血管を守ることに直結する「エネルギー摂取量」 減らした炭水化物を「置き換える」発想が大切

血管を守るためには、食事内容、つまりエネルギー量や栄養素に気を配ることが最も大切なことの1つだ。血管を守ることは、心筋梗塞などの心臓病を減らし、寿命を延ばすことに直結する。さらには、脳卒中や認知症を予防して、介護されずに生活できる「健康寿命」を延ばすことにつながる。もちろん他の生活習慣病も予防できる。

 血管を守るためには、食事のどんなことに気を付ければいいのか。高齢者を除く成人で肥満の人は、まずは体重を減らすことが大切だ。そう話す日本臨床栄養協会の多田紀夫理事長は、かつては長寿ナンバーワンだった沖縄県の例を挙げて説明する。

 「1978年以前の沖縄では、成人の本土の日本人に比べて、エネルギー総摂取量が成人では17%、子どもでは36%も少なかった。そして、心血管疾患とがんによる死亡率は 31〜41%も低かったのです」

 「日本にハンバーガーチェーン店第1号が銀座にできたのが71年ですが、沖縄ではその10年くらい前からアメリカの食文化の影響を受けています。そのため、それまで長寿第1位だった沖縄県の男性の順位が2000年には26位まで下がり、女性も2015年には1位から3位に転落しています」

 食事からの総エネルギー摂取量を抑える「節食」は、世界各国で寿命を延ばすという研究結果が報告されている。ヒトでは証明されていないと言われるが、同じ霊長類のサルでは証明されているので、恐らくヒトでも効果はあると考えられている。

 エネルギー摂取量を抑えるためには、その供給源となる3大栄養素、つまり炭水化物、タンパク質、脂肪を控えることになる。とくに炭水化物と脂質の内容を考慮することは、血糖や血清コレステロールの量を抑え、血管を守ることに直結するのだ。3大栄養素の理想的な割合は、昨年末に発表された「日本人の食事摂取基準」(2020年版)の改定ポイントによると、炭水化物は50〜65%、脂質は飽和脂肪酸(肉の脂など、常温で個体のもの)が7%以下で、その他の脂質が20〜30%となっている。タンパク質は年齢によって少し違いがあるが、13〜20%だ。

 多田理事長は、炭水化物の摂取割合にはアルコールも含むので、それを5%と考えると45〜60%くらいが理想だと話す。脂肪については、「血管に問題を起こしやすい飽和脂肪酸を7%以内に抑えれば、いろいろな脂肪をとっていい」という。

 ところで、体重を減らすのにより効果的に制限すべき栄養素は、脂肪よりも炭水化物だ。ただしそれは1年以内のことで、それ以上は減った体重を運動を含め、どういった手段で置き換えて維持をするかがとても大切だ。

 「炭水化物を動物性のタンパクや脂肪に置換した場合、さまざまな疫学データより、死亡率が有意に上昇することがわかっています。それを植物性タンパクや脂肪に置換した場合は、逆に有意に減少します」

 節食の断念やリバウンドを防ぐためには、減らした炭水化物を置き換えるという発想が大切だ。(医療ジャーナリスト 石井悦子)