整形外科医が「肩の痛み」の疑問を解決 肩こりに悩む人の共通点と対策は?

「肩がこる人とこらない人、何が違う?」「整形外科では肩こりも診てくれる?」肩こりや肩の痛みに悩む人は多く、その解消法にはさまざまな情報が溢れています。週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』では、病院で医師に直接聞きづらい疑問を挙げ、専門医に聞きました。同愛記念病院整形外科・副院長の中川照彦医師がQ&A形式で回答します。

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Q:肩がこる人とこらない人、何が違う?
A:姿勢のよい人、筋肉をよく動かす人は肩がこりません

 肩こりと姿勢には関連があります。姿勢が悪い人や猫背の人は、肩周囲の筋肉疲労が起こりやすく、慢性的に肩こりを訴えることがあります。ほかにも、首の骨の自然な湾曲がなくなってまっすぐになっているストレートネックの人、体型的になで肩の人、首が長い人には、肩こりが起こりやすい傾向があります。また、太っている人、あまり動かないタイプの人にも肩こりがよく起こります。

 一般的に、肩こりは東洋人に多く、欧米人に少ないともいわれています。筋肉が多い人、ストレスをあまり感じない人は、肩こりが起こりにくいようです。

 肩の筋肉は、上にある重い頭をつねに支えています。長時間にわたってじっと座ったまま仕事をしたり、前かがみの姿勢でパソコンや携帯をやり続けたりして肩こりになることは、誰もが経験します。とくに肩から背中に広がる大きな筋肉である僧帽筋には負担がかかりやすく、肩こりがもっとも起こりやすい部分です。

 肩こりの症状は、肩の張りや硬さ、重苦しさなど、人によりさまざまです。ですがおもな原因は、筋肉が硬く収縮して血行が悪くなることによります。また、疲労物質がたまったり、神経が圧迫されたりすることで、強い痛みが起こる場合もあります。ひどくなると、肩の筋肉にしこりを触れることもあります。

 肩こりにならないようにするため、1時間に1回は肩を動かしましょう。腕を回す、肩甲骨を後ろで寄せ合う、手を前に突き出すなどの運動をすると効果的です。

Q:整形外科では肩こりも診てくれる?
A:マッサージしても治らないとき、強い痛みやしびれがあれば受診を

 通常の肩こりは、ごくありふれた症状であるため、深刻にとらえて病院にかかる人は少ないでしょう。運動やマッサージをしたり、湿布を貼ったりすればたいてい改善します。通常の肩こりは、筋肉が硬くなったり、心理的なストレスが原因で起こっているため、その症状に早めに気づいて対処することが大切です。

 しかし、痛みが長引いたり、さらに悪化したり、手にしびれがあったりする場合には、ためらわずに整形外科で診察を受けましょう。例えば、若い女性に多く見られる胸郭出口症候群は、鎖骨周辺で神経や血管が圧迫されることが原因で、肩こりや腕の痛み・しびれが起こります。きちんと診断をしてもらい、適切なリハビリをすることで症状が改善します。

 また、そのほかにも内科的な病気で肩の痛みがみられることもあり、油断は禁物。例えば、狭心症で肩甲骨のあたりに痛みが現れたり、肺がんで上部に病巣があるときに神経が圧迫されて、肩の痛みを訴えたりする場合もあります。重大な病気が隠れている可能性もあるため、たかが「肩こり」と思って放置せず、早めに受診して治療を受けましょう。

Q:肩こりが目の疲れや頭痛の原因になる?
A:肩の筋肉の緊張から頭痛が起こります

 パソコン作業などで長時間座ったまま同じ姿勢で作業を続けていると、目が疲れるとともに、頸部、肩の筋肉の緊張が高まり、肩がこってきます。肩こりは、筋肉の緊張と、血行不良によって起こります。とくに首の後ろと横の筋肉に、こわばりがつよく現れます。また肩こりが起こると同時に、頭痛も起こりやすくなります。

 頭痛のタイプの一つに、「筋緊張性頭痛」がありますが、肩こりが原因で起こるケースがこれに該当します。慢性的なものでは、肩こりに加えて精神的なストレスなどが関与していることもあります。

(文/坂井由美)

【監修】
同愛記念病院
整形外科・副院長 中川照彦医師