一部公園に利用者「密集」、閉園・遊具使用禁止も…保護者は悲鳴「子どもの居場所ない」

新型コロナウイルスの感染拡大で自治体が外出自粛を呼びかける中、一部の公園に人出が集中している。閉鎖中のレクリエーション施設に代わる数少ない子どもの遊び場となっており、7日の緊急事態宣言発令後、一度は減少した公園の利用者が増加に転じたとのデータもある。自治体は「密集を避けて」と呼びかけ、遊具の使用を禁止した公園もあるが、保護者からは「子どもの居場所がない」と悲鳴が上がる。

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■宣言後も増加

 「毛馬(けま)桜之宮公園」(大阪市都島区)では23日昼、ブランコや滑り台などの遊具が置かれた広場に30人以上の親子連れの姿があった。4歳の長男と訪れた主婦(34)は「元気な盛りで、家でじっとしていられない。今、伸び伸びと遊ばせられるのは公園くらい」と話した。

 各都道府県が外出自粛を求める中、健康維持のための散歩や公園での運動などは対象外とされる。IT企業の「アグープ」(東京)がスマートフォンの位置情報を基に、エリアごとの日曜午後3時の人出を推計したところ、一部の公園では緊急事態宣言の発令直後に減った人出が戻りつつある。

 毛馬桜之宮公園では、感染拡大前(1月12日)と比べ、宣言後初の日曜となった今月12日は19%減少したものの、同19日は5%減にとどまった。

 「服部緑地」(大阪府豊中市)では19日、感染拡大前に比べ42%も増加。「夙川公園」(兵庫県西宮市)でも14%増だった。

 アグープによると、JR大阪駅や三ノ宮駅周辺の日曜の人出は約8~9割減ったままで、同社は「施設の休業で家族連れらが公園に集まったとみられる。宣言から2週間たち、『自粛疲れ』もあるのでは」と分析する。

■他地域からも

 大阪市は22日、ツイッターで「公園利用の際は人が多い場所を避け、混雑する時間帯は利用の見合わせを」と発信した。松井一郎市長は23日の記者会見で「公園が混んでいたら、周辺の散歩に切り替えてほしい」と呼びかけた。

 神戸市でも各公園に、「人と距離を取る」「同じ場所に長時間滞在しない」などの注意書きを掲示する。

 遊具を使用禁止にする公園も。「奈良県営大渕池公園」(奈良市)では21日から、大型遊具6台をロープで囲い、使用禁止にした。最近は大阪などから来る家族連れが目立っていたといい、担当者は「やむを得ない措置」と理解を求めた。大阪府東大阪市も「花園中央公園」のターザンロープなどがある「ラガーステーション花園」を9日から5月6日まで休止とした。

 京都市は5月6日まで、「梅小路公園」(下京区)の庭園や「宝が池公園」(左京区)の広場「子どもの楽園」などを閉園に。小学生の子ども2人を育てる同市東山区の女性(34)は「利用禁止の公園が増えれば、利用できる公園にばかり人が集まってしまう」と心配そうに話した。

■距離をとって

 浜松医科大の堀井俊伸教授(感染制御学)は「感染予防に気を配れば、公園で遊ぶのは問題ない」と指摘。マスクの着用に加え、アルコールの消毒薬やウェットティッシュを持参して、一つの遊具を遊び終えるごとに手洗いや消毒をすることを推奨する。友達と近い距離で遊ぶ時間を短くすることも、感染リスクを減らすのに効果的という。

 堀井教授は「子どもがずっと家の中にいるのは限界がある。もう少し遊べる場所を増やさないと、限られた場所に殺到して逆に『密』を生み出してしまう。校庭の開放を進めるなど、安全な場所の用意が必要だ」と話す。