12月の道交法改正「バイクの免許」何がどう変わる?

 以前、ハーレーやBMWも、電動ならば大型でなく中免(普通自動二輪免許)で乗れてしまう「日本の二輪免許制度の変な謎」を紹介しました。

 簡単におさらいしましょう。バイクの免許は、排気量400ccまでならば「普通二輪免許」(かつての中免/自動二輪免許中型限定)、400ccを超えるならば「大型二輪免許」が必要といったように「エンジンの排気量」で区分されます。

 でも排気量という概念のない電動バイクは、車両および免許区分けに法が追い付いていない状況にありました。電動バイクならば、軽二輪/250cc以上のバイクを運転できる免許(つまり、普通二輪免許)があれば、例え大型でも、ハイパワーでも、全てに乗れてしまう状況だったのです。

 しかし、というか、これでは危険なので当然なのですが……このいびつな状況はなくなります。免許区分の根拠となっている道路交通法施行規則の一部が2019年12月1日に改正され、「モーター定格出力20kW超の電動バイク」は大型自動二輪車に区分されることになります。

 電動バイクの場合は、モーターの定格出力が0.6kWまでならば原付一種区分の車両に乗れる「原動機付自転車免許」、0.6kW~1kWまでならば原付二種区分の車両に乗れる「普通二輪免許(小型限定)」、1kW超で普通自動二輪車(軽二輪車)区分の車両に乗れる「普通二輪免許」でしたが、今回の改正によって、その上に新たに「20kW超」の区分ができます。1kW~20kWまでの電動バイクは普通二輪免許、そして20kWを超える電動バイクを運転するには「大型二輪免許」が必要になります。

 ハーレー・ダビッドソン初の電動バイク「LiveWire」の出力は約77kW(105馬力)とされるので、20kWは軽く超えるでしょう。これに乗るには大型二輪免許が必要です。もっとも大型バイクにおいて、とくにスポーツ系電動バイクの速さ、特に発進加速の鋭さを考えるだけでも「さすがに運転技術や適正も備えていなければ危険である」ので、今回の改正は全くもって正しいといえます。

 なお「既に業務で使っている人」は、1年の猶予措置も設けます。改正施行日前に普通自動二輪免許を受けており、かつ、大型電動二輪車の運転に従事している者については「施行日から起算して1年を経過する日までの間、引き続き運転することができる」「大型電動自動二輪車で運転免許試験を受けられることとする」とあります。「従事している者」とあるので、所持・所有ではなく「業務で使っていること」が条件になると推測しますが、どのように証明するのかは不明です。

●ただ……「車検」の有無は変わらない!?

 ちなみに、2019年12月時点で大型二輪扱いになるのはあくまで道路交通法における免許制度の上での話。「車検」はどうなるのか、ここはいびつなままです。

 車両の技術基準について規定する「道路運送車両法」は2019年12月1日時点では変わりません。ナンバープレート(車両)的には、20kW超の電動バイクであっても250ccクラスのバイクと同じ「軽二輪」区分で、緑の枠がない白なナンバープレートが交付されます。

 つまり、2019年12月1日から20kW超の電動バイクは、「運転するには大型二輪免許が必要」だけれど、「車検は不要」ということになります。

●「AT限定大型二輪免許」は650ccまでの排気量制限がなくなる

 今回のバイクの免許関連の法改正は「ま、そうですよね」と多くのライダーは思うでしょう。続いて「AT限定大型二輪免許」を持っている人には朗報があります。

 AT限定の大型二輪免許には「650ccまで」という制限がありました。大型二輪免許であってもナナハンやリッタークラスの車両には乗れない免許でした。今回の法改正で「この排気量制限がなくなります」。乗れる車種が一気に増えることでしょう。

 これまでなぜ650ccまでだったのでしょうか。AT限定大型二輪免許が登場した2005年当時は、まだオートマの二輪といえばスクーターぐらいしかない時代でした。当時、最大排気量クラスのビッグスクーターはスズキの「スカイウェイブ650」で、排気量は650ccでした。

 しかし、導入から14年が経った2019年現在、二輪車にもDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が普及し、大排気量のスポーツバイクでもクラッチ操作がない(イコール「AT扱い」にできる)車種が増えています。ホンダの「NC750」シリーズや「アフリカツイン」などが相当します。

 そして電動バイクの話に戻ると、電動バイクは電動モーターの出力特性から変速操作のない車種が多く、マニュアル変速モード付きの車種であってもクラッチレスの場合がほとんどでしょう。免許区分に当てはめると(詳細は車種ごとに確認すべきですが)「AT限定大型二輪免許」で運転できると考えます。

 これまでAT限定大型二輪免許は、「650ccまでのビッグスクーター用っぽいちょっと中途半端な免許」でしたが、電動バイクの普及によって再注目されることになるかもしれません。