コンセントに挿すと通信できる「PLC」、再び注目の理由とは? 電波法改正で新たな用途

PLCという通信装置をご存知だろうか? 正式名称は「Power Line Communication」で、日本語では「電力線搬送通信」と呼ばれる。カンタンにいうと、LANケーブルを新たに敷設することなく、今あるコンセントの電力線を通して通信環境が構築できるというものだ。PLCのアダプターを2カ所のコンセントに接続することでデータ通信が行なえる。

古くからインターネットに携わってきた方なら「昔あったけど消えたよね?」と思うかも知れない。確かに当初のPLCは通信速度が遅く互換性の問題もあった上に、Wi-Fi(無線LAN)が登場しスマホの普及とともにWi-Fiも急速に普及。それに押される形でPLCはほとんど姿を見ることがなくなった。

しかし2017年ごろからパナソニックが旗振り役となり、新世代の「HD-PLCTM※1」が見直され始めている。その理由のひとつが実は“Wi-Fiの普及”にある。

※1 パナソニックが提唱する高速電力線通信方式の名称で、日本およびその他の国での登録商標もしくは商標になっている。

スマホとあわせたWi-Fiの普及が著しく、PLCはその姿をほとんど見なくなったが、IoT家電などのデバイスの登場で便利さが見直されてきた(パナソニックのHD-PLC資料より)

Wi-Fiは年々高速化が進んで便利になった反面、Wi-Fiの電波は部屋の壁や各階の天井と床、場合によってはドア1枚でさえ遮断され、電波のムラが多くなっている。

その一方で、ネットにつながって便利になるIoT家電のように、家のどこでも通信できる需要が大きく伸びてきている。Wi-Fiだと壁やドアで極端に電波が弱くなってしまうが、コンセントを使うHD-PLCならドアや各階を越えるのは容易。PLCアダプターをコンセントに差し込むだけでLANの完成だ。※2

必要であればHD-PLCに無線LANのアクセスポイントをつなぐこともできるので、アクセスポイント同士の連携にも使える。Wi-Fiの普及で瀕死になったPLCが、今度はWi-Fiを助けることになる。

※2 分電盤に中継器用のPLCアダプターが必要となる場合がある

PLCは電力線の屋内配線にデータを乗せて、各部屋のコンセント間でPLCアダプターを介してデータ通信をするもの。LANケーブルを敷設する必要がなく簡単にLANを構築できる。ただし通信速度が20Mbpsと低速(出典:「HD-PLCアライアンス」ホームページ)

パナソニックのPLCアダプター。LANのデータ通信をコンセントの電力線に乗せ換えるインターチェンジ(モデム)のような役割をする

Wi-Fiより障害物に強く、有線より安くLANを構築できるHD-PLC

動画配信やオンラインゲームの普及により、高速で遅延の少ないデータ通信ばかりが求められているように見える。しかしインターネットに接続できるIoT家電やさまざまなモニタリング、クラウドサービスとデバイスの連携(気温情報からエアコンを自動制御する)などでは通信速度はそれほど必要なく、少ないデータを常時やり取りする通信も増加している。

スマホのアプリも同様で、予約サイトの利用や、LINEやメールでのメッセージ交換などは高速回線の必要性はない。このようにLANを行き交うデータは、瞬間的に大量のデータが流れる高速通信と、少量のデータが一日中ずっと流れる通信が混在している。

多様化するネットの利用方法で、浮上したのがWi-Fi過疎地問題だ。身近なところでは、こんな例もある。

  • 玄関のオートロックと居間の無線LANの電波が弱くてロック解除できない! スマホからオートロックが見えない
  • ロボット掃除機を2階に持っていくとマップが表示されない! 遠隔操作できない

前述の通りWi-Fiの高速化に伴って過疎地化が広がっている。スマホならWi-Fiのある居間に移動すれば使えるが、子供部屋のIoTエアコン、キッチンのIoT調理家電はそう簡単には動かせない。

自宅程度ならまだいいが、工場や事務所、果ては古い学校などの公共施設やビルなどは、電波が通り抜けられないコンクリートや鉄板などがあり、Wi-Fi過疎地が実は広いケースもある。コレを解消するには各部屋、各階をブチ抜いて有線LAN工事をして、そこにWi-Fiのアクセスポイントを設けるなどすればいい。しかしこうなるとリフォームどころではなく大工事となり、敷設費用もそれなりにかかる。

従来の配線方法

HD-PLCを使えば、Wi-Fiの電波が遮断される壁をHD-PLCでバイパスする使い方ができる

一方、穴あけ工事ができない躯体などで短工期、低予算でLANを組めるのがHD-PLCだ。どんな建物でも各階、各部屋には必ずコンセントがある。そしてコンセントは家屋や事務所、ビルや施設に張り巡らされているので、コンセントにPLCアダプターを差し込むだけで有線LANが構築できる。工事費用一切なしで、穴あけも一切不要だ。

Wi-Fi過疎地になっている部屋は、PLCアダプターをコンセントに差しWi-Fiのアクセスポイントを設置すればいいだろう。HD-PLCの親機はルーターに接続すれば子機から外部のインターネット接続が可能になる。

新世代のHD-PLCは最大20Mbps(TPCの場合。UDPの場合は30Mbps)程度の通信が可能で、親機の下に何台かの子機をつなぎ、各HD-PLC間での通信が可能。例えば複数階ある建物の場合、各階をHD-PLCでつなぎフロア内はWi-Fiのアクセスポイントを設置すれば、手軽に全館をカバーするWi-Fiネットワークが構築できる。

またHD-PLCは子機間でデータをバケツリレーする「マルチホップ」を搭載しているので遠距離通信が可能だ。実際に数kmオーダーのLAN構築の施工事例もある。

マルチホップでデータを中継することで長距離通信が可能。有線LANケーブルは最長100mまでだが、HD-PLCは最長200mごとに中継するだけでいい。最長で中継10点3.8kmのLAN構築の実績あり(出典:「パナソニック HD-PLC資料」より)

通信速度20Mbpsをシェアすることになるので、後述するようなセグメント分けをしたり、大量のデータ通信とは回線を分けたりするなどの工夫は必要だ。ただ、2年後にはさらに進化した第4世代HD-PLCも見えていて倍速化、またテレビなどの同軸アンテナ線を使ったGbps通信も可能になる予定だ。

電波法改正による「利用禁止場所」解禁で起きる変化とは?

家庭内にあるコンセントは、すべて分電盤に集まりつながっているだけでなく、分電盤を経由して電柱に、さらにはお隣さんやご近所一帯ともつながっている。そこにHD-PLCのデータ通信を乗せることを考慮して、日本では近隣の機器に悪影響を与えないよう厳しい制限がかけられている。もちろんメーカーでは悪影響を及ぼさないような設計にしており、テストも繰り返されているが、電波法は万が一あるいはそれ以上に慎重に制限しているというのが実情だ。

これまでは「単相の100Vと200V」での利用のみが認められていた。つまり、一般家庭や事務所で使われている壁コンセントと、エアコンやIHクッキングヒーターの200Vコンセントのみ。これまでのHD-PLCは、電波法により利用範囲が一般家庭やオフィスに制限されていたというわけだ。また2011年の電波法改正では、屋外での利用も緩和され、庭や屋外の作業場、グラウンドや校庭(同一敷地内で飛び地では利用不可)などでも使えるようになった。そして2021年6月30日、さらに電波法の省令改正が行なわれた。

【解禁1:三相電源での利用OKに!】
一般家庭にはあまり関係ないが、産業界を大きく変えそうなのが三相電源での利用が可能になった点。三相電源は主にモーターなどを使う工作機械を持つ工場用の電源。工作機械のデジタル化が進む一方で「データのやり取りはSDカードやパソコンを持って歩いて」なんてのは“工場あるある話”なのだ。なぜなら工場内で発生するさまざまなノイズのほか、コンクリや鉄で作られた施設、振動や薬品、油や熱などで無線LANの導入はおろか、有線LANでも通信が難しい場合があったのだ。

でもこれらの工場にはだいたい壁のボックスまで三相電源が引かれているため、そこにHD-PLCを接続して生産現場にLANを構築できるというわけだ。

三相3線の電源を使う場合は、200V用のHD-PLC(屋内・屋外)用を用いる。R、S、T相のいずれか2相にHD-PLCを接続。電波法上は600V以下の三相3線が利用可能になるが、パナソニックのHD-PLCは低圧の200V三相に対応(出典:「パナソニック HD-PLC資料」より)

【解禁2:鋼船での利用がOKに!】
カーフェリーなどに乗っていると「超」ヒマなのでスマホでも見ようかと思うと「アンテナ立たねー!」なんてのはありがち。国内便なら沿岸部を通るのでデッキに出ると陸の電波が取れるものの、髪も体も潮風でベトベトに! 船舶は鉄や軽金属でできているので、艦内に入ると電波が遮断されてしまうのだ。極々たまーに船内でもスマホが使えるエリアがあるものの、狭いラウンジにみんなが集まったり、中には船舶から衛星回線を使ってネットワーク接続するので、高い利用料が必要になったりするのが船のスマホ事情なのだ。客船でもこんな状態なので、貨物船や大型漁船の乗組員さんが、スマホを持っていてもただの文鎮にしか使えないなんてこともあるようだ。

そんな鋼船のネット難民を救ってくれるのがHD-PLCと今回の法改正。艦内はすべて鉄板で仕切られているので、コンセントを経由してHD-PLCでLANを構築。デッキには陸と通信できる装置や衛星回線(これなら洋上でも通信可能)をつなげば、HD動画とまではいかなくても、家族とLINEやメールができるようになる。

なお、残念ながらFRP(ファイバー樹脂)製の船舶ではHD-PLCを利用できない。そもそも沿岸部を航行するなら、船内でも陸の電波が取れるので必要性が少ないともいえる。

画像の左側が電波法改正前に起きていた課題、右側が改正後にできるようになった内容。船舶は沿岸部ではデッキに出れば陸の電波を捉えることはできるが、艦内では船体が電波を遮断してしまう。そこで艦内の電力線でHD-PLCのLANを構築し、それぞれのアダプターにWi-Fiのアクセスポイントを設けることで艦内にもWi-Fi環境が整う。デッキのアダプターにはキャリアの移動体データ通信回線や洋上用の衛星通信回線を設ければ外部との接続も可能

地下駐車場の利用情報や、トンネル内のモニタリングにも

ここからは、HD-PLCが実際に活躍している事例の舞台ウラを見ていきたい。

ちょっとした空き地にある時間貸の駐車場。屋外だと1台1台にストッパーがあり、利用状況をリアルタイムでネットで調べられる。でもいまだにバー式や有人なのが地下駐車場だ。大規模な駐車場ならバー式の方が合理的な場合もあるが、1台1台を管理できないストッパー式にできない理由がある。それは地下に電波が届かないから。つまり駐車場運営会社の管理システムと接続できないのだ。最近では電気自動車用の充電器などもあるが、外部の管理システムと通信できないことから地下に敷設されている充電器は少ない。

こんなときは地下のコンセントにHD-PLCを設置してネットワークを組み、さまざまなモニタリングや管理を行なうことで、きめ細かなサービスが可能になる。

らせん状のスロープで電波が届かず、コンクリに穴を開けて配線を通すのは工期も工費もかかる

そこで、各所にあるコンセントを利用しHD-PLCでLANを構築し、上部にはWi-Fiのアクセスポイントを設置

駐車場と管理室のシステム構成図(出典:「パナソニック HD-PLC資料」より)

トンネル内もしかり。長いトンネルは道自体が曲がっている場合もあるが、通常トンネルは排水のため中央が山になり両端は低くなっている。そのため電波が奥まで届かないのだ。数kmに渡る有線LAN工事をしたら工費も工期もかかるが、照明などの電線を使いHD-PLCでLANを構築すれば工費も工期も最低限で済む。

HD-PLCは何台も子機をつなぐことで、子機間のデータをバケツリレーできるマルチホップを搭載しているので、200m間隔に子機を設置すればkmオーダーのLANも可能になるのだ。長距離LANの敷設に最適なのがHD-PLCというわけだ。

長崎新幹線の「新長崎トンネル」は全長ほぼ7.5kmで、トンネル内にはキャリアの電波が届かない
画像提供:JRTT鉄道・運輸機構

外部とトンネル内の連絡用にSNS音声通話を利用するためWi-Fi環境を構築

ボックス内にPLCアダプターとWi-Fiアクセスポイントを設置。マルチホップでトンネル奥まで長距離のLAN環境を構築

大規模な農場や畜産場で固体管理したい場合

たとえば農業や畜産業など、広大な敷地で固体を管理する場合などは、ビニールハウスや畜舎ごとのコンセントにHD-PLCを配置、各HD-PLCにWi-Fiのアクセスポイントを接続すれば、固体のログを取ったり監視カメラなどの設置が可能となる。

公道をまたがない複数の畜舎にいる牛の行動記録や健康管理データを無線LANを経由して取得。見通しはいいが広大な敷地のため1棟に1台のWi-Fiアクセスポイントを設置。なお写真の電柱は個人所有の電力線網で同一キュービクル(トランス)内

ただし同一敷地内であることと、屋外用のHD-PLCを使う必要がある※3。また電力会社から引いてくる電力線は、敷地内のトランス(キュービクル)の配下のみで通信が可能。それゆえキュービクルやトランスを越えた間での通信ができない点に注意が必要だ。また電波法上の同一トランス(キュービクル)内でも、公道をまたいでの通信は不可能となる点にも注意。

※3 牛舎によっては屋内用HD-PLCも利用可

たとえ自社の電力線網であっても公道をまたいでHD-PLCでデータ通信することはできない。電波法上の禁止事項。公道をまたぐ場合は、有線LANでPLCアダプター同士を接続する

キュービクルは屋外にある変電設備。工場やマンションなどで用いられる

さらにHD-PLC対応の「PLCプラグ」はPoE(Power over Ethernet)に対応しているので、HD-PLCに接続する装置に電源供給をしながらデータ通信も可能となる。

たとえば監視カメラを取り付ける場合、通常はカメラにACアダプターを接続、さらにLAN回線を接続するので最低でも電線が2本必要だ。しかし「PoE」を使えばLANケーブルを介してデバイスに50V程度の電源を供給できて、配線はLANケーブル1本で済む。またPoE HUBを使えば複数のPoE対応デバイスに電源を供給することも可能となる。PoEに対応した無線LANのアクセスポイントや監視カメラなどを使うと工事やメンテナンスを簡素化できる。

PLCプラグはPoEにも対応(カメラやカメラ固定治具は別売)

とある旅館のWi-Fiネットワーク網。各階にある分電盤にHD-PLCを接続し、HD-PLCにはPoE HUBを経由してPoE対応のWi-Fiアクセスポイントを設置。PoE HUBがLANケーブルを介してWi-Fiアクセスポイントに電源を供給するので、ACアダプターやアクセスポイント用の電源が不要となるため工費削減できるという

古いビルに安価なLANを構築したい場合

古い公共施設や学生寮、ホテルや事務所など、とりあえずLANを設備したいという場合にもHD-PLCは有効な手段。ただし最大20Mbpsの通信速度をいくつかのデバイスでシェアするため、使うデバイスが多数あると通信速度が低下する。

各部屋のコンセントは電気室に集まり1部屋1回路となる。そのため1部屋ごとに親機を設ける

HD-PLCの親機から先の主幹ブレーカーまでデータ通信が流れないようにフィルター(コンデンサー)を入れ、擬似的なセグメントを作る。これで電気室のHD-PLCと部屋のHD-PLCが1:1になる。戸数ぶんある電気室の親HD-PLCは有線LANで接続し、ルーターを経由して光回線で外部と接続する。これなら20Mbpsを何部屋で共有することなく、各部屋に20Mbpsのスループットを確保

このような場合は、ノイズ防止用のコンデンサを電力線の回路に入れ(たとえば回路ごとのブレーカーにフィルター/コンデンサーを入れ)擬似的なセグメントを作り、台数を制限するなども可能だ。

このようにフィルター(コンデンサー)を入れることで、100Vの電力は生かしたまま、データ通信のみをノイズとして遮断することが可能になる。

システム構成図。この場合縦(フロア)を通して7戸が1回路となっているので、20Mbpsを7台でシェアする構成。1フロアには21戸あり同様の回路が組まれている。それぞれの親機は分電盤側にデータが流れないようにフィルターを入れている

広大な土地に監視カメラを設置したい場合

公共のグラウンドや学校の校庭など、広い敷地に監視カメラを設置する場合、有線LANの工事をすると100mごとにHUBを入れる必要があり大工事になり費用もかさむ。かといって光ケーブルを敷設するとなると費用がさらに増大。屋外用のHD-PLCなら子機間は最大200mで、さらに延長する場合はHUBのように子機を差し込めばいい。しかも通信線の敷設は不要で、グラウンド用の照明の電力線が利用できるのだ。

またHD-PLCはWi-Fi相当かそれ以上の暗号化「AES128bit」を採用しているので、公共の場で使っても通信の安全を担保できる。

グラウンドに計3台の監視カメラを設置。1台はカメラを設置する場所から親機を設置する場所まで200mあり、有線の100mではHUBが必要になるのでHD-PLCの親機:子機間で結んでいる

室内競技場までの親機は光ケーブル、屋外は電力線を介してHD-PLCで接続し、その先にPoE対応の監視カメラを設置。遠距離、広範囲を短納期、低コストでLANで結べるのがHD-PLCの強みだ

また駅の安全確認用のカメラなどの長距離LANにも使えるのがHD-PLCだ。ホーム後方、中ほど、前方にカメラを設置する場合は、高解像の映像では通信速度が足りない。そこでそれぞれブレーカーなどで別回路になっているコンセントから電源を取るようにして、各カメラで20Mbpsの通信速度を確保する。最後に3台のカメラの映像を駅事務室のLANにまとめてモニタリングできるようにしている。

電波法の緩和とHD-PLCの進化で、利用シーンが広がる

電波法の省令改正と最新のHD-PLC、そして導入時の応用例を見て分かるとおり、Wi-Fiに押されていたPLCだが、新たなHD-PLCとなり、今度はWi-Fi過疎地の一般家庭や事務所、そして新たに緩和された工場の三相電源や鋼船の手軽なLAN構築手段として活躍の場所を広げている。

免許不要で設置できる100Vコンセントタイプと、要資格の端子台取り付けタイプ(写真)の100V/200V仕様がある。それぞれに屋内専用と屋外専用があり計4モデル。いずれも価格は29,800円

またデータを子機間でリレーする「マルチホップ」により長距離、そして広大な領域に最低限の工費と工期でLANを構築できることが分かった。

TCPでは20Mbps、UDPでは30Mbpsという通信速度の制限はあるものの、フィルターや別回路を使うことで通信速度をある程度担保できる汎用性もある。家庭用はスマホの利用が中心になるため、狭い範囲でも高速に使えるWi-Fiが今後も主流となるだろう。その一方で大量のデータが流れない工場や産業などでは、低コストで短工期で敷設できるHD-PLCが伸びてくるのは確実だ。

敷設の手軽さと汎用性から工場などでの利用が期待されるHD-PLC

さらに2023年ごろには、第4世代HD-PLC用のLSIがリリース予定で電力線での通信速度は2倍に、テレビアンテナ線などではさらに高速な1Gbpsの通信も可能になる。これらの規格はPLCの旗振り役であるパナソニックが提案し、IEEE1901a「IoT PLC」として世界標準規格としても認められているので今後に注目だ。

次世代のHD-PLCは高速化に向けて準備中。既にIEEE1901aとして標準化されている

そしてサービスによる回線の使い分けも普及してくるだろう。ちょうど高速道路ができても一般道が廃止されることなく、より快適に整備されていくのと同じように、近未来のネットワークの一角はHD-PLCで担っていくことは間違いなさそうだ。

画像提供:パナソニック株式会社 藤山 哲人

家電の紹介やしくみ、選び方や便利な使い方などを紹介するプロの家電ライター。独自の測定器やプログラムを開発して、家電の性能を数値化(見える化)し、徹底的に使ってレビューするのをモットーとしているため「体当たり家電ライター」との異名も。 「マツコの知らない世界」(番組史上最多の5回出演)「ゴゴスマ」(生放送2回)「華大の知りたいサタデー」(生番組4回)「アッコにおまかせ」「NHKごごナマ」(生放送2回)「カンテレ ワンダー」(5回)「HBC 今ドキ!(生中継4回)」はじめ、朝や昼の情報番組に多数出演し、現在インプレスの「家電Watch」「PC Watch」やサイゾー「ビジネスジャーナル」などのWeb媒体をはじめ、毎月ABCラジオなどで連載やコーナーを持っている。 趣味は、鉄道、飛行機、バス、車の旅行や写真とシステム&構造。電子工作、プログラム。あと神社めぐり。