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「口腔ケア」は手洗い、マスク、うがいに次ぐ第4の感染予防法 歯科医師の見解

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 感染拡大の懸念が続く新型コロナウイルス。感染予防のための行動としては「手洗い」「マスクの着用」「うがい」などが挙げられていますが、体内へのウイルス侵入を防ぐのに役立つと考えられる“第4の予防法”として「口腔(こうくう)衛生」が注目されています。

 ウイルスの侵入を防ぎ得る口腔ケアの重要性について、吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんが見解を示します。

■インフル予防では実績

 今、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスと「お口のケア」に深い関連があるのをご存じでしょうか。

 以前から、高齢者の口腔ケアを行うことで、さまざまな病気の予防になることは知られていました。口腔ケアによる抑制効果の高い病気としては、誤嚥(ごえん)性肺炎や心臓血管系の病気などが有名ですが、実は、インフルエンザなどのウイルス性感染症にも有効であることが科学的に証明されています。

 私どもが運営する老人ホームでは、昨シーズン(2018年秋~2019年春)のインフルエンザ発症者はゼロで、今シーズン(2019年秋~2020年春)も今のところゼロです。これは、歯科衛生士による専門的口腔ケアを入居者全員に徹底して実施したことが大きいと考えています。

 残念ながら、2017年秋~2018年春シーズンは、インフルエンザが施設内で発生してしまいましたが、これは比較的介護度が軽く、専門的口腔ケアを受けていない入居者から施設内に感染が広がり、介護度の重い人が重症化してしまったものでした。この反省を踏まえて、介護度に関係なく口腔ケアを徹底的に実施した結果、ここ2シーズンはゼロになったのです。

 しかし、なぜ、専門的口腔ケアの徹底がウイルス性感染症の予防になるのでしょうか。

 感染予防には「感染経路の遮断」が最も重要なことは異論がないと思います。しかし、完全に外部との接触を絶つことは不可能です。そうなると、ある程度ウイルスに晒(さら)される前提で、感染予防を考える必要があります。よくいわれるのは「手洗い」「マスク着用」「うがい」です。

【手洗い】

 手洗いは非常に重要です。帰宅後など、手に新型コロナウイルスが付着している可能性を考え、しっかり洗い流しましょう。新型コロナウイルスは、飛沫(ひまつ)感染と接触感染によって広がると考えられていますが、まずは飛沫感染と接触感染に関する正しい理解が大切です。

 飛沫感染とは、くしゃみや咳(せき)、会話などで、ウイルスを含んだしぶきが飛ぶことによる感染です。飛沫には水分があり、重さがあるため、どこまでも飛んでいくことはできずに落下します。

 落下しますが、ウイルスは飛沫の中で一定期間生存し続けます。従って、飛沫が机や手すり、その他あらゆる場所に付着している可能性があり、しかも一定期間病原性があるということです。

 私たちはそれらの飛沫に、知らず知らずのうちに触れている可能性が大いにあるわけです。また、感染者が咳やくしゃみの際に覆った手でドアノブなどに触れている場合もあり、そこを別の人が触る可能性もあります。

 皮膚から直接的にウイルスが侵入することは考えにくく、実際には、机やドアノブに触れた手で口や鼻を触ることで、粘膜を介して体内にウイルスが侵入していくことが分かっています。これが接触感染です。

 つまり、「自分の手にウイルスが付着しているかどうか」は大変重要な問題です。そのため、私は手洗いは他の予防法よりも、より重要だと考えています。

【マスクの着用】

 マスクの着用には、一定の予防効果があると思います。

 先述したように、飛沫感染はくしゃみや咳、会話などで、ウイルスを含んだしぶきが飛ぶことによる感染です。一般的に、飛沫は2メートル程度飛ぶと考えられているため、人同士が同程度の距離を取る方がよいとの意見もあります。そこまで距離を取ることが難しいとき、マスクは感染者から飛沫が飛んでいくことをある程度抑えてくれます。

 一方、未感染者の予防策としては「健康な人はマスクは必要ない」との意見もあります。しかし、これは「感染者が全員マスクを着用している」という前提での話といえます。

 感染者がしっかりとマスクをして、周囲に飛沫を飛ばさなければよいのですが、問題は自分自身が感染していても症状がない場合があり、無自覚に感染を広げてしまう恐れがある点です。また、未感染者のマスク着用は、鼻や口をむやみに手で触ることを防ぐ効果もあります。

 そうした意味では、マスクは「うつさない・うつされない」ための一つの有効手段だと思います。

【うがい】

 うがいは、やらないよりは当然やった方がよいと思いますが、大きな感染予防効果はないと思います。

 ウイルスも細菌もそれらが集合体となり、増殖して初めて脅威になります。うがいは、口腔内で唾液中に浮遊しているものを洗い流すことは可能ですが、歯や舌、喉に付着したものを完全に取り除くことはできません。ウイルスは鼻や口の粘膜から体内に入るので、うがいをするのであれば、「鼻うがい」も併用した方がよいでしょう。

 また、普段患者さんからよく受ける「うがい薬は有効ですか?」という質問には、私は「使わないよりは使った方がよいと思いますが、ばい菌が“死ぬ”というよりは“嫌がる”くらいと考えた方がいいでしょう」とお答えしています。

■歯垢除去で「バリア―」機能を維持

 仮に、これら3つの予防法を突破してウイルスが口腔内に侵入したとします。これらのウイルスは舌や喉で増殖し、いよいよ体内に入り込みます。

 ここから先のステージで重要になる“第4の予防法”は、舌に停滞するウイルスや細菌を舌ブラシで除去すること、そして、歯垢(しこう)を徹底的に除去することです。直接的に舌をきれいにすることで、口腔内から体内にウイルスが侵入するのを防ぎます。

 では、歯に付着する歯垢を取ることは、虫歯や歯周病の予防の他、ウイルス感染に対しても有効なのでしょうか。

 歯垢からは「プロテアーゼ」「ノイラミニダーゼ」という、ウイルス感染に大きな影響を及ぼす2種類の酵素が発生します。プロテアーゼの作用で、ウイルスはより粘膜を通過しやすい状態になり、ノイラミニダーゼの作用で、細胞内で増殖したウイルスが、より周囲の細胞に拡散しやすくなります。

 この2種類の酵素で、ウイルスに対するバリアー機能が著しく低下するのです。従って、歯垢を徹底的に除去することは、ウイルス感染に対して有効といえるでしょう。

 もちろん、口腔ケアでは歯垢の除去だけでなく、舌の清掃やマッサージによる唾液の分泌促進など、感染予防効果が期待できるさまざまなケアも行います。インフルエンザに関していえば、専門的口腔ケアをした場合、発症リスクが10分の1になることが研究で分かっています。

「新型コロナウイルスはインフルエンザとは違う」という意見もありますが、現時点では世界中のどの国も機関も、正解は持ち合わせていません。そのため、現在行う対策としては、類似の一般的なウイルス感染症の対策を取り入れるのが有効と考えられます。

「手洗い」「マスク着用」「うがい」に加えて、「帰宅時のお口のケア」も実践してみてください。

文/構成・オトナンサー編集部