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「会食恐怖症」給食の完食指導が引き金に

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「会食恐怖症」をご存じですか。人前での食事に恐怖と不安を感じ、吐き気などの体調不良を引き起こす社交不安症のこと。学校給食や部活動での「完食指導」が、発症の引き金となるケースが多いという。当事者を支援する団体は「子どもに無理やり食べさせないで」と訴えている。 【図解】やったらいいこと、いけないこと

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「トイレで食べたこともある」

 「食物アレルギーがないのに残しちゃ駄目。もったいないでしょ」。担任に給食を完食するよう求められたのは小学3年の時。広島県の30代派遣社員女性は、今も担任の怖い顔を思い出し、食べ物がのみ込めなくなることがあるという。  当時は、食が細くて時間内に食べ終えられず、昼休みも教室に残された。給食が苦痛だった。食べきれなかったパンを引き出しに隠したことがばれて、同級生の前でひどく怒られたこともある。「みんなできることが私にはできない」と自分を責め、自己肯定感が低いまま成長した。  会食恐怖症の兆候が現れたのは社会人になった頃。新生活のストレスも重なったのかもしれない。誰かと食事をすると相手の視線が気になり、手が震える。親しい友人とならお茶はできるが、派遣先の同僚との食事は避けてきた。飲み会は断り、昼食はお弁当を持参して人目に付かないところに移動。「トイレで食べたこともある。無理な場合は食事を抜いています」

つらいのは「自分だけじゃない」

 岡山市の男性(30)は、大学時代に異変が起きた。同級生の女の子との初デートで食事が喉を通らない。冷や汗が出て、吐き気がした。3年生の頃にはさらに悪化。ゼミの教授から「食べ物を残すなんてけしからん」と、飲み会で食べ残しがあるたびに説教された。その後は人が多い場所では1人でも食べられなくなった。  男性は、174センチ52キロで線が細い。幼い頃から小食だったが、家や学校では「男の子なんだからしっかり食べなさい」「残すと作った人に申しわけないでしょ」と言われ、無理して食べていた。「胃袋の大きさはそれぞれなのに、男はよく食べるべきだのような押し付けもしんどかった」と振り返る。  数年前から当事者の支援を行う一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会(東京)の交流会に参加し、徐々に症状が改善している。体験を打ち明け合い「つらかったのは自分だけじゃない。無理して食べなくてもいい」と思えたことで楽になったという。  同協会の代表、山口健太さんは「以前から症状を訴える人は少なくないのに認知度が低い」と話す。山口さんも症状に苦しんだ一人。10年前、高校の部活動での食事トレーニングがもとで発症した。合宿中は朝2合、昼2合、夜3合の米を食べるのがノルマ。監督が見張っている重圧で吐き気と動悸(どうき)がしたという。「それが偏食、わがままなんでしょうか」と疑問を投げ掛ける。

「発症のきっかけに給食での完食指導が関わっている」―。山口さんたちが症状のある642人を対象に行った2019年のアンケートでは、50・3%がこう回答した。結果を受けて3月、教員向けの給食指導のノウハウをまとめ、同協会のホームページで公開。無理やり食べさせたり、完食を強要したりしないよう呼び掛けている。  山口さんは「『食は楽しいもの』『食べることが好き』という感情がベースにあれば、食材を大切にする気持ちは自然に芽生える」と指摘。学校や家では食にポジティブになれるような教育が必要と訴える。食品ロスが問題になる中、「食べ残しは悪」の価値観が強まるのも気掛かりという。  学校の給食指導はどうなっているのか。広島市内の小中学校では「完食指導はしていない」(市教委健康教育課)という。11年から13年ごろまで「残食ゼロ」の取り組みをしていたが、同課は「あくまで食育の意識を高める目的。食べ残しがいけないと押し付けることはしていない」と回答。食が細い子が多い小学校低学年の児童には、「1年前と比べてどれだけ食べられるようになったか」を評価するようにしているという。  児童・思春期精神科などを専門とするライフサポートクリニック広島(広島市東区)の新宅恵子院長は、「食に関する不安は、過食や拒食と同様、複合的な要因によるもの」とした上で「完食が目的化すると、大きな負担になる」と指摘する。「栄養バランスはもちろん大切ですが、食べられない子の事情を理解し、心に寄り添う指導が必要」と話した。

中国新聞社