若年層、死因1位が「自殺」 先進国で日本のみ…深刻な事態

27日に政府が閣議決定した令和2年版自殺対策白書では、昨年の自殺者数は前年より671人少ない2万169人で、全世代的に減少する中、10代が唯一、前年より増加した。15~39歳の各年代の死因は自殺が最も多く、先進国では日本だけにみられる事態として、厚生労働省は「国際的にも深刻な状況」と危機感を抱く。コロナ禍の今夏には中高生の自殺が増えており、心理的な孤立化を防ぐ取り組みが求められる。

 ■「悩み解消の知識が足りない」

 「さらに分析しないといけない課題。はっきりしたことは言えない」。若年層の自殺者数が減らない要因を問われ、厚労省の担当者はこう言葉を濁した。

 昨年の10~19歳の自殺者は659人で、前年より60人増加。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺率も前年比0・3ポイント増の3・1で過去最悪を更新した。

 15~39歳の各年代の死因は自殺が最多で、がんなどの病気や不慮の事故を上回る。15~34歳で比較した世界保健機関(WHO)の資料によると、先進国で死因1位が自殺なのは日本だけで、韓国と並んで若年層の自殺が深刻化している。

 筑波大の太刀川(たちかわ)弘和教授(精神医学)は「メンタルヘルスのリテラシーに関する教育が不十分で、日ごろの悩みをどう解消するかなど自殺予防のための知識が足りない」と指摘する。

 ■外出自粛…若年層ほどストレス大

 厚労省と警察庁の統計では、今年は7月以降、3カ月連続で前年同月より自殺者数が増加。人気俳優らの自殺報道やコロナ禍の影響が大きいとみられる。

 一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」の分析では、同居人がいる女性と無職女性の自殺者が多く、家庭内暴力や育児の悩みなどがコロナ禍で深刻化している可能性がある。8月は中高生の自殺者数が過去5年間で最多で、特に女子高生が目立った。

 太刀川氏は「外出自粛などで周囲とのつながりが断たれたストレスは、女性や若年層ほど大きい」と分析。「誰かに相談することで悩みの糸口が見つかり、解決がもたらされる時期がくる」と強調する。

 自殺予防学会は26日、SNSを含めた自殺報道が社会に不安を与えるとして、むやみに情報発信を繰り返さないことなどを求める緊急提言を出した。