「丸亀製麺」が“香川県丸亀市と関係ナシ”と炎上。丸亀市を直撃したら驚きの事実が

9月14日、「麺通団公式ウェブサイト」に掲載された「団長日記」の一部をスクショしたツイートが話題となり、「丸亀製麺」が炎上した。それは、「讃岐釜揚げうどんチェーン」として多くの人に認識されている丸亀製麺は、実は「丸亀市」や「香川県」とは全く関係がなく、讃岐うどんブランドを利用している、他県への誤解が生まれるのではないか? というものだった。

 そこで今回は、「丸亀市」側はどう感じているのか丸亀市を直撃してみた。

◆「丸亀製麺」は、「丸亀市」や「香川県」の会社ではない事実

 SNSで話題となった内容は、「田舎が香川だと話す丸亀製麺の粟田社長が、小さな製麺所にお茶碗を持った客が並び、釜からもらったうどんにしょうゆだけをつけて食べている様子を見たことから思いついたのが丸亀製麺、と話しているがそれは嘘ではないか」「丸亀製麺は香川の会社でなく、香川における実績がないのに『讃岐うどん』を名乗り、『讃岐うどんチェーン』を名乗ること、香川に『丸亀製麺所』という会社があるのに『丸亀製麺』という名前を付けたことはいかがなものか」と苦言を呈するものだった。

参考:麺通団公式サイト

 この内容に対し、香川出身者のみならず、そうでない人までもが持論を書きこみ大炎上、「いいね」は4万件、「リツイート」は3万件にも及び、「丸亀製麺」は一時Twitterのトレンドにも入った。

 事実、「丸亀製麺」を運営する株式会社トリドールホールディングスは、香川県丸亀市発祥ではなく、本社は東京都渋谷区にある。「丸亀製麺」1号店「丸亀製麺加古川店」も兵庫県加古川市にオープンしている。

 ネット上での声は、主に以下のような内容だ。

「(自分は香川県出身者だが)美味しいうどんが食べられるのであればどちらでも良い」

「丸亀製麺のうどんを本場の讃岐うどんだと思っている人はいないのでは」

「丸亀市出身だが、自己紹介する度に『丸亀製麺の!』と言われ、関係ないと説明しています」

「香川県民からすると味は全然ちがう。丸亀製麺は舐めすぎている。本場の味を食べに来てほしい」

 賛否両論ではあるものの、香川県出身者の多くは「認めない(丸亀製麺は本場の讃岐うどんではない)」と感じている傾向が強いように思えた。

 そこまで酷評されている丸亀製麺だが、店名に「丸亀」とついているものの、それ以外には何か大々的にアピールしていただろうか? と疑問に思い、公式ホームページを見ると、「讃岐釜揚げうどん」という文字が店名の前に踊り、「丸亀製麺のこだわり」というコーナーでは「麺のおいしさを引き出す“だし”は、讃岐うどんの命と言えるほど」と、「讃岐うどん」として、だしにこだわっているという記載があるにとどまっている。

 香川県発祥ではないにも関わらず、「讃岐うどん」という名称を使用することについては、全国生麺類公正取引協議会の生めん類の表示に関する公正競争規約で定められており、「名産」「特産」「本場」「名物」などを表示する場合に適用される。だが、そうではない場合は、他県で作られた「讃岐うどん」でも問題はないらしい。とはいえ、ネット上では、次のような“感情論”の意見が多く見られた。

・創業者が香川出身者ではない

・本場の讃岐うどんとは全く味が違うのに同じものだと思われたくない

・無関係であるのに「丸亀」を名乗っている

 創業者がその土地の出身者である必要は必ずしもないと思うが、「出身者ではないのに価値を理解せずにネームバリューだけを利用された」と感じた人が多いのだろう。

◆丸亀市を直撃してみると…驚きの事実が判明

 実は似たような事例として、

・「大阪名物伝統の味」を謳う「串カツ田中」は東京発祥であり、本社所在地も東京都品川区

・「名古屋めし」と思われている味噌カツは名古屋ではなく三重発祥

 など多数ある。決して丸亀製麺だけが特殊な事例ではない。しかし、これだけ物議をかもした今回の騒動について丸亀市はどう感じているのだろうか。丸亀市に「最近ネットで丸亀製麺が丸亀市の発祥ではないことが話題になっていますが、どのように思われますか?」と直撃してみると……。

 広報担当者がこれまで公には明かされてこなかった“関係性”を話す。

「丸亀製麺様が丸亀発祥ではないことは皆さまご存じかと思います。丸亀製麺様と丸亀市はつながりが直接あるわけではありませんが、協力関係にございます。

 たとえば、協力関係の一環として、全国の丸亀製麺の店舗に丸亀市のイベントのポスターを貼って頂いていますし、丸亀市の公用車には丸亀製麺様の広告を出して頂き、広告料も頂いております。

 昨年、日本一の高さを誇る丸亀城の石垣が、西日本豪雨の影響で崩落した際には、粟田社長個人から1000万円のご寄付を頂きました。さらに、全国の丸亀製麺の店舗に石垣復帰のポスターや募金箱も設置頂きました。お子様向けのうどん作り食育チャリティイベントも開催頂き、その収益はすべて丸亀市に寄付をして頂きました。

 昨年12月に丸亀製麺の粟田社長が丸亀市で講演をされ、その際にお話を聞かせて頂いたのですがお父様が丸亀のご出身ではないものの、隣の市のご出身であるということ、讃岐うどんの店を出す時に『丸亀』という名前がすごく好きだったということをおっしゃっていました。

 丸亀製麺様の新入社員の研修には必ず丸亀市内のうどん店をめぐり研修をされています。また、丸亀製麺様は香川には店舗を極力出さない方針だとおっしゃっていて、丸亀市にも絶対に出さないとお話されていますが、それは我々に対して遠慮してのことだと言います。このように、丸亀製麺様とはとても良好な関係であると考えております」

 丸亀製麺が香川県に2店舗しか出店していないのは「香川の人に味が認められなかった」からではなかったのだ。丸亀製麺、及び粟田社長は丸亀市に対しきちんと筋を通し配慮をするばかりか、協力関係を構築していたという。

 発祥がどうあれ、丸亀製麺が丸亀市や讃岐うどんの知名度に貢献してきたことは事実である。決して敵対関係にあるわけではなかったのだ。今後、事態はどのような方向にいくのか見守りたい。<取材・文・撮影/松本果歩>

【松本果歩】

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA