、12年にInstagramを買収してまもなくのことだった。ユーザーのアクティヴィティに関する情報を収集し、つなぎ合わせる目的は、複数のプラットフォーム上でのユーザーのアクティヴィティを融合することによって、より正確にターゲットを絞り込んだ広告やアプリ内レコメンド機能といった「パーソナライズされた体験」を、同社傘下のあらゆるアプリでユーザーに提供できるようにするためだという。

内部的なリンクは「機能のひとつ」

それぞれのアカウントを個別に維持できるものと考えていたユーザーは、この「パーソナライズされた体験」に不満を抱くはずだ。

フェイスブック広報担当者の説明によると、同社がこのデータを利用することで、Instagram上でフォローしている相手や、Messenger上のチャット仲間が所属するFacebookグループへの参加をユーザーに勧めることも可能になる。だがこれは、メインのFacebookプロフィールとはリンクせず、切り離してInstagramアカウントを利用したいと考えているユーザーにプライヴァシー面での不安をもたらすことになるだろう。

こういったアカウント間のつながりは、裏でさらなる課題を突きつける。Instagramに「裏アカ」をつくろうとしたユーザーのなかには、新たなアカウントがメインのFacebookプロフィールに勝手にリンクされてしまい、そのせいで秘密にするはずだった「裏アカ」をフォローするように勧める通知を、友人のみならず、さして親しくもない知人や遠くの親戚までが受け取ることになったという不満の声もある。

また、『WIRED』US版が取材した6人のInstagramユーザーが、自分のFacebookとInstagramのアカウントをリンクした記憶がないか、明確にリンクを解除したにもかかわらず、Instagramアプリ内に「Facebookを開く」という項目をクリックしないと消すことができない通知が表示されていると指摘している。これらのユーザーのFacebookとInstagramのアカウントは明示的にリンクしているわけではないのに、その項目をクリックすると、Facebookアプリか、すでにログインしているFacebookの携帯版ウェブページに飛ぶというのだ。

この問題についてフェイスブックの広報担当者に問い合わせたところ、最初は「バグによるもの」という回答が返ってきた。ところが、のちにこれは「機能のひとつ」だという説明に変わった。

InstagramユーザーがFacebookのアカウントをもっている限り、自分のFacebookプロフィールとリンクさせるという選択をしたか否かにかかわらず、フェイスブックは内部的にそのふたつのアカウントをリンクさせる。そして、Instagram内の「Facebookを開く」をタップすると、関連づけられたアカウントに飛ぶというのだ。「Facebookが存在することをユーザーが理解しやすくする方法のひとつです」と広報担当者は説明する。

導入が始まった「Facebookを開く」機能

Instagram上で、この「Facebookを開く」をクリックしなければ消すことができない通知を目にする可能性は高い。だが、ユーザーがInstagramにFacebookアカウントをリンクする操作をしていない場合、そこに表示されるFacebook上の通知数は、ほぼでたらめだといえる。

「リンク済みでないアカウントについては、Facebook上の実際の通知数が正しく表示されないこともあります」と広報担当者は説明する。そして「Facebookを開く」をタップすると、「Facebookアプリをもっていればアプリが開き、そうでなければ単にFacebookのウェブサイトが開きます」と言う。

フェイスブックの広報担当者によると、同社はこの「Facebookを開く」機能の試験を2018年6月から開始し、8月に一部のユーザー向けに導入したという。広報担当者は現時点において、「Facebookを開く」の機能がすべてのユーザーの初期設定で有効となっているのかについても、この機能が現在もすべてのユーザー向けに展開されているか否かについても、把握していなかった。

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Posted by takahashi