新型コロナ、10年後は普通の風邪 米大学研究チームが試算

新型コロナウイルス感染症は、通常の風邪を引き起こす既存の4種類のヒトコロナウイルスのように定着するまでに10年程度かかるとの試算を、米エモリー大などの研究チームがまとめた。論文が米科学誌サイエンスに掲載された。10年後には3~5歳程度でほとんどの人が感染し、高齢になって感染しても重症化を防ぐ免疫を得られるため、死亡率は低下し、インフルエンザを下回る可能性があるという。

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 風邪を引き起こすヒトコロナウイルスは世界中で定着しているが、症状は軽度で重大な問題となっていない。過去に問題化した重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)もコロナウイルスによる感染症だが、封じ込められるなどしたため世界的には拡大しなかった。

 今回、研究チームは、4種のヒトコロナウイルスと同様の特性を新型コロナも持つと仮定。若いうちに感染すると軽症で済み、再度感染しても重症化しにくいと考えた。現在、世界的に重症者が相次ぎ死者も増えているのは、高齢になってから初めて感染していることが主な要因という。

 その上で新型コロナについて、1人の感染者が免疫のない人の集団で平均何人に感染させるかを示す「基本再生産数」(R0)や、4種のコロナウイルスのデータを加味し、将来のシナリオを試算した。その結果、R0を2とした場合、3・4~5・1歳でほとんどの人が感染する状況になるのに10年かかることが明らかになった。小児は重症度が低いため、ワクチン接種も不要になる可能性があるという。

 一方、R0を4とすると2年半程度で小児期の感染症に移行・定着する。R0の値に関わらず、定着後は死亡率が劇的に低下し、季節性インフルエンザの約0・1%よりも低くなる可能性があるという。

 世界保健機関は新型コロナのR0を1・4~2・5と推定。それ以上とする報告もある。また、流行中の現時点で1人が何人にうつすかの感染拡大の指標は「実効再生産数」と呼ばれ、国内では1を上回る程度とみられている。

 研究チームは「MERSのように小児で重症度が高ければワクチンが必要だが、新型コロナはそうではない。ただし、社会的な距離を保つこととワクチンは、移行・定着までは重要な対策だ」としている。【渡辺諒】