「コロナ世代というレッテルが悲しい」 看護師の卵たち、現場実習できないまま卒業する不安

医療現場で実習が出来ないもどかしさ

学内で実習する看護学生たち

 「コロナ世代と呼ばれるのでは」。そんな不安の声もありました。新型コロナの影響で、看護学生に必要な医療現場での実習が大幅に減少しました。貴重な現場経験の場が奪われた、“看護師の卵たち”の思いとは。  岐阜県大垣市にある、岐阜協立大学・看護学部。  ベッドに寝る女性に優しく語りかける学生。患者役は教員です。    この日、教室に設けられた模擬病室で、患者とのコミュニケーションを学ぶ実習が行われていました。しかし本来は、実際の医療機関に出て行うものです。  「実際に病院に行って学んだり、患者相手にケアしたりすることができなかった。この時期に学ぶべきことがちゃんと学べているのかなという不安がある」(岐阜協立大学1年)  新型コロナの感染拡大や医療現場のひっ迫により、病院などで行なう実習は、学内の模擬実習に変更されました。

「コロナ世代」というレッテルを貼られるのが悲しい

日本看護学校協議会共済会が行ったアンケート

 「学内で知識はつくかもしれないが、技術はそうと言えない。就職した時に“コロナ世代”というレッテルを貼られてしまう不安や悲しみを感じている」(岐阜協立大学2年 )  現場での実習の必要性について、担当の教員は。  「実習は机の上で学んだ知識や技術、患者に対する態度を統合できる場。それを総合的に患者にどう提供するかを考えられる場なので、その場がないということは、非常に残念だったと思う」(岐阜協立大学看護学部 馬場貞子准教授)  去年、日本看護学校協議会共済会が行ったアンケートによると、「新型コロナの影響で、医療機関から学生の実習の受け入れを断られたことがある」と答えた学校は96.6%に上りました。

コロナに感染しても看護師の国家試験は追試験は無し

学内で実習する看護学生たち

 2月14日に行われた、看護師の国家試験。  厚生労働省によると、出願者数は6万6530人で、前の年より280人増えました。  万が一、新型コロナに感染しても追試験はなし。学生たちは一発勝負の試験に臨みました。  国家試験を終え、今月26日の合格発表を待つ学生たち。この春からは、看護師としてひっ迫する医療現場に立つことになります。  「不安の方が大きいが、現場で使える知識を3年生に上がってからたくさん教えていただいた。それを生かせる機会が来ると思うと楽しみでもある」(名古屋医専実践看護学科3年)

「この時期に看護師になるからこそ現場で活躍する」 看護師の卵の熱意

名古屋医専実践看護学科3年 柳原佑香さん

 この看護学校では、去年4月に出された緊急事態宣言中、学外での実習はすべて中止に。  実習期間を短くするなどして受け入れ先を確保したほか、学内での実習のために、患者を模したシミュレーターを新たに導入しました。  「実習が短い中でも、患者に接しられない分、学生同士で話し合いをするという部分では、この1年だから学べたことがたくさんあった」(名古屋医専実践看護学科3年)  「4月から看護師になる。患者を守っていけるかという不安がある。この時期に看護師になるからこそ、感染対策とか学んできたことを自信に変えて、現場で活躍したい」(名古屋医専実践看護学科3年)  コロナ禍でも消えない、看護学生の熱意。彼女たちの使命感が、これからの医療現場を支えていきます。

厚労省は通知

 看護学生の病院や高齢者施設への実習について、厚生労働省は去年6月に「実習は知識・技術を看護実践の場面で適用し、看護の理論と実践を結びつけて理解する能力を養う場として重要」としたうえで、「実習が困難な場合は、学内でシミュレーション機器を使った演習や学生同士の実技演習を実施するなどして、目標が達成されるように」とする通知を出しています。  各学校では、病院の受け入れ制限の中、どう学内で実習するかを悩みながらも何とか実習時間を確保したというのが実情です。