「韓国推し」を続ける日テレに集まる不信感…フジ炎上の二の舞となるリスクも? 若年層対策の結果…ではあるが

「また視聴者無視のゴリ押しか」の声

23日朝に放送された『スッキリ』(日本テレビ系)に、現在ドラマ『君と世界が終わる日に』に出演中の韓国人タレント、キム・ジェヒョンが生出演した。

ロックバンド「N.Flying」でドラムも担当するキム・ジェヒョン/photo by gettyimages

キム・ジェヒョンが演じるのは、引っ越し業者のアルバイトで心優しい青年、ユン・ミンジュン。主人公の間宮響(竹内涼真)と友情を育むほか、韓国の国技・テコンドーを駆使してゾンビを撃退し、仲間を守るカッコイイアクションシーンもあるなど、アイドル俳優のような役どころだ。

しかし、ドラマを見ていない人にとっては、「この人誰?」「何で朝から韓国人?」という状態。そもそも番宣は主演クラスでも2人で出演することが多いのに、知らない韓国人が単独だったこと、「ドラマ初出演、光る演技力」などとベタボメだったこと、ふだんより多くの人々が視聴する祝日の生出演だったことなども重なって、ツイッターやYahoo!ニュースのコメント欄には批判の声が続出していた。

「また視聴者無視の韓国ゴリ押しか」
「韓国人のタレントばかり出すな。しかも祝日に。気分悪い」
「この番組、本当に韓国人が絡んでいるのかな」

「また」「ばかり」「本当に」というフレーズが飛び交ってしまうのも無理はない。『スッキリ』は昨年から韓国をフィーチャーし続けて、その度に批判の声が飛び交っていた。

これまでもネットをザワつかせてきた日テレ

その筆頭は、Huluで配信されていた『Nizi Project』だった。何度となく長時間を使ってフィーチャーしていたが、もともと韓国の芸能事務所に所属することが決まっていたグループのオーディションであり、課題曲はほとんどがK-POP。合格者たちが決まってからも、結成されたNiziUは出演を続け、プロデューサーのJ.Y.Parkも生出演したほか歌のパフォーマンスを披露した。

『スッキリ』ではもはやお馴染みとなったJ.Y.Park/photo by gettyimages

2021年になっても、1月12日に東方神起、2月2日にMAMAMOOが韓国からリモート生出演。昨年から韓国からのリモート生出演は続いているため、もはや制作サイドにとっては平常運転のような感覚なのかもしれない。

そしてもう1つ、ネット上が荒れたのが昨年9月21日の放送。同番組は、「若者の情報発信地だった原宿はコロナ禍の影響で客が減って竹下通りは閉店が相次ぎ、一方で韓国カルチャーが人気の新大久保は減少の幅が少ない」と伝えた。

さらに、「相次ぐ閉店…原宿でなにが?」「新大久保 人が集まるワケは?」というテロップの表示、専門家による「若者の情報発信地は新大久保が中心になってきた」というコメントがあり、MCの加藤浩次はこれにおおむね同調していたのだ。

しかし、新大久保の人出を映した写真にねつ造疑惑が降りかかる。人出の違いを見せるために昨年9月と一昨年9月の写真を並べて映していたのだが、昨年9月は半袖の人が大半なのに対して一昨年9月にはダウンジャケットを着ている人がいた。

その他にも、新大久保は画面が人で埋まりやすい近距離撮影で、原宿は人の少なさが目につきやすい遠距離撮影であることなども含め、ネット上は大荒れ。「『スッキリ』は韓国推し」というイメージが形成されてしまった。

ただ韓国推しは、もはや『スッキリ』だけでなく、日本テレビ全般に言えるものとなりつつある。それを知る人々にとっては、目に余るものがあり、だからこそ今回も批判の声が挙がってしまったのだ。

『ボンビーガール』で続く韓国推し

デビュー前のNiziUを『今夜くらべてみました』『メレンゲの気持ち』『ヒルナンデス!』などのバラエティで次々にフィーチャーしていたのは、その反響の大きさからそれなりに理解できる。

しかし、『幸せ!ボンビーガール』での韓国推しは物議を醸した。まず昨年11月10日に新企画として、「韓国に移住、半地下に住む日本人ボンビーガール」をスタート。映画『パラサイト 半地下の家族』、BTSの『Dynamite』のヒットや、IZ*ONE、NiziUのように韓国で夢を叶えようとする女性が増えていることを挙げた上で、「韓国の半地下物件に住んでいる日本人女性に密着する」というコーナーだった。

次週の17日にも密着映像は放送され、さらにジェジュンが「韓国移住する日本人が増えている」という前提のもとに現地の格安物件を紹介。次々週の24日にも、「世間はまさに第4次韓流ブームの真っただ中」と掲げつつ、半地下で暮らす別の女性に密着した。

さらに年をまたいだ1月26日、今度は韓国人の恋人に会うために移住する女性をフィーチャー。留学ビザの申請、賃貸物件の契約、恋人との再会などの様子が映し出された。

これらが放送されるたびに、「日韓関係が最悪で、コロナ禍の中、なぜ韓国移住を勧めるのか」「移住できる女性はボンビーガールとは言えない」などと疑問の声が続出。その他でも日本テレビは、昨年11月26日に放送された大型音楽特番『ベストアーティスト2020』にIZ*ONE、ジェジュン、TOMORROW X TOGETHER、NiziU、BTSの5組を出演させたり、今年1月8日に『金曜ロードSHOW!』で映画『パラサイト 半地下の家族』を放送したりなど、「韓国推し」と言われる機会が続いている。

放送中のドラマ『君と世界が終わる日に』に話を戻すと、キム・ジェヒョン演じるユン・ミンジュンの姉、ユン・ジアン役で韓国籍女優の玄理(ヒョンリ)も出演。ジアンは「日韓新興感染症対策機構」の研究者であるほか、2人が韓国語を話すシーンも散見される。

加えて、YouTubeの「日テレドラマ公式チャンネル」に目を移すと、ジェヒョンが劇中のセリフで韓国語を教える「きみセカで覚える ジェヒョンの韓国語講座!」が現在まで5回に渡って配信されていた。言語まで教えているのだから、さすがに「日テレは韓国推し」と言われても仕方がないだろう。

他局に先がけた日テレの若年層対策

では、なぜ日本テレビはここまで「韓国推し」なのか。

テレビ業界の事情に詳しい人なら真っ先に、「コアターゲット」というフレーズが頭をよぎるはずだ。

日テレの入る日本テレビタワー/photo by iStock

日本テレビと言えば、長きに渡って視聴率争いのトップをキープしているが、決して「三冠王」という数字上の勲章だけを追い求めてきたわけではない。どの局よりも早く、スポンサー受けがよく広告収入につながりやすい13~49歳を「コアターゲット」と呼んで、この層に向けた番組制作を進めてきた実績がある。

昨春に視聴率調査がリニューアルされて、「どんな層がどれだけ見ているのか」の詳細がわかる個人視聴率が全国に広がったことで、他局も日テレの動きに追随して13~49歳に向けた番組制作を開始。ただ、早くから取り組んでいた日テレの意識はより高く、その表れの1つが若年層に人気があり、ネットの動きも活発で視聴率につながりやすい韓国推しだった。

たとえば、「韓国推し」の中核となっている『スッキリ』は、世帯視聴率と個人視聴率の全体では、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に歯が立たないものの、営業面では決して負けているわけではないという。事実、『羽鳥慎一モーニングショー』は高齢層向けのCMが目立つ一方、若年層の支持をつかんでいる『スッキリ』は多彩なCMが放送されている。

その意味で、視聴率が低迷していたほか、コロナ禍で目玉コーナーだった「上京ガール」のロケが難しくなっていた『幸せ!ボンビーガール』が「思い切った韓国推しで若年層を狙おう」という戦略は合点がいく。

フジテレビは韓国推しで首位転落

日本テレビは昨年10~12月、プライム・深夜帯の番組で放送と同時のネット配信にトライしていた。民放唯一の挑戦である上に、しかも配信先は自局系の「日テレ無料TADA!」や「Hulu」ではなく民放各局共通のプラットフォーム「TVer」。これはネット広告の収益化を進めるものであるとともに、若年層を中心にしたネットユーザーを取り込む戦略とも言えるだろう。

Huluを絡めたコンテンツ全般の収益化も含めて、日テレはどの局よりも貪欲にトライアルをしている。しかし、韓国エンタメはジャニーズアイドルと並んでファン以外のアンチ比率が高いことで知られ、拒絶反応を示す人も少なくない諸刃の剣。「熱心なファンがいる」のは間違いないが日本人全体の多数派ではないだけに、フィーチャーしすぎると多くの敵を作ってしまうリスクがあるジャンルだ。

それだけに、編成を手がける他局のテレビマンは、「日テレがここまでやるのは、コロナ禍で余裕がないからかな」と推察していた。日本テレビに限らず、大幅な広告収入減に悩まされるコロナ禍の今は、なりふり構ってはいられない時期であることは間違いない。

2011年、フジテレビは「嫌韓」デモに見舞われた/photo by gettyimages

かつて視聴率王者だったフジテレビが2011年、韓国推しへの批判をきっかけにその座から転落し、今なお苦しみ、もがき続けている。

当時より日韓関係が悪化している上に、国難と言えるコロナ禍の今、視聴者を甘く見てやりすぎてしまうと同じ轍を踏みかねないのではないか。ネット上には時折、「フジでやったようなデモを日テレにもやりませんか?」という物騒な声も見られるだけに、日本テレビとしては世間の風向きを見ながら慎重に推していくべきだろう。