コロナ禍で「あるある」、電車の迷惑ランキング

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、電車内における迷惑行為は従来と変わったのか。それとも同じなのか。

全国の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)が毎年発表している「駅と電車内の迷惑行為ランキング」の最新版(2020年度版)が昨年12月17日に発表された。2020年10~11月に民鉄協のホームページ上でアンケート調査が行われ、1908人から回答が得られた。

「座席の座り方」が今回も1位

2018年度版では、背負いリュックなどの「荷物の持ち方・置き方」が迷惑行為の1位となり、2019年度版では、「座席の座り方」が1位となった。

2020年度版では、2019年度版に続き2年連続で「座席の座り方」が1位となった。コロナの渦中においても迷惑行為の筆頭に挙がるのは意外な気もするが、「それだけ、多くの人が重要な問題と考えていることの表れ」と、民鉄協・総務広報部次長の日高義文氏は説明する。

回答内容を詳細に見ると、座席の座り方のうち、最も迷惑に感じる行為として「座席を詰めて座らない」「座りながら足を伸ばす・組む」といった回答が多いが、「お年寄りや体の不自由な方、妊婦の方等に席を譲らない」という回答が2019年度から倍増したのが気になる。コロナ禍で鉄道利用が減り、以前よりも座席には座りやすくなっているはずだが、かえって、席を譲らない行為が目立つようになったのだろうか。

ただ、2~4位については、「新型コロナの感染拡大という状況がある程度反映している」と日高氏は言う。どんな結果なのか。

2位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり」で、昨年の5位から順位を3つ上げた。昨年を除けば、2010~2018年までランキングの1位だった。電車内での騒々しい会話は非常に気になるが、コロナ禍においてはたとえマスク越しであっても、電車内の会話は気になってしまう。この項目が2020年に3ランクも上がったのは納得だ。

3位は「乗降時のマナー」で、昨年の2位から順位を1つ下げた。4位は「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」。昨年の6位から順位を2つ上げた。もっと上位に来てもいいはずだが、4位にとどまっているのは、コロナ禍において電車内でマスクをせずに咳やくしゃみをする人が少ないということかもしれない。

5位は「スマートフォン等の使い方」で、昨年の4位から順位を1つ下げた。6位は「荷物の持ち方・置き方」。昨年の3位から順位を3つ下げた。背負いリュックが迷惑行為になるということが鉄道利用者の間で認知されてきたのか。あるいは、コロナ関連の項目が上位に連なったことで相対的に順位が下がったのだろうか。日高氏は「混雑が減って、背負いリュックが気にならなくなってきたのではないか」という見方を示した。

マスク未着用は67.5%が「気になる」

7位以下は昨年とほとんど順位の変動がない。特筆すべきは2020年度版から「エスカレーターのマナー」という項目が新たに加わったことだ。エスカレーターのマナーについては、以前からJRや大手私鉄各社が啓蒙活動に取り組んでおり、今回設問に追加されたというのは遅すぎるくらいだ。ただ、結果は19項目中16位。この項目よりも下にあるのは、スマホ全盛の時代ではあまり見られない「混雑した車内で新聞・雑誌を読む」、「その他」「特にない」だけ。エスカレーターのマナーは旬の話題ではあるが、迷惑と考える人は少ないようだ。

なお、今回は、例年どおりのアンケート調査とは別に「新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、電車利用時に気になること」という調査も行われた。この調査では「気になること」として、「マスクの未着用者」を挙げた人が全体の67.5%に達した。まさに現在の風潮を表したものといえる。続いて「周囲の人との会話」が53.2%、「隣の人との距離」が48.6%、「車内の換気」が41.8%と続いた。これらの設問を通常のアンケート調査に組み入れれば、アンケート結果の上位を占めることは確実だが、コロナという特殊な状況を踏まえて、あえて別立ての設問にしたという。

駅と電車の迷惑行為ランキングは今年も実施される予定だ。コロナが収束し、いつもの電車利用のスタイルが戻ったときには、はたしてどのような行為が迷惑行為のトップに立っているのだろうか。

東洋経済オンライン