在宅勤務「制度化」へ手探り 企業、緩和で割れる対応

新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言全面解除や、東京都が1日から休業要請を大幅に緩和したことを受け、多くの企業で、「原則」として一定の強制力を持たせた在宅勤務態勢(テレワーク)を緩和する動きが始まっている。伊藤忠商事が通常勤務に戻したほか、KDDI(au)は6月から在宅勤務率を7割に下げる。さらに一歩進め、コロナ後の「ニューノーマル(新常態)」を見据え、日立製作所などが、在宅勤務といった多様な働き方を、一般的なものとする新制度の創設に踏み切った。  通常勤務に戻した伊藤忠だが、在宅勤務、時差出勤は奨励しているため、午前に出勤し、午後は在宅勤務といったフレキシブルな勤務が多い。密閉、密集、密接の「3密」回避のため、社員食堂の閉鎖は続くなど感染拡大前への回復にはほど遠い。  数値目標を設定するケースも。現状では総務、経理、人事など内勤者の約9割が在宅勤務しているNTTでは、緩和はするが、在宅勤務5割以上を維持する。キリンホールディングスは出社人数上限を3割に設定した。三井物産では部署ごとの出社比率を最大5割に抑える。  また、指示の表現緩和もある。丸紅では「原則出社禁止」を「原則在宅勤務」に切り替えた。ホンダは既にオフィス勤務者への「原則在宅」を、「在宅推奨」に変更。トヨタ自動車も「原則」を「必要に応じて」と変えた。こういった表現変更での対応は、「可能ならば、今までのように在宅勤務を続けてほしいという会社側の狙いがある」と、担当者は説明する。  これらの新型コロナ感染拡大の非常事態対応の緩和として取り組みを進化させ、在宅勤務などを一般的な働き方としての制度化に動いたのが、日立製作所だ。週2~3日の出社でも効率的に働けるよう人事制度を見直し、押印や会議のための出勤も減らし、「50%の在宅勤務を目指す」(中畑英信執行役専務)。資生堂もオフィス出社を5割に減らすことを「標準化」するほか、インターネットベンチャーのGMOインターネットは、6月からは週に1~3日を目安としたリモートワーク態勢を導入し、全従業員の約4割が在宅勤務になるよう制度化する。  コロナウイルス感染再拡大のリスクを抱える中、企業は勤務体制を元通りにすることはなく、警戒を続ける構えだ。                   ◇  ■各社の勤務態勢の変更  ・トヨタ自動車   在宅勤務指示を「原則」から「必要に応じて」に変更  ・ホンダ   オフィス勤務者の在宅方針を「原則」から「推奨」に  ・パナソニック   在宅勤務を活用しながら、必要に応じて出勤させる  ・日立製作所   週2~3日の出社で在宅勤務率5割の人事制度導入へ  ・NTT   内勤者在宅勤務率5割以上を維持する。現在は9割  ・KDDI   6月以降の在宅勤務率を7割以上、7月は5割以上に  ・三菱UFJ銀行   本部を中心とした時差出勤や在宅勤務の推奨を継続  ・GMOインターネット   6月から週1~3日を目安にしたリモートワーク制度  ・三菱商事   在宅勤務態勢は継続。必要な国内出張は認める  ・住友商事   在宅勤務態勢の指示で、「原則」を「奨励」に変更