【暴力団幹部が告白】時給1万円女性を半額派遣「ギャラ飲み」と「マスク無料配布」の新たなシノギ

日本中のドラッグストアやコンビニから姿を消していたマスク。いまでも医療機関や介護施設などでは圧倒的に不足していると報じられている。その一方、街中では5月になって少しずつ流通するようになり、価格も下落しはじめている。

【画像】「50円~」の看板とともに路上で販売されるマスク

 そんなマスクをめぐる変化が、意外な方面に波及している。それは暴力団業界だ。

暴力団はなぜマスクをタダで配るのか

 指定暴力団住吉会系の有力組織の幹部が、最近の裏社会のマスク事情を明かす。

「コロナ騒動が拡大を始めた今年の2月ごろに、今後はマスクがシノギ(資金源)になるのでは、と商売にする話が舞い込んで来た。中国から数千枚が入ってくるということだった。1枚につきいくらか上乗せして売りさばき儲かればよいと思っていた」

 実際に、数週間前まで暴力団業界でマスクがシノギとなっていたことは、先の記事でも報告した。しかし、その後の価格下落で、大きなシノギにはならない状況になると、マスクの使い道が変わってきたという。


靴屋で売られているマスク。5月に入って店頭に並ぶことも多くなった(5月11日) ©時事通信社

「少し前までは1箱50枚入りで3000円ぐらいが相場だったが、すでに値崩れしている。今となってはマスクで商売をしようとは思わない。大量に仕入れたが、マスクがなくて困っている知人に無料で手渡している」

 同様の“慈善事業”は、山口組幹部も行っているという。

「ある人から、『マスクを都合できますか』と聞かれ、先方が必要な分量を都合してあげた。今は大量にマスクを確保しておくことに意味がある。よろず相談所ではないが、『この人に頼めば、世間で枯渇しているマスクが欲しいだけ手に入る』と思わせることが重要だ」

 知人へのマスクの配布だけでなく、介護施設にも配り始めている。

「つい先日のことだが、ある介護施設から人を介して依頼があった。『1000枚ほどマスクありますか。1枚100円ぐらいで分けてもらえないか。あれば2000枚でもお願いします』と打診された。

 そこで2500枚を送ってあげた。先方は、こちらがヤクザだという認識はあったようだ。とにかく、医療や介護の現場はマスクが不足していて困っている。こちらも介護施設から頼りにされたということで、『自分の名前にかけて、粗悪品のマスクは送らない』との思いでしっかりしたものを送った。もちろん無料。マスクは常に1万枚はキープしている」

 まるで政府の肩代わりをするような話だが、警察幹部は次のように解説する。

「暴力団対策法の影響などもあって、いまは暴力団に対する締め付けが厳しい。過去にあったような“街の顔役”としての立場を保つことは難しく、『ヤクザはすごい』と思わせる場面は少ない。そういった意味で、マスクの無料配布は、絶好の“顔を売る”機会だったのだろう。

 とはいえ“タダより高いものはない”とも言うように、暴力団側が無料で配る背景には、『後々困った場面で自分たちも助けてもらおう』という気持ちはあるはず。彼らの言うような、人助けの気持ちがないとは言わないが……」

苦境が続く夜の街。ビルオーナーも厳しい

 マスクを大盤振る舞いする陰で、夜の街をシノギにしている暴力団の現状は厳しい。東京に本拠を置く、ある暴力団幹部が語る。

「税金も払っていないにも関わらず、何を勝手なことを言っていると思われるかもしれないが、夜の街のことは誰よりも詳しいつもり。その目で見ると、いま夜の街は本当に困っている人がたくさんいる。国には、もっと迅速に助けてあげてほしい。

 特に営業自粛している飲食店経営者は家賃が払えない。事業者支援と言っても100万円ほどでは話にもならない。新宿や銀座、六本木の飲食店を経営している知人のうち、何人かはビルのオーナーから家賃は最大3カ月待つと言われている人もいる。しかし、支払いが後回しになるだけ。免除ではない」

 苦境が続いているのは、飲食店経営者だけではないという。

「ビルのオーナーも苦しい。銀行から融資を受けてビルを建てたオーナーには融資の返済がある。テナントの飲食店が家賃を払えなかったら、オーナーも銀行に返済できない。どこかで資金がショートしたら、玉突き、連鎖的に破綻が連なる」(同前)

夜の街の一部では「コロナ・バブル」

 ここまでの危機感は、一部の暴力団は夜の街からみかじめ料(用心棒代)を徴収しているなど特有の背景があるからだ。

「我々は世間のカタギのみなさんあってこそ。日本経済の衰退は自分たちにも直結する」と、前出の暴力団幹部は語る。だが、こんな状況の中でも、社会のルールを逸脱することで「コロナ・バブル」とも呼べる活況を呈している店もある。

 前出の住吉会系幹部が指摘する。

「ごく一部のキャバクラでは、密かに“闇営業”していて大盛況となっている。どこの店も閉まっているなか、飲みたい客はやはりどうしても飲みたい。ある店ではコロナ騒動のさなかでも男性客で満席。密接、密集、密閉のまさに3密。営業自粛は店にとってみれば死活問題。開けざるを得ないのだろう。店に出ている女の子たちも命がけだ」

 さらに、いわゆる「ギャラ飲み」も広がりをみせている。女性と飲食をともにしたい男性客の依頼で、キャバクラなどに勤める女性たちを時間短縮で営業している居酒屋などに派遣。短時間だが、飲食を楽しむという。

「例えば時給1万円のキャバクラの女の子を半額で派遣している。営業を自粛しているキャバクラとしても、生活がかかっている女の子にしてもなんとか収入を確保するということ。日本にはこうした営業に罰則がないのが弱いところ。アイデア次第で商売は色々とある」(同前)

 賢いヤクザは、どんな苦境でも上手く立ち回るものなのか。闇営業の店舗からクラスターが発生しないことを祈るばかりだ。

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))