「だましても売る」、ウソの体験談「アフィリエイト」で続々[虚実のはざま]

〈専門家も驚く効果〉

 そんなネット上の宣伝文句を見てクリックすると、匿名の女性の体験談がページ上に現れた。

 顔のシミの悩みが、ある美容クリームとの出会いで解消する――といった話が漫画を交えて語られ、実際にシミが薄くなっていく動画が再生される。

 その後、次々に紹介されるのがSNSでの反響だ。

 〈塗っただけで本当に激変しました〉。ツイッターのような投稿画面が貼り付けられ、使用する前後を比べた顔写真が並ぶ。表示されたリツイート(転載)数は2260回、「いいね」も1780件に上る。

 しかし、読売新聞が調べた結果、内容は虚偽で、投稿も存在しなかった。画面はでっち上げで、顔の「証拠写真」は、4年前から東南アジアのサイトに載っている無関係のものだった。

 いったい誰が作っているのか。どこにも記されていないが、購入ボタンがあり、東京都内の商品の製造会社のサイトに接続されるようになっていた。会社は取材に対し、こう説明した。

 「弊社が作った広告ではなく、把握していない」

 美容品や健康食品を中心に同種のページはネット上にあふれており、誰でも目に触れる可能性がある。

 誇大広告などの監視サービスを展開するIT企業「デトリタス」(東京)社長の土橋一夫さんは「素人感を演出するためのフェイク(偽)体験談の可能性が高い」と注意を促す。

 テレビ番組の放送シーンのような画面を載せたページも増えている。医師らしき人物が出演し、商品を推奨している字幕まで表示されている巧妙な作りだが、存在しない番組だ。

 「何か月使っても効果はなく、だまされた思いだ」。東京の50代の女性は、同じようなページを見て、美白化粧品を定期購入した。

 「特別価格終了まで」と称し、残り時間を示したカウントダウンタイマーが付いており、ゼロになると価格が上昇すると記されていた。「在庫 残り○個」との表示もあり、女性は「早く買わないといけないと焦った」と悔やむ。

 読売新聞は、タイマーがある同種の10のページを無作為に選び、ゼロになるまで調べた。いずれも価格などに全く変化はなかった。

 関係者によると、発信元の多くは、商品の販売会社ではない。「アフィリエイト」と呼ばれるネットビジネスをしている個人や小規模業者だという。

 このビジネスの特徴は、自分が作成したサイトやSNS経由で商品が売れれば、実績に応じた金額が入る「成果報酬型」だ。

 誰でもネット上で「販売代理店」になれるような仕組みで、数年前から副業で始める人も増加。2019年度の市場規模は3000億円にも上るという。

 しかし、こうした発信者の多くは匿名で、販売元から金を受け取っていることを明かす必要もない。

 「だましてでも売ろうという人が増えてきた」と、デジタル広告の会社を経営する加藤公一レオさんは実情を明かす。

 通常の広告の場合、内容に問題があれば販売会社が責任を問われる。

 これに対しアフィリエイトでは、仲介会社を通じて請け負う個人は数千人にも上り、誰が何を書いているのか、販売会社が把握していないことも多いという。

 「一部の販売元や仲介会社は『知らぬ存ぜぬ』で黙認している」。業界の多くの関係者は口をそろえる。

 誰も責任を問われないまま、報酬目当てのウソが量産される。その構図にコロナ禍も暗い影を落とす。

 初心者でも月収30万円――。ネット上には、アフィリエイトの誘いの言葉が無数に並ぶ。ノウハウを販売する男性は打ち明ける。

 「『コロナで給料が減った』という人から問い合わせが相次いでいる。新規参入は増え続けるだろう」