ネットスーパー拡大へ大手本腰…専用の物流拠点整備、アマゾンに対抗

 国内小売り大手がネットスーパー拡大に本腰を入れ始めた。セブン&アイ・ホールディングスは、首都圏で人工知能(AI)やロボットを活用した初の大型物流拠点を2か所整備する。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛で、ネットでの買い物需要が高まっており、インターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムに対抗する。 【写真】サバ缶ではなく「サヴァ缶」、製造1000万缶を突破

 セブン&アイは、千葉県と神奈川県の2か所に物流拠点を設置する。すでに用地を確保し、2025年までの稼働を目指す。客がスマートフォンで注文すると、物流拠点でロボットが自動で商品を選んで梱包(こんぽう)する。配送に当たっては、AIでムダのないルートを調べる。

 セブン&アイは傘下のイトーヨーカ堂が01年にネットスーパーを始め、3月末時点で8割にあたる約110店に広がっている。ただ、現在は従業員が実店舗で商品を選び、発送も人手頼みのところがほとんどだ。注文が集中する休日や夕方は、客の要望に十分に応えられなかった。専用の物流拠点を整え、最新技術を使って効率化を図り、早く商品が届けられるようにする。

 競合各社も取り組みを強化している。イオンは英ネットスーパー大手と提携し、千葉市内に大型自動倉庫を建設中で、23年に稼働予定だ。西友は楽天と手を組み、千葉県と横浜市で大型倉庫を稼働させているほか、一部地域でドローンやロボットを使った無人配送の試行も始めた。

 コロナ禍は、ネットスーパーに追い風となった。楽天西友ネットスーパーの今年1~3月の注文総額は、前年同期に比べ3割増えた。

 国内勢が対応を強化している背景には、アマゾンの脅威がある。従来の日用品や家電、書籍に加え、19年にはライフコーポレーションと提携して生鮮食品などの取り扱いも有料会員向けに始め、スーパーの本業でも競合するようになった。

 米国では、アマゾンに押されがちだった小売り大手のウォルマートが、デジタル戦略を加速させて対抗している例もある。

 流通経済研究所の鈴木雄高主任研究員は「デジタル対応をしなければ競り負ける。取り扱う商品の魅力を高めるなど、差別化も重要だ」と話している。