はやぶさ2プロジェクトで東北企業が技術力誇示 「町工場」歓喜、謎解明に期待

小惑星「りゅうぐう」の砂が入っているとみられる探査機「はやぶさ2」のカプセルが、日本に帰ってきた。太陽系の起源を探る一大プロジェクトには、東北のものづくり企業も多く関わり、高い技術力で貢献した。関係者は無事の帰還を喜び、今後の分析や宇宙探査に期待を寄せる。
 精密加工のティ・ディ・シー(宮城県利府町)は、砂を持ち帰るためのアルミ製容器の内側の研磨を手掛けた。採取した粒子が凹凸に入り込んだり、運搬中にこすれて容器の成分が混入したりするのを防ぐため、表面の凹凸が100万分の1ミリ以下という高い精度で磨き上げた。
 「感動で泣きそうになった」。6日未明、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のライブ配信で帰還を見届けたという赤羽優子社長。「重要なミッションに関われてうれしい。中身や容器がどうなっているのか知るのが楽しみ」と喜んだ。
 同社は試料の運搬や分析に使う容器も研磨。2024年打ち上げ予定の探査機「MMX」による火星の衛星探査計画にも携わる。赤羽社長は「子どもたちが宇宙飛行士と同じように、町工場の職人にも憧れてくれれば」と夢を描く。
 はやぶさ2は19年、りゅうぐうにクレーターを作り地下物質の採取も試みた。金属弾を打ち込むために爆発させた「衝突装置」は、産業用爆薬メーカー日本工機(東京)の白河製造所(福島県西郷村)を中心に、福島の数社が設計・製造を担当した。
 精密部品製造のタマテック(福島県鏡石町)は爆薬を詰める金属容器を製造した。重量制限から当初は軽いアルミを使ったが、真空環境で不具合が生じることが分かり、ステンレスに変更。経験のない厚さ1ミリの容器作りに挑んだ。
 吉田武副社長は「限界まで薄くする加工は難しかった。カプセルが無事戻ってほっとしている。原発事故からの復興を目指す県民に勇気を与えられた」と力を込めた。
 電子部品製造のトーキン(宮城県白石市)は、サマリウムコバルト磁石を使った磁気回路がイオンエンジンに採用され、宇宙空間の長旅を支えた。同社は「偉業の達成に貢献できたことは誇り。さらに長い間、宇宙の過酷な環境にさらされるが、正常稼働を続けてたくさんの成果をもたらしてほしい」とコメントした。