ブルーインパルスの“感謝飛行”で自衛隊不信を口にする人々の心理とは?

新型コロナに対応する医療従事者に敬意と感謝を示すため、航空自衛隊のブルーインパルスが5月29日、都心上空を飛行した。ブルーインパルスが東京上空を飛行するのは、2014年5月に行われた旧国立競技場の閉場イベント以来、6年ぶりのことだという。大多数の国民はこれを見て感激したが、中には批判的な声も……。

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【写真】世界有数の戦闘能力を持つ「名戦闘機」

 埼玉県の入間基地を飛び立ったブルーインパルス6機は、12時40分頃から13時頃にかけて都心上空で白いスモークでラインを描いた。板橋区方面から都心へ飛行し、上野公園を経て江東区を抜け、江戸川区へ。葛飾区上空でUターンし、浅草、東京駅、五反田の上空を飛び、丸子橋付近で北へ転回。渋谷区、新宿区を抜け、板橋方面へと向かった。都心の上空で8の字を描いた形だった。

安倍政権を嫌う人には評判が悪いようで…

 これを見た立憲民主党の蓮舫議員は29日にTwitterで、

《美しいと思います。SNS拡散、空を見上げて感動した方々も沢山。航空自衛隊のご努力にも感謝です。(以下略)》

 小池百合子都知事も同じ日にTwitterで、

《ブルーインパルスが都心上空を飛行し、医療従事者への敬意と感謝を示した。東京の大きな青空を見上げ、心を一つに。#医療従事者にエールを》

 多くの日本人は拍手喝采した。

 ところが、タレントのラサール石井は30日に、Twitterでこうつぶやいたのである。

《私はブルーインパルスが飛んでいる写真に萌える人が多いのは、空のおかげだと思う。凄い飛行技術には脱帽しますが、青空なしで、戦闘機だけが飛ぶのではさほど心は動かない。沖縄の空を爆音と共に飛ぶ姿はかなり嫌です。戦闘機を「カッコいい」と思う事はある。その気持ちを誰かに利用されない事だ。》

 映画監督の想田和弘氏も29日に、Twitterでこう批判的した。

ラサール石井のTwitterより

《これにかかる費用はいくらになるのでしょうか。医療機関や従事者の方々に経済的支援を手厚くした方が、よほど敬意と感謝を示せるように思うのですが。》

 安倍政権を嫌う人には評判が悪いようなのだ。

飛行は空自が自発的に進めた

「医療関係者のためにブルーインパルスが東京上空を飛んだことで、国民の大多数は肯定的に受け止めていると思います。そんな中で批判的なことをおっしゃる方は、戦後の平和教育の影響でしょう」

 と語るのは、元航空自衛官で軍事ジャーナリストの潮匡人氏である。

「日教組が中心となって行った戦後の平和教育を受けて育った人は、だいたい50代から60代の中高年です。当時は、憲法9条がいかに素晴らしいかを説き、戦争は絶対反対、自衛隊は憲法違反であると教え込まれました。そのため、当時の自衛隊員は肩身が狭く、『税金泥棒』と言われたものです」

“平和教育”を押し付けたのは、日教組だけではないという。

「40年前に放送されたTBSのドラマ『3年B組金八先生』では、卒業したら自衛隊に入隊を希望する生徒に対して、金八先生が猛反対。説得して警察官にさせるという、美談として報じられました。実際、平和教育に洗脳された人たちの中には、そういう考えの人もいたでしょう。けれども、今こんなこと言ったら若い人は『このおっさん何言ってんだ』となりますよ」(同)

 1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災で、自衛隊に対する世間の目は、変わったという。

「災害時における自衛隊の救助活動が大きく注目されて、評価されるようになったのです。新型コロナでも、自衛隊は感染者を搬送しています。東京・池尻の自衛隊中央病院では、クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の乗客など122人の患者を受け入れ、ほとんど無事退院させています。院内感染者は1人も出していません」(同)

 1960年に創設されたブルーインパルスは、64年の東京五輪ではオリンピック史上初となる、五輪マークを描くというアクロバットを成功させた。東京上空を飛行したのは今度で3度目だ。

「ブルーインパルスは自衛隊の広報を行うのが重要な任務です。機体は基本的に戦闘機と同じ構造ですが、武器は載せていません。本来は練習機として使われるものです。今回の飛行について税金のムダという声もありますが、ジェット燃料はハイオクガソリンと同じくらいの価格です。20分程度の飛行では大した額にはなりません」(同)

 ブルーインパルスに先駆けて、アメリカは4月28日、医療関係者のために海軍の「ブルーエンジェルス」と空軍の「サンダーバーズ」がニューヨーク上空でアクロバット飛行を披露した。イタリアも、5月25日から空軍がアクロバット飛行を行っている。

 海外の動きに倣ったのか、河野太郎防衛相は航空幕僚監部に対し、医療従事者への敬意と感謝を示すためにブルーインパルスを飛行させることができないか検討するよう指示を出した。

「ブルーインパルスの飛行ルートは、飛行の直前まで公表されませんでした。ブルーインパルスをひと目見ようと人が集まると、クラスターが発生しかねませんからね」(同)

週刊新潮WEB取材班