東京五輪「中止・延期」で宙に浮く「費やされた経費」の数々

新型コロナウイルスの猛威によって、4か月後に迫った東京五輪の「延期」もしくは「中止」が現実味を帯びてきた。しかし、政府、東京都、組織委員会の誰もそれを言い出さない。いや、無駄になる膨大な費用を考えれば、責任を負うのが恐ろしくて口に出せないのかもしれない。東京五輪のために費やされた多額のカネを紐解いてみよう。

●大会招致費:88億円

 2013年9月、東京開催が決まり腰を浮かして喜ぶ安倍晋三首相、森喜朗・組織委員会会長、猪瀬直樹都知事の3人の姿を覚えている人も多いだろう。招致のためのお金は多岐にわたり、海外のコンサルティング会社に2億3000万円の支払いが発覚して非難を浴びた。

●新国立競技場 建設費:約1569億円

 総工費が3000億円に膨らんだザハ・ハディド案から二転三転、半額近く予算を圧縮したが、屋根がないため天候に左右されるイベントに敬遠され、採算に疑問符が付く。

●選手村 再開発整備費:約540億円、宿泊棟内装費:約447億円

 1万8000台のベッドも無駄に。昨年7月から“選手村マンション”として分譲販売が開始、5600戸の街が誕生するはずだったが、五輪レガシーがなくなればプレミアも剥がれ落ちる。

●高輪ゲートウェイ駅 総事業費:約192億円

 五輪開催に合わせて今月14日、49年ぶりに開業した山手線の新駅。駅前を五輪のパブリックビューイング会場としていたが、当てが外れて周辺開発にも影響が。

●有明アリーナ 整備費:約370億円

 バレーボールなどの競技会場として整備。アリーナはバレーボール4面を取れるほどの広さで、大会後も唯一黒字が見込める施設とされる。

●カヌー・スラロームセンター 整備費:約73億円

 水の流れを人工的に作り出す、国内初のコースとして新たに整備された。五輪後も水上レジャー施設として活用を見込むが、試算ではすでに赤字が判明。

●海の森水上競技場 整備費:約308億円

 水上競技において国際水準の競技場を謳う。カヌー競技に使われるが、大会後は夏場の需要しか見込めず、赤字が懸念されている。

●エンブレム

 盗用が疑われ白紙撤回となる騒動の末、ようやく決まったエンブレムも「中止」となれば無駄に。ちなみに旧エンブレムに関連した費用は1億900万円にのぼった。

 その他にも、無駄になる恐れがある項目は以下がある。

●カウントダウンボード

 五輪開幕までの日数を刻むカウントダウンボードは、都内のみならず、競技の行なわれる地域など、全国各地に設置されている。

●オフィシャルショップ

 公式ライセンス商品を取り扱うオフィシャルショップは全国80店舗以上。今後オープンする予定の店舗もあり、撤退するにしてもそれなりの費用がかかる。

●メダル

 直径8.5センチ、重さ556グラムのメダルは、大阪造幣局が約5000個製作。職人たちが手作業で仕上げたすべての選手の憧れも、中止となれば誰の手にも触れることはない。

●北海道マラソン

 夏に行なわれるフルマラソンとしては国内で唯一の大会。1987年から開催されているが、今年は五輪マラソンコースが札幌に変更になったため休止に。

●ボランティア研修

 2019年10月から2020年2月まで、11都道府県13会場で共通研修が開かれた。五輪の歴史や心構えなど、全180ページのテキストで学んだ時間と費用も無駄に。

●公式服

「ニッポンを纏う」をコンセプトにデザインされた開会式用の公式服。1964年の前回大会をモデルに上下の赤白を逆転させて独自性を表現したが、無用の長物に。

●聖火リレー・リハーサル

 2月15日、都内で公道を使った聖火リレーのリハーサルが行なわれた。公式アンバサダーの石原さとみが走者として参加、警察官7人が伴走して警戒に当たった。