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コロナ禍で問い合わせ5倍 バーチャル空間で会議・イベント……VRのビジネス活用に再注目

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 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、多くの企業がテレワークを導入するなど、人々の働き方は大きくシフトしている。それに伴い、チャットツールやビデオ会議システムなどを使ってオンライン上でコミュニケーションする機会も格段に増えてきた。

 しかし、同時にオンライン上のコミュニケーションならではの課題が浮き彫りになり始めている。画面越しに顔を見ながら会話できるとはいえ、「雑談が生まれにくい」「参加意識が出にくい」など、リアルのコミュニケーションに比べれば物足りない部分は多い。

 その課題を解決できるテクノロジーとして注目を集めているのがVRだ。VRならではの「今、そこにいる感覚」は、よりリッチなコミュニケーションを生み出し、ときには現実では不可能な体験をも実現する。

 ウィズコロナ/アフターコロナの世界では、VRはビジネスでどのように活用されていくのか。今回、法人向けVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ(ニュートランスビズ)」を提供するSynamonの武井勇樹氏に話を聞いた。

●コロナ禍で問い合わせが5倍に急増

 NEUTRANS BIZは、複数人が同時にバーチャル空間に接続し、物体や空間のビジュアルデータを共有しながらコミュニケーションできる法人向けのプラットフォームサービスだ。ユーザーはバーチャル空間にアバターとして参加でき、コントローラーを使えば身振り手振りを伴ったコミュニケーションが可能となる。

 バーチャル空間上では、資料を映してペンで書き込んだり、カメラの視点を切り替えたりして、現実と同じような没入感のある体験を実現する。さらに、空間上に文字を手書きしたり、模型のようなオブジェクトを置いて手でクルクル回したり、拡大縮小したりといった現実ではできない体験も可能にしている。

 企業への導入事例はオンライン会議やウェビナー、研修など幅広い。バーチャル空間自体をカスタマイズできるため、現実のショールームをバーチャル上に再現する「バーチャルショールーム」としての引き合いもあるという。

 コロナ禍でイベントの自粛やテレワークが推進したことで、同社への問い合わせは昨対比で5倍に急増した。最近は展示会が3密を理由に実施できないため、ブースをバーチャルで再現する「バーチャル展示会」の問い合わせも増えてきたという。

 「不動産業界や製造業界、建築業界からは、3DCGを活用して、模型などを見ながらコミュニケーションを取りたいという引き合いがあります。IT系やSIerからは、『顧客からVR会議のニーズがあるので一緒にやらないか』という要望もありました。他にも、医師向けのセミナーで利用したい製薬会社、授業の一環で使いたい学校、働き方改革でテレワークを推進したい部門など、引き合いは多種多様です」

 さらに、企業の動機も変化してきている。コロナ以前は将来伸びる分野として先行投資的な意味合いで導入する企業が多かったが、コロナ以降は急速にテレワークが推進されていることもあり、導入への緊急度が高まっているという。

 「『3カ月後のこのイベントをバーチャルでやりたい』『オフィス縮小を考えているのでバーチャルでコミュニケーションできるか検証したい』といった緊急度の高い問い合わせに変わってきたと感じます」

 では、コロナ以前からすでに導入している企業はどのような使い方をしているのか。具体的な活用事例を見ていこう。

●現実ではできないことをバーチャル空間で実現

 土木建設業のとある企業では、オンライン会議で図面を画面越しに見てもサイズ感が伝わりづらいという課題があった。そこで、バーチャル上に3キロ×3キロもの広さがある「ラージフィールド」を作り、実際に建造物を作る前に3DCGでレビューできるようにした。バーチャルでは物理的制約がないため、長さ1キロの橋でも原寸サイズでデザインレビューできるようになったという。

 KDDIは拠点間のコミュニケーションや在宅ワークの社員との会議などに活用。東京・虎ノ門にあるKDDIのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE(以下、デジタルゲート)」ともコラボレーションしている。現在は新型コロナの影響でオフィスツアーに制限が出ているため、バーチャル空間にデジタルゲートを再現し、バーチャル上でオフィスツアーを実施できるようにした。

 また、現実のデジタルゲートにはドローンがあるが、建物内なので飛ばすことができない。そこで、ドローンの動きをシミュレーションし、バーチャル空間でドローンを飛ばすような機能も実現した。

 武井氏は「現実の施設に行けないので単純にバーチャルで代替するという側面はありますが、それだけでは弱い」と分析する。直近では展示会やセミナーが開催できないため、バーチャル空間で代替したいというニーズに応えていく。一方、3密の制約がなくなるアフターコロナの世界でもサービスは残り続けることが必要だ。そのためには、現実の代替だけでなく、バーチャルならではの価値をどれだけ多く作っていくかが重要となる。

 「現実の枠を超えてバーチャルだからこそできることも提供したいと考えています。バーチャルならではの価値が生まれれば、『ゴーグルをかぶってでもやろう』となるのではないでしょうか」

●空間や体験を共有すればコミュニケーションが活性化する

 NEUTRANS BIZには6月、ライブ配信機能が追加され、VR機材が手元にないユーザーでもVR空間からのライブ配信をブラウザから視聴できるようになった。ライブ配信中はコメントや「いいね」などのエモーションを発信できるなど、バーチャル空間でも双方向のコミュニケーションが可能な機能を採用した。

 武井氏はオンライン会議システムで外部のウェビナーに2日連続で登壇し、その翌日に自社開催のバーチャルセミナーに登壇した。すると、登壇側の負荷が全く違ったという。

 「ウェビナー形式の場合、ファシリテーターに話を振ってもらい、ミュート解除して応えてまたミュートをオンにする、この繰り返しです。登壇者同士の掛け合いが難しく、参加者のリアクションが分かりづらいので不安もありました。しかし、バーチャルセミナーなら登壇者同士でお互いの様子を見ながらやりとりができました。登壇者側からしたら圧倒的にやりやすかったです」

 オンライン会議システムは音声ベースのコミュニケーションだ。セミナーや会議の場合、画面に発言者もしくは資料を映すだけとなり、ラジオを聞いている感覚に近いものがある。時間とアジェンダを決めて話し合うには向いているが、雑談がごっそり削ぎ落とされてしまう。情報共有には最適だが、空間や体験の共有は難しい。クリエイティビティやコラボレーションが生まれにくい環境だ。

 一方、バーチャル空間ならよりリッチなコミュニケーションが可能となる。「今、そこにいる感覚」が共有できるため、参加意識はより高まる。登壇者は顔の向きや身振り手振りがあるため、相手の話に入るタイミングもつかみやすい。武井氏がバーチャルセミナーに登壇したときは、アシスタントが音が割れていることを空間上にカンペのように書いて伝えるなど、テレビの収録に近い感覚で配信できたという。

 今、「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」など、バーチャル上でコミュニケーションを楽しむゲームが爆発的人気となっている。武井氏は「みんなで同じ空間や体験を共有することでコミュニケーションが活性化し、仲良くなれるのではないか」と考えている。

 「オフィスのよさは、同じ空間を共有し雑談などが生まれることで、組織への愛着が生まれたり、新しいアイデアが生まれたりすることです。空間や体験を共有し、コミュニケーションが活性化すれば、アフターコロナの世界でもビジネスのスピードを落とさずに進められるのではないでしょうか。テレワーク環境においても、現実の空間ならではのリッチなコミュニケーションを実現できる手段がVRです。まだ始まったばかりのVRだかこそ、ユースケースをさまざまな業界、さまざまな企業と作っていけるよう目指しています」