「江頭2:50」が地上波テレビから消えた! アンガールズ田中では代わりはつとまらない

“エガちゃん”こと江頭2:50(54)を、最近、テレビで見かけない。準レギュラー番組だった「『ぷっ』すま」(テレビ朝日)と「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ)が、いずれも昨年3月31日を以て終了したことが大きい。年に数回は出ていた「アメトーーク!」(テレ朝)も、昨年12月30日の年末SPに出たのが最後だ。とはいえ、ネット配信の番組は続いているから、体調不良と言うことでもなさそうだ。

 ひょっとして、番組からお呼びがかからないということ?

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 キワモノ芸人といわれて久しいエガちゃん。黒のスパッツに上半身は裸、寂しくなった頭髪を振り乱しながら、スタジオでドッテンバッタンと大暴れし、揚げ句の果てに全裸となって客席にダイブ――。

「日経エンタテインメント!」の“嫌いな芸人”ランキングでは、2002年から10年までは不動の9連覇。14年に1位に返り咲き、翌15年も1位に輝いている。

 民放プロデューサーが言う。

「ある意味、大したものです。芸人としては、嫌われるのだって注目されている証しですからね。ただ、ここ数年は“嫌いな芸人”の順位が落ちてきています」

 ちなみに今年の“嫌いな芸人”ランキングは、1位:明石家さんま、2位:石橋貴明(とんねるず)、3位:アキラ100%とクロちゃん(安田大サーカス)、そしてエガちゃんは5位に甘んじているのだ。さんまが1位というのは、ある意味事件だが、同時に“好きな芸人”でも2位に入っている。

「今年、エガちゃんは、まだ地上波に出ていないのではないでしょうか。それでいて5位というのは、立派ですね。やはり露出が少なくなると、存在自体忘れられてしまいますからね」(同)

 なぜ、エガちゃんはテレビに呼ばれなくなったのか。

「やはり彼はいまだに、“絶滅危惧種の猛獣”と考えられているんですよ。ファンの間では“実は真面目でいい人”という印象を持つ人も増えているようですが、収録のことを考えると、それとこれとでは別ですからね。コンプライアンスが厳しくなった今、エガちゃんを面白がる演出家がいなくなっているということでしょう」(同)

その芸風

 エガちゃんの伝説を挙げればキリがないが、いくつか紹介すると――、

●トルコ全裸事件
 1997年2月15日、テレビ東京の「ザ・道場破り!」の企画として、トルコで行われたオイル・レスリングの試合の前座に、エガちゃんが登場。白いふんどし一丁でリングに上がり、“座禅縄跳び”などを披露すると、およそ3000人の観客は大喜び。これで調子に乗ったエガちゃんは、やおらふんどしを脱ぎ捨てるや、「3号機発射!」と叫びながら、性器を露出。肛門にでんでん太鼓を刺して逆立ちをすると、会場から大きなブーイングが。トルコはイスラム圏であり、人前で全裸になることは禁じられている。会場は大混乱となり、試合は中止に。エガちゃんはトルコ警察に逮捕された。結局、簡易裁判で罰金約75円を支払い、帰国の途に就いたのだが、この映像が同月19日には米国の通信社により世界に配信された。日本でも大問題となり、制作会社はむろん、テレ東の社長も謝罪。産経新聞の読者投稿欄では、彼の芸風を理解してほしいと擁護する声や、日本の恥とする声など、賛否両論が巻き起こった。

 エガちゃんはこの問題で活動を自粛することになったが、5カ月後には日比谷公会堂で行われたお笑いライブで復帰する。活動再開前の会見で、こうまくし立てた。

「トルコの事件で仕事を失い、一度はどん底まで落ちたオレが、やっとこんな大きなホールでライブができるようになった。これぞ、まさしくメークミラクルですよ。長嶋監督よ、オレに学べ! オレを代走に使え!」

 転んでもただでは起きない。さらに10月には、世界配信のおかげか、アメリカ映画「プレッシャー/壊れた男」のイメージキャラクターとして宣伝担当に選ばれる。この時には、こう宣った。

「勝新さんが死んだ今、“壊れた男”といえば、オレしかいない。映画の名を借りて自分の宣伝をしたい!」

 その後、01年7月の「笑っていいとも!」(フジテレビ)にエガちゃんは乱入。出演者の橋田壽賀子が、たまたまトルコに行った時の話を始めると、トルコの話題を遮るかのように、橋田先生の口を唇でふさいだのである。以来、エガちゃんは13年間、「いいとも」を出入り禁止となった。

 ちなみに、この「ザ・道場破り!」のプロデューサーが、菅田将暉・主演の映画「あゝ、荒野」(2017年公開)の岸善幸監督である。昨年のブルーリボン賞で作品賞を受賞した監督は、こう挨拶している。

「実は20年前、スポーツ紙の皆さんにはメッタメタに叩かれたんです。(中略)その皆さんに誉められて、それが何よりの喜びです」

●バイアグラ事件
 トルコ事件の翌98年8月12日未明、東京・中野のキャバクラで、おねえちゃんのウケを狙ったか、バイアグラ5錠をブランデーでイッキ飲み。当然気分が悪くなり、店外に出たが、路上でダウンし、店の関係者が通報、救急車で搬送された。この時、バイアグラは未認可だった。ちなみに店の名は「未完成」……。

 5日後には新宿コマ劇場のトークライブで無事復帰したエガちゃん。事件の経緯と共に入院中のエピソードとして、

「入院先の看護婦を見てイメクラに来たかと思った。上半身気持ち悪い、下半身気持ちいい状態」

●北京五輪レスリング中継で最高視聴率
 08年8月16日、“霊長類最強女子”吉田沙保里が金メダルを獲得した、北京五輪のレスリング女子フリースタイル55キロ級の中継(NHK)で、吉田が表彰式を終えて場内を歩いている際に、スタンド最前列で金色の全身タイツに身を包んだエガちゃんの上半身が大写しに。Twitterに投稿された〈エガちゃんが客席にいる〉の書き込みが拡散され、瞬間最高視聴率32・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得した。

 また4年後のロンドン五輪でも、エガちゃんは吉田の決勝戦で、彼女がCMで演じた“安心戦隊ALSOK”のコスチューム(金色)を自分で作り、それを着て応援していた。

猛獣使いが生まれない

 前出の民放プロデューサーは言う。

「ちょうどこの頃、エガちゃんのイメージがぐらつき始めました。11年の東日本大震災で、彼は人知れず、2トン車を運転して救援物資を運んだ。自身は大人しく帰ってくるつもりが、当然SNSなどで目撃情報が広まり、“実はいい人”というイメージが広まり始めた。11年の“嫌いな芸人”ランキングで2位に陥落し、V10が果たせなかったのは、この影響だと言われています。彼はネット番組で、『俺を潰す気か! いい人キャラにするな!』と怒っていました」

 その焦りが生んだのか。13年5月25日、タワーレコード新宿店で行われたネット番組「江頭2:50のピーピーピーするぞ」のDVD発売イベントで、全裸事件を起こす。そのまま客席にダイブしたが、なぜか下半身丸出しで観客に胴上げされるという事態に。観客はファンがほとんどだったとはいえ、ライブでもないのに、予想外の展開だった。

 だが、これを苦々しく思ったのが警視庁だ。公然猥褻の疑いがあるとしてエガちゃんを事情聴取。書類送検され、略式起訴で罰金20万円が下された。

 エガちゃんがテレビに復帰したのは、5カ月後の「めちゃイケ」だった。

「おかげで彼は、14年の“嫌いな芸人”で1位に返り咲いた。しかし、テレビ業界的には、本来、起訴までされた芸人を使うのは勇気がいりますよ。ですが、『めちゃイケ』のプロデューサー(総監督)は、猛獣使いとして名高い片岡飛鳥さんですからね。その片岡さんを師と仰ぐのが、『アメトーーク!』の加地倫三プロデューサーです」(同)

 エガちゃんを使うプロデューサーには系譜があるのか。

「元祖はテリー伊藤さんでしょうね。エガちゃんのような芸人は、ひな壇芸人でもなく、『お笑いウルトラクイズ』(日本テレビ)や“あさヤン”こと『浅草橋ヤング洋品店』(テレ東)などで、体を張って笑いを取る芸風です。無茶を笑いに変える芸人さんです。そのハプニングを笑いに変えたりフォローするのが、テレビの演出家であり共演者です。しかし、コンプライアンスばかりが厳しくなった今、いきなり全裸になったりする芸人さんを使いこなせるスタッフは、なかなかいません。だからこそ、エガちゃんの代わりというわけではないのでしょうが、アンガールズ田中卓志が、キモキャラとして多用されているのでしょう。彼も“嫌いな芸人”として、かつてはランクインしていましたが、実は頭もいいし、コメンテーター的な役割もできますからね。業界での人気も高いですよ」

 そりゃあエガちゃんは、コメンテーターはやらないだろうけど、アンガールズではエガちゃんの代わりは務まらない。

 17年に、NHKの放送文化賞を受賞したタモリが、NHKに初めてレギュラー出演した「ばらえてい テレビファソラシド」についてこう語っていた。

「当時、私は今で言うと、江頭2:50と同じような扱いでして。あれは何するか分からないから、番組に呼ぶなという風潮の中、(NHKに)レギュラーとして初めて出まして。当時の思い出が一番印象に残っています」

 キワモノ芸人から大物になった芸人は多いが、ひたすらキワモノを究めようとする唯一無二の芸人がエガちゃんかもしれない。彼が受難の今、バラエティに熱心で、笑いに一家言ありそうなNHKが使ったら、どうだろうか。

週刊新潮WEB取材班