激安寿司店ではよくある? 「代用魚」の使用はどこまで許されるのか

街を歩けば、100円を切る激安価格をウリにする寿司店も目に付くようになった。イクラ、カンパチ、アナゴ、サーモン、ネギトロ……といった人気商品も、意外な低価格で食べられる。しかし「デフレもここまで来たか」と感慨にふけるのは早計かもしれない。そうした激安価格が可能なのは「代用魚」を使用しているから——というケースもあるようだ。
『SAPIO』9月号によると、イクラの代用としてはマスの卵である「マス子」が主流。カンパチにはコバンザメに似た「スギ」が使われる。また、アナゴの代用には、ウミヘビ科の「マルアナゴ」が使われることがある。なかには、深海魚の「ヒモダラ」をヒラメやアイナメとして提供している例もあるという。
ただ、いくら安くてうまくとも「代用魚」の使用は、客にとっては「だまし討ち」と言える気がする。詐欺や虚偽表示などにあたる可能性はないのだろうか。消費者問題にくわしい石川直基弁護士に聞いた。
●寿司ネタの表示には業界ルールが必要
「寿司ネタについて、明らかに違う種類の魚を別の魚として表示するのは、虚偽であり違法性があるといえます。
そのほか、魚種を混同させるような表示については、実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示として景品表示法上の不当表示に該当する可能性があります」
――違法性があるのに、食い止められない?
「規制にあたっては、飲食店で提供される寿司ネタについての表示ルールが未整備な点が気がかりです」
――ネタの名前についてのルールがない?
「ルールはあります。比較的近いものとしては、JAS法の加工食品品質表示基準です。これは、原材料を一般名称で表示することを義務づけています。この一般名称については、水産庁が魚介類の名称のガイドラインを設定しています。
しかし、JAS法の基準は容器包装された加工食品に適用されるもので、飲食店で提供される商品には適用されません」
――やはり、基準がないとダメ?
「基準がないと、一般的でない名称の表示を許す余地があります。
たとえば『イクラ』は、日本ではサケの卵と考えられていますが、もともとのロシア語では『魚卵』という意味です。
だから、サケの卵とは限らない……こういった言い分が認められるかどうかは別にして、そう主張する余地が存在するということです」
――ということは、ルールは必要?
「そうですね。こうした言い訳を認めず不当な表示を排除するため、寿司ネタについても、消費者の信頼に足る表示ルールを整備する必要があるでしょう」
「そんな名前の魚を食べたいか?」と言われたら言葉に詰まるが、考えてみれば海外産の耳慣れない果物や野菜が珍重されるケースはある。ここは業界全体で意識を切り替えて、正面から「安くてうまい魚」として宣伝するのも手なのではないだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石川 直基(いしかわ・なおき)弁護士
平成10年弁護士登録。民事・商事・家事・行政・刑事各分野を取り扱うほか、雪印乳業食中毒事件、茶のしずく石鹸事件などの消費者製品被害弁護団に参加し、平成22年6月からは日弁連消費者問題対策委員会副委員長として食品安全・表示問題に取り組んでいる。

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Posted by takahashi