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色々なものが雑多にファイリングされています。

飲食店「無断キャンセル」最新防衛策がすごいことになっていた

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「新橋のある居酒屋では、1人6000円100名の予約が無断キャンセルされました」

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 こう語るのは、飲食店の予約受付対応などの代行サービスを行うイデア・レコードの鈴木豪取締役だ。鈴木取締役はこう続ける。

 「100名に対応しようとバイトを増やすなど特別なオペレーションを組み、特別メニューのために高価な食材も用意していたのに…誰も現れなかったようです」

 飲食店に予約を入れていたにもかかわらず、その日時になっても店に連絡がなく、または店の連絡を無視して来店しない「無断キャンセル(No Show)」が後を絶たない。経済産業省が昨年11月に発表したレポートによると、無断キャンセルが飲食業界に与える損害は年間で約2000億円になるという。

 「無断キャンセルは3000円~5000円程度の店で多く、予約全体の5%程度」(鈴木取締役)に上っており、忘年会シーズンで書き入れ時であるはずの飲食店は戦々恐々としているのが実態だ。

● 無断キャンセルが減らない3つの理由 忘年会の「とりあえず予約」が大問題に

 そもそも、なぜ無断キャンセルは起こるのだろうか。考えられるのが、大きく分けて以下の3つの理由だ。

 1つ目が、無断キャンセルをあえてする悪質なケース。最近では、ぐるなびなどの予約サイトを利用して予約をすると、来店後にポイントをもらえるサービスがある。

 もちろん本来は来店しなければポイントはもらえない。しかし、店側が多忙などを理由に予約サイトの管理画面上で「キャンセル」の処理をし忘れてしまうことがある。すると、来店予定日時が過ぎた後に来店ポイントだけが自動的に処理されるため、悪質なポイントゲッターはそれを狙って「カラ予約」しているようだ。

 「『明日』『40人』など、直前で大人数の予約が入った場合は狙われている可能性があるので要注意です」(鈴木取締役)

 といっても悪質なケースは少数派。大部分を占めるのが、2つ目の「予約したことを忘れている」ケースだ。

 飲食店の予約・顧客管理システムの開発・提供を行うTableCheckが行った『飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査(複数回答可)』によると、無断キャンセルをした理由のトップは「とりあえず場所を確保するために予約」(34.1%)。その後に「人気店なのでとりあえず予約」32.5%、「予約したことをうっかり忘れた」30.2%が続く。

 忘年会シーズンになると、幹事の若手社員などが大人数で入れる飲食店をとりあえず何軒か予約して、その後に上司などに日程確認をして店を決めることがある。そしてその後、「とりあえず予約」をした店舗にキャンセルしないままのケースが意外と多いようだ。これは1次会の予約だけにとどまらない。

 「2次会で利用しようと『今から20名行きます』と席だけ予約して、結局来ないケースもよくあります。何人かで一度に店を押さえようとして予約が取れても、酔っているせいかそのまま行かない店へのキャンセルを失念されているようです」(鈴木取締役)

 3つ目が普及の進むネット予約の「勘違い」による無断キャンセルだ。食べログなどの予約サイト上から予約する場合、実は「即予約」と「リクエスト予約」の2パターンがある。前者では即時予約が成立する一方、リクエスト予約の場合は後で飲食店からメールや電話などで連絡が来てから予約が成立する。しかし、そのメールなどをきちんと読まずに、予約が成立していないと勘違いし、無意識のうちに無断キャンセルするケースがあるのだという。

● ついに弁護士がキャンセル料の 回収を代行するサービス登場

 これに対し、指をくわえて見ているだけでは状況は改善しない。そこで、飲食店や関連企業が撲滅に向けてあの手この手の防衛策に乗り出している。

 まず前出のイデア・レコードでは、電話受付の代行サービスを通じて無断キャンセル対策を行っている。予約をした後に、1度も変更の連絡がない人は予約したことを失念している可能性があるため、3日前から電話をし、「人数変更がないか」や「選べるメニューの確認」などを尋ねるようにしているという。

 「もし電話に一度も出てもらえない場合は、クライアントに無断キャンセルの可能性があると注意喚起します。それでも出てしまうNo Showの客に対して、クライアントからは『ちゃんとつながるまでかけてほしい』と言われることもありますが、電話に出ても『今行きます』と言いつつ、結局来ない人もいるのが現実です」(鈴木取締役)

 事前の対策を講じても発生してしまうのが無断キャンセル。だったらしっかりキャンセル料を回収したいと思う飲食店も少なくないはずだ。これに対して、ついにキャンセル料の回収代行を弁護士が行うサービスが登場した。サービス名は「ノーキャンドットコム」。回収金額の30%を成功報酬としてもらう形で、キャンセル料の回収業務を行っており、なんとこれまでの回収率は48%に上るという。一体、どのように回収しているのか。

 「予約のあった電話番号にショートメールで督促をします。1通目は飲食店側が無断キャンセルと認定した直後に、2通目をその1週間後、それからは3日おきに送り、最大5通送ります」(ノーキャンドットコムを運営する北周士弁護士)

 北弁護士によると、キャンセル料を支払う人の7割は1通目を見た直後に払ってくれるという。さらに、2通目以降の回収率を高めるために「3通目からは『法的手段を取る』などの文面を加える」(北弁護士)といった方法を取ったところ、実際に効果が現れたそうだ。泣き寝入りするしかなかった飲食店にとって、こうしたサービスは強い味方といえるだろう。

● 「事前決済」で月100件からほぼゼロに! 下見や名刺交換も効果的

 2年前にぐるなびが法人予約の場合のみ全額キャンセル料を保証するサービス、食べログも1年前に同社の新プランに入れば無料で全額キャンセル料の保証を得られるサービスを始めるなど、無断キャンセルへの補償を行う予約サイトも増えてきた。

 しかし、飲食店のPR支援を行っているPRacademyの栗田朋一代表取締役は「全額保証サービスなどで被害を最小限に抑えることはできますが、サービス提供会社に支払う保険料や手数料があり、結局コストがかかってしまう」と根本的な問題を指摘する。

 こうした状況に対し、独自の対策で防衛を行っているのが「かまくら」などの外食・居酒屋チェーンを運営するリン・クルーだ。同社では、50人超の大口予約の場合は、1人4000円程度の保証金を前金として受け取る仕組みを取っているという。

 「大人数の場合は電話予約があった後には、『下見』の受け入れもしています。そして、事前に名刺交換を行うことで信頼関係が築けるため、無断キャンセルはほぼなくなりました」(同社営業部リブランド推進室・村田祐介室長)

 保証金のように、事前決済ができれば無断キャンセルの最大の抑止力になるのは間違いない。実際、予約時にクレジットカード情報などを登録する事前決済システムの導入で、防衛に成功している飲食店も徐々に増えつつある。

 新宿にある「やきにく亭六歌仙本店」は、以前は海外からの顧客も含め、月100件ほど無断キャンセルが発生していた。しかし、前出の無断キャンセルに関する調査を行ったTableCheckが提供する事前決済システムを導入したところ、無断キャンセルがほぼゼロになったという。

 広尾にある「伊勢すえよし」は、2万円前後の高級料理を提供する懐石料理店。高級店にとって無断キャンセルは特に深刻な問題だが、ある時ベジタリアンのゲストのためだけに特別コースを用意したものの、当日客が来ないケースもあったという。しかし、同上の事前決済システムを導入したところ、無断キャンセルがなくなったどころか、来店日直前まで安心して予約を受け入れられるようになり、月間30~40件の予約増につながった。

 同サービスを展開するTableCheckの望月実香子氏はこう語る。

 「来店できるか分からないけれど予約だけ入れる『とりあえず予約』はなくなり、確実に来店するゲストだけが予約するようになりました。人気の店に本当に行きたい消費者にとってもメリットになっています」

 近年、ホテル予約などでは予約時にキャンセルポリシーが示され、無断キャンセルのみならず、当日キャンセルでも予約金額の100%の支払いを請求されることが当たり前になっている。しかし、ネット予約などで気楽に予約できるようになった飲食店の多くでは、まだまだその文化が浸透していないのが現実だ。今回紹介した防衛策を取っている飲食店はまだ少数派といっていい。

 もちろん急用や体調不良などで、予約をキャンセルせざるを得ないことは誰にでもあるだろう。そうした場合、飲食店に行けないと分かった時点で、飲食店に連絡するのが利用者に求められる当然のモラルだ。

 その際、「コースじゃなくて『席だけ予約』だからいいだろう」と思う人もいるかもしれないが、その後に来た予約を断るなど、実は店側に目に見えない損失を与えている。忘年会シーズンに入った今、「キャンセルし忘れていた!」と思い出した人は1秒でも早く、キャンセルの連絡をしてもらいたいものだ。

 (ダイヤモンド編集部 林 恭子)