ジョブズもザッカーバーグも! イマドキ富裕層たちが毎日同じシャツを着る理由

■ファッションに興味のないイマドキ富裕層たち

一般的に富裕層というと、高級ブランド品など豪華な洋服で着飾っているというイメージがあるかもしれません。

確かに、芸能人やスポーツ選手などに見られるように、高級ブランド品を好む人もいます。

また、洋服や服飾品には自我拡張作用があり、高級な品を身に着けると気分が高揚したり自信がついたり、それにふさわしい言動をするようになる効果があります。実際「勝負服」という言葉もあるくらい、その効果を実感したことがある人も少なくないと思います。

しかしそれも、もう過去の話。

昨今の若い富裕層の多くはファッションにはあまり興味がないし、重きを置きません。普段の服装は、どこでも手に入るカジュアルスタイルで、見た目は一般人と区別がつかないほどです。

特に男性の場合、ユニクロが大好きです。飲み会などでも「ほぼユニクロで買う」という会話が飛び交います。

つい先日も彼らとのSNSで、「全身ユニクロを着てユニクロに買い物に行った」というコメントで盛り上がったのですが、「僕も」「俺も」という人が結構多くて、改めてユニクロ人気の高さを感じました。

そういえば私もこの原稿をカフェで書いているのですが、靴(というかサンダル)以外はユニクロです。

そこで何人かにその理由を聞いてみたところ、次のような理由が出てきました。

■本当にお金をかけるべきことは何か

彼らは他人からどう思われるかをあまり気にしません。

カッコよく思われたいとか、こんな格好では恥ずかしいといった感覚が希薄です。自分に自信を持っているから、服装で見栄を張る必要がないのです。

それはユニクロがダサいということではなく、シンプルなデザインゆえに普段着としても仕事の場面でも違和感がなく、堂々と着ていられるということです。生地や縫製の品質もハイブランドに匹敵するレベルで、着こなし次第ではむしろおしゃれに感じる人もいるでしょう(ちなみにいまから約35年前、私が中学生の頃に地元の岡山でユニクロを買ったことがあり、糸がほつれているなど安かろう悪かろうという印象でしたが、当時と比べても雲泥のクオリティだと感じます)。

服装で見栄を張る必要がないことに加えて、彼らにとってファッションは勝負するところではないため、そこにお金をかける必要がないと考えています。

事業家である彼らが重要なのは、仕事でパフォーマンスを高め成果を出すことです。しかしスーツでは動きにくいし夏は暑い(営業などで人と会う場面や人前に立つ場面は別として)。だからシャツにチノパンなどといった服装を好む傾向があるのです。

■SNSではキラキラ写真だが、実は片付けができない……

むろん、自分のブランディングのために、あえて見た目にお金をかけている人もいます。

ただしそういう人たちは、自分が勝負すべき土俵ではお金をかけ、そうでない土俵では徹底的に省力化するという峻別がついています。

知人の起業コンサルタントは、SNSにアップする写真は高級スーツに身を包んでいますが、普段はTシャツとジーンズだと言っていました。

別の知人で貿易ビジネスで成功している女性も、やはりSNSではキラキラ写真を載せています。セミナーなどへの集客を考えると、やはり憧れられるイメージ作りが重要だからでしょう。しかし彼女はまったく片づけができないタイプで、自宅はすぐ汚部屋になるそうです(なので結婚してからは家政婦を雇っているとのこと)。

そして、どんな服を着るかを選ぶ時間も、新しい服を買いに行く時間ももったいないし、その判断が無駄だという人も少なからずいました(むろんファッション好きな人もいます)。

そういえばアップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏はつねに黒のタートルネックにジーンズ、足元はスニーカーというスタイルを貫いていたことで有名です。

■マーク・ザッカーバーグも毎日同じシャツ

また、米フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は、Facebookの公開Q&Aセッションに投げかけられた「なぜあなたは毎日同じシャツを着るのか?」という質問に対し、以下のように答えています。

「僕は社会への貢献に関係しない決断はできるだけしないようにしている。これは多くの心理学的な理論に基づいていることで、何を食べるか、何を着るかなどのたとえ小さな決断でも、繰り返し行っているとエネルギーを消費してしまうんだ。

日々の生活の小さな物事にエネルギーを注いでしまうと、僕は自分の仕事をしていないように感じてしまう。最高のサービスを提供して、10億人以上もの人々を繋げることこそ、僕のすべきことなんだ。ちょっとおかしく聞こえるかもしれないけど、それがぼくの理由だよ」

またオバマ前アメリカ大統領も、「私は常にグレーか青色のスーツを着用している。こうすることで私が下さなければならない決断の数が減るんだ。何を食べるか、何を着るか決める余裕はないし、他に決断しなくてはならないことが山のようにあるからね」という趣旨の発言がありました。

■シンプルライフで重要でない決断の数を減らす

彼らの口からそろって出てくる「決断の数を減らす」という言葉。

小さな決断でもその数を重ねることでエネルギーを消耗し、より大きく重要な決断の精度が落ちてしまう。

つまりライフスタイルをシンプルにして決断の数を減らしていけば、本当に重要な局面での判断に集中できる。そしてそれが自分の目的の達成や幸福に貢献するということなのでしょう。

他人からどう思われるか過剰に気にしないから自分の信念を貫ける。どこにお金をかけるべきか峻別できているから積極投資とコスト削減が両立できる。シンプルに生きることで重要な決断に絞っているから適切な判断につながる。

ここでは「服装」を「ユニクロ」の例として挙げましたが、これが他の全方位にわたって徹底しているために、彼らは富裕層になったのだと考えられます。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。
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(米国公認会計士 午堂 登紀雄 写真=AFP/時事通信フォト)