武漢の回復は「世界に希望」 若者には自制求める WHO事務局長

【AFP=時事】世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は20日、新型コロナウイルスの最初の中心地である中国・武漢(Wuhan)で初めて新たな感染者が確認されなかったことは、パンデミック(世界的な大流行)と闘う世界の国々に希望を与えると述べた。


 武漢では、昨年12月に当局が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を最初に報告して以来、初めて24時間に新規感染者が確認されなかった。世界の感染者数は25万人以上、死者は1万1000人を超えている。


 スイス・ジュネーブで行った記者会見でテドロス氏は、「武漢は、最も深刻な状況も好転し得るのだという希望を世界の他の地域に与える」と発言。「当然ながら、状況は逆転する可能性があることに注意しなければならない。しかし、新型コロナウイルスを押し返した都市や国々の経験は、世界の他の地域に希望と勇気を与える」と述べた。


 中国の新規感染者は少なくなっており、すべて国外からの渡航者とみられる。流行の危機はアジアから欧州に移動し、欧州の死者数は中国の死者数を超えた。


 テドロス氏は、WHOが現在最も懸念しているのは、医療制度が脆弱(ぜいじゃく)な国や、病気にかかりやすい人が多い国にウイルスが広がった場合の影響だとして、「この懸念は今、非常に現実的で差し迫っている」と指摘。しかし、「歴史上のどのパンデミックとも異なり、私たちはこの流れを変える力を持っている」と述べた。


 また、心身の健康を保つため運動や健康的な食事、禁煙を勧めた。喫煙は重症化のリスクを高めるという。メッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」で新型コロナウイルス関連のニュースや情報、詳しい症状や感染予防方法を発信するメッセージサービスの開始も発表した。ワッツアップで「0041 798 931 892」に「hi」と送ると利用できる。現在は英語のみだが、来週から複数の言語も追加するという。


 若い世代は新型コロナウイルスに感染しても症状が出ず、免疫機能が弱い人に容易に感染させる恐れがあると指摘されている。テドロス氏は、「きょう、若い人たちに伝えたいことがある。あなたたちは無敵ではないということだ。このウイルスによって、あなたたちは数週間入院するかも知れない。死ぬことさえあり得る。もし発症しなくても、あなたがどこに行くかという選択によって、他の誰かの生死を左右することになるかも知れない」と述べ、若者に自制を訴えた。